少女、最強の万能剣士のおじさんに弟子入りする
第二話目です。物語が展開しますが、よろしくお願いいたします。
俺は地味な人間なのかも知れない。何せ人から褒められた経験があまりないのだ。
冒険者パーティーに所属していた時、俺が複数のモンスターを倒しても目立って褒められるのはリーダーのトムだった。
いつもトムが俺の良いところを持っていく……そんな展開だ。俺の活躍を全てトムが成し遂げたことになっており、俺はと言うと、トムの縁の下の力持ちになっていた。
キャサリン、ジャスミン、ステファニーにしたってそうだ。アイツ等にしても、自身のことを女勇者だと思い込み勘違いしている。
魔物に出くわすだけで、腰を抜かし怯える癖に……それはトムも変わらない。
だから俺がアイツ等を今まで守ってきた。最後くらいは俺に感謝しても良いくらいだ。
なのに何の感謝もせずに追放するだけしておいて、最後にあっさり切り捨てるとは……何とも切ない気持ちになってくる。
この気持ちをどう解消したら良いものか。
ハアッ。
俺はため息を吐いていると、何やら死体を見付けた。
「……これは」
小型の精霊様の死体だ、あちらこちらに散乱している。
これは魔族の仕業なのか? 可哀想だ。
そういえば、俺が森の中を歩いていた時から精霊様がいる気配を感じていたな。魂を葬ってあげよう。
必殺【葬り】
この必殺技はどんな死んだ種族の魂でも天界に葬る俺、専用の技だ。広い範囲で魂を天界に回収する。死んだ種族の体を消滅させる技でもある。
死んだ精霊様の体は燃えて消滅したが、魂が出てこない?
何故? もしかしたら、時間が立っていて、もう天界に魂だけが行ったのか?
それだったら良いけどな。
考え事をしていたその時、俺の耳に会話が聞こえて来たのだ。
「お前みたいな小娘が、魔王様に勝つのは不可能だ!」
「そんなこと、やってみないと分からないじゃない!」
キンキンキンッ!
何だ? 決闘か?
俺が様子を見ていると、童顔で美しくパッチリとした紫色の瞳、茶色のボブショート、10才くらいの少女が剣を持って必死の表情で戦っているのを見えた。
剣と言っても少し小さなレイピアだ。
相手は魔物か? それとも魔族なのか? 如何にも巨体で頑丈な鎧を装着していると言うことは魔族だと言うことだな。しかもデカイ剣で少女と戦っている。
彼女は必死で魔族と戦っているが、完全に力負けしている。あれではダメだな……そう思ってしまった。
キンッ!
予想通り、レイピアは遠くに飛ばされ地面に転がり、彼女は尻餅を付いてしまった。
「ゲヘヘヘヘヘヘ。残念だが、諦めるんだな。お前では魔王様を倒せない」
「クッ」
少女の表情はかなり悔しそうだ。
助けるか? しかし俺はあの三人組を見て女とはあんな物なのかと言う先入観が先行して助けるのに忌避を感じてしまっている。
でも、助けないとあの少女は魔物に殺られてしまうな。さて……どうするか?
悩み、考えている間にも少女はトドメをさされようとしている。
「さあ、どう殺してやろうかな」
魔族が彼女に迫ろうとしている。もう考えている時間はないな。
鞘から剣を引き抜く構えをして突進の必殺技を使い、俺は剣で魔族の鎧を横から引き裂く。
バシュー!
「ぐはぁ!」
ズドン!
魔族がその場から倒れ込んだ。
少女は一撃で魔物を倒したこの俺にびっくりしている様子だ。
「大丈夫か?」
彼女はこくりと頷く。
もうこれで終わりだ……もうこの少女とはお別れだなっと思ったその時だった。
「……う、後ろ」
少女が俺の後ろを指を刺す。それと同時に俺は気配を感じていた。
「さっきの攻撃は貴様か!? さっきは良くもやってくれたな!」
生きていやがったか、まぁ良い。これでトドメだ!
グサリ!
「ぐうおわあああああああーっ!」
剣で奴の体を貫通し、完全に断末魔を上げ消滅させた。
「す、凄い!」
「終わったな。魔物には気を付けろ。じゃあな」
「お、おじさん、ちょっと待って!」
「?」
「ありがとう、助けてくれて」
「気にするな、礼にも及ばないことだ」
この少女は素直だ……あの三人組は礼すらしなかった。全く失礼な三人組だ。
しかし気になる、どうしてこんな10才くらいの幼い子供がこんな森の中を一人で?
「聞いて良いか?」
「えっ、な、何?」
「どうして君はこんな森の中を一人で彷徨いている?」
「そ、それは……私、実は魔王に恨みがあって」
「恨み?」
少女は頷く、そして話始めた。
「私、5年前にお父さん、お母さんを魔王に殺された。隠れていた私は魔王の手から生き延び、それからは一人で生きてきた。何も、何も分からないまま、誰の助けも受けずに」
魔王に両親を殺された……か。それは悲しくて辛い人生だな。
「だから、私は魔王に復讐したい! そのために私は旅を始めた!」
彼女は立ち上がり、この俺の方を見た。
「そうか。気持ちは分かる。だけど、そんな力で魔王に復讐出来るか?」
少女は大きく首を横に振る。
「当然、こんな力じゃ、魔王になんか勝てない。でもさっきのおじさんの力を見た時に決意したの」
「何をだ」
「おじさんの弟子になりたいって。おじさんの弟子になってもっと強くなりたいって」
弟子か。弟子って言われても俺はそんなに強くないんだよな。俺なんかの弟子になるくらいならもっと強くて良い師範、いるはずだよな。
「お嬢ちゃん、俺なんかよりも道場で稽古を教えてくれる師範に習った方が良い。こんなおっさんに頼らなくても良いとは思うが」
「ううん。私はおじさんで良い。おじさんはきっと英雄見たいに強いと思う。だってあんな大きな魔族相手にも余裕で勝ったから」
「いや、全然大それたことなんかない。寧ろ、こんなおっさんに稽古を付ける時間が勿体無いと思うが」
「それでも私はおじさんで良い。お願いします、師匠と呼ばせて下さい!」
うーん。彼女はどうやら本気みたいだ。でも俺はこの子は嫌いではない。真面目で素直で良い子だと思う。あんな三人組の女達よりもよっぽど良いな。
「分かった。この俺に付いてくるんだな。でもこの俺は甘くなんかないぞ。それだけは覚悟しておくんだな」
すると彼女は嬉しそうな表情を出した。
「はい、師匠ありがとう」
こうして俺と彼女は仲間になり、二人の旅物語が始まった。
複数話出来ておりますので少しずつですが、投稿出来ると思います。お付き合いよろしくお願いいたします。