最強の万能剣士のおじさん、弟子の事を考える
追放物の小説の第三話になります。お付き合いよろしくお願いいたします。
「師匠、何してるの?」
「手入れだ」
「手入れ?」
「うん。剣は使っていくと段々と傷がいき、最終的には使い物にならなくなる。実際、君の剣も少し錆が入っている。それを手入れしている」
「師匠、凄い」
「名前聞いてなかったな。俺の名はエヴァン・ワイルドだ」
「私、私はマリナ・エンジェル。マリナって読んで、師匠」
「マリナか? 良い名前だな」
「ありがとう、師匠」
そういえば、トムの剣やアイツらの剣も手入れしたっけ。手入れしても全然お礼すらしなかったけどな。
「うん、マリナの剣、一段と良くなったんじゃないか?」
「ありがとう、師匠!」
マリナはこの俺を抱き締めるが…こんなおっさんなんて抱き締めたところで良いことなんてあるか?
「師匠、明日早速修行しようよ」
「そうだな、でも真剣は実際に危ないし、小さな木刀ならあるぞ、マリナ用の」
「良いの、師匠」
「大丈夫だ、マリナ。魔王を倒したいんだろう。だったら俺の使って良いからな」
「うん、師匠大好き♡」
大好きか? そういえば俺は女性に好きなんて言われたことない。
昔からあまり女性に興味がないし、アイツらにはキモいおっさんとしか言われなかった。
でもその分、マリナは凄く可愛いし、本当に凄く純粋な女の子なんだなって思う。
今日はもう夜遅くになっている。次の日に備え、睡眠を取ろう。
「マリナ、今日はもう疲れただろう。ゆっくりと寝よう」
「はい、師匠」
俺は横になる。彼女の方を向くとすぐに寝付いていた。
ぐっすり眠っている、寝顔が可愛いな……もし、この子が俺の子供だったら……魔王から守ってやれたのに。
「……師匠」
夢か? 一体どんな夢なんだろうな。稽古でもしている夢だろうか?
分からないが。
でも明日からのマリナとの稽古は楽しみで仕方がない。彼女の意気込みは凄かったからきっと本気で来るに違いない。
でもそれが良い。本気で来ると言うことはそれだけ彼女の意志が強いと言うことだ。こんな嬉しい気持ちは俺の師匠と稽古をした時以来かも知れない。
俺にも師匠がいた。老人だが、背が小さくて弱々しく見えるが、それでも剣術師範と呼ばれているくらい凄い師範だった。
全く隙がなく、隙を見せたかと思えば、隙を付かれたり、隙がありそうで全くなかったな。それくらい凄かった、俺からしたら。
当時、俺は若くて誰よりも成長が遅かった。しかし師匠はこんな俺を見捨てなかった。
成長が遅いのは逆にチャンスだと捉えろ! 成長が遅いと言うことは誰よりも頭や体で覚えれて稽古を打ち込めれることだと! そして下手でも好きなら覚えは遅くても必ずや上達すると言うことを教えてくれた。
そのおかげで上達したのは誰よりも遅かったけど、誰よりも成長する事が出来たし、それが嬉しくて稽古をするのがやめられなかった。
師匠はもう亡くなったけど、でも俺は師範のもとで稽古が出来て良かったし、後悔もしていない。生きている内に稽古を付けてくれて感謝している。
ふと気が付くと俺はいつの間にか寝ていた。
浅い眠りだったのかも知れない。外はと言うと朝方で日が登っていた。
「もう、朝なのか? 早いな」
俺は目が覚めたが、まだ彼女はぐっすりと眠っている。
「マリナ……まだぐっすり眠っているな」
恐らく、魔物との戦闘で疲れていたのだろう。慌てて稽古の練習をする必要性もないな。
俺は睡眠を取っている彼女の体調を見て稽古の内容を考えるようにした。
本日はここまでです。また投稿致しますのでよろしくお願いいたします。