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最強の万能剣士のおじさん、最強クラスの殿下を圧倒する

「ここはね、この村の討伐依頼を達成出来る勇者トム・ショート様しか入れないんだよ。お前のような単なるおっさんが入れるところではない!」


 俺とマリナは村の領土にやってきた。来たのだが、検問にひっかかってしまい、入ることができないでいた。


 トムが勇者だと……一体誰がそんな噂を流しているのか? モンスターが出るだけで腰を抜かし怯えるあんな臆病者が。


 まっ、あのパーティーに所属していた時、強い魔物を討伐していたのは、ほぼこの俺だったからな。


 俺はトムの縁の下の力持ちになっていた。トムが勇者だと噂が流れているのは多分、俺のおかげだと思うが?


 そう考えていると、横から口を出してきたマリナ。


「あのね! 師匠はね、英雄になる人なんだよ! この検問を通らせなかったらきっと後悔するから!」


 英雄って……マリナはいつも俺のことを過大評価してるよな。


 でもこの村の領土に入れないとなると、それはそれで困った。ふむ、どうしたらいいものか。


「この小娘は嘘つきだな。もし英雄だったら皆がこの男のことを知っておかないとおかしいじゃないか」


 ゲラゲラと笑い出す、検問の人達。仕方がないことだ、俺は無名の人間だからな。

 マリナと検問の人達を見ていたその時だった。


 ヒヒーン

 馬に乗ってやってきた王子らしき人物と騎士の軍団達。すると検問の人達が驚き、頭を下げる。

「エリス殿下! お帰りなさいませ!」


 噂は聞いていた。この国の王子、その名はエリス、黄金色の髪で髪型は少しだけ長く、橙色の瞳をしている。姿は青い豪華な礼装、マントまで羽織っている。


 彼はこの国の中でもトップ中のトップクラスの実力を持っており、あらゆる聖騎士達を圧倒したと言う話しも流れている程だ。


「殿下、どうぞ、どうぞ」

 検問の人達がエリス殿下を案内する。


「うん?」

 エリスは俺の方を見る。何だ? 一体どうしたと言うのだろうか?


「この男は何だ?」

「ああ……何でもこの領土に入りたいのだとか。でもこの領土に入れるのは勇者トム様だけだと言っても引き返さなくて、しつこいんですよ」


「そうか。それにしてもお前、いい眼をしているな。剣士か?」

「はい、俺は一応、剣士です」


「ほう。一度、お相手願いたい。構わないか?」

「相手ですか? 別に構いませんが」

「そうか、ならばこの場で決闘をしよう」


「えっ!? 決闘ですか!? エリス殿下?」

「ダメなのか?」

「い、いえ、構いませんが!」


 愛用と思われる馬から降りたエリス。そして彼は背中にある鞘から剣を抜き、俺に対面して構える。かなり巨大な剣だ。


「こいよ、お前、強いんだろ?」

「どうして、そんなことが分かるのですか?」


「それは……俺の勘だ」

 へえ……殿下の勘ね?

 俺も鞘から剣を抜き、エリスに対面して構える。


「師匠、頑張れ!」

 マリナが俺を応援してくれている。


「ほう。いい構えだな、おっさん」


 刹那、エリスが高速で移動し、素早い動きで俺に剣を振りかざす。

 キンキンキンッ、キンキンキンッ!


 殿下の剣は巨大な剣だが、巨大な剣だからと言って強さが分かるわけではない。


 いくら巨大な剣を使っていても使い(こな)せていないようでは意味がない。


 だが、殿下は違う。自身の剣を使い(こな)し、さらには自身の使っている剣と連動しているかのような動きをしている。


 打ち込みがかなり強い、下手したら俺の剣が飛ばされ、負けそうな勢いだ。なるほど、これはかなり手強(てごわ)そうだな。


 でも、俺はまだまだ本気ではないが、彼はどうなんだろうな? 本気なのだろうか?


「殿下、あなたは本気ですか? 俺はまだまだ本気ではありません」

「そうか。俺もまだまだ本気ではない」


 さらに剣の金属音が鋭く鳴り響く。


 なかなかやるな。やはり、隣国の中でもトップクラスの実力を持っている男だ。そう簡単に易々と倒される人間ではないな。


「おっさん、お前の本気をこの俺に見せてみろ!」

「殿下こそ、本気を出した方がよろしいかと思いますがね」


「そうだな、本気でいくか!?」

 すると、高速で剣を振りかざすエリス。

 今だ! 俺は瞬時に剣をガードして

 パキイイイイイン

 っと彼の攻撃を受け流すが、体勢を瞬時に立て直された。


「ほう、この俺の攻撃を受け流すとは大した技術だな!」

「殿下、あなたは凄い方だ、俺の受け流しの技術に隙も与えなかったのだから」


「では、あなたはどうだ!」


「!?」


 パキイイイイイン

 俺が攻撃をした瞬時にパリィをしたエリス。隙を作りそうになった俺だが、直ぐに姿勢を立て直す。


 キンキンキンッ、キンキンキンッ!

 攻防戦が続く。彼はパリィしても直ぐに体勢を整える、隙がない。これは手強い相手だ。


 ならば仕方がない、正々堂々の決闘で必殺技だけは使いたくなかったが。


 必殺【打棒】

[剣を打棒のように扱う技術。瞬時に剣の先で叩くようにして相手の剣を弾き飛ばす俺の専用の技である]


 キンッ、キンッ、キンッ!

「何!?」


 俺はエリスの剣を弾き飛ばすと、剣先をエリスに向ける。彼は驚いているようだ。


「これで、勝負ありだな」

「わー、師匠、カッコいい!」


「あ、あのおっさん! あんな細い剣で巨大なエリス殿下の剣を弾き飛ばした!」


「やるな、お前。名は何と申す?」

「俺か? 俺の名はエヴァン・ワイルド」


「エヴァン、聞いたことがない名前だな。無名の人間にこの俺が負けるとは。お前、やはり只者ではないだろう」


「いえ、俺は至って普通の剣士です」

「そうか、面白い答えだな。一度、お前と話がしてみたい。この男を入れろ」


「えっ!? この男を入れるのですか?」

「この俺の判断に何か文句でもあるのか!?」

「い、いえ。特には!」


 エリス殿下の許可により、俺とマリナは検問を越え、村の領土に入ることに成功したのだ。


読書のお時間いただきましてまことにありがとうございます。次回投稿は未定になります。すみませんがよろしくお願いいたします。

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