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最強の万能剣士のおじさん、精霊の誘いを断る

「エヴァン様、本当にありがとうございました。何と御詫びしたら良いのか分かりません」


 いやいや、俺なんかのために頭なんて下げないで欲しい。

「いえいえ、何もしておりませんよ」


「エヴァン様、そんなに謙虚にならないで下さい。あなたは私達の救世主ですから」


 救世主なんてそんな……。大それたことは全くしていないが。


「師匠って凄く強くて、謙虚で素敵だね」


 マリナや精霊様は俺のことを誉めちぎってくれているんだけと、そんなに凄いことをしているのか? この俺って。


「エヴァン様、もし良かったらこの森の守護神としてずっといていただけませんか?」


「……守護神?」


「はい。デーモンを倒したのはあなたが初めてです。私はあなたの実力を認めたのと同時にこの森の守護神として、この森を守っていただきたいのです」


「……この俺が、森の守護神」


 それは別に構わないが、でも俺にはマリナと一緒に魔王を倒すと言う使命がある。


 精霊様のせっかくの誘いを断っても良いものなのか……分からない……どうしたら。


「師匠、凄いよ。精霊様から森の守護神にならないかって勧誘されるなんて」


「……マリナ」


「師匠……私のことは別に気にしないで。私はまた別の師匠を見付けるわ」


「……マリナ」

「マリナちゃん?」


「私は一人で旅を出るね。師匠、今までありがとう」


「マリナ、待ってくれ!」


「マリナちゃん、何処に行くの!?」

 ガシッ

 精霊様が彼女の腕を掴む。


「マリナちゃん、あなたもここにいて良いのよ。私はあなたのこと、邪魔には思っていないわ」


「ううん、精霊様。私はね、旅立たないといけないきちんとした理由があるの」


「どんな理由かしら?」


「魔王を倒す目的があるの。私には」

「……マリナちゃん」


「精霊様」

 俺の呼び声に反応した彼女がこちらに振り向く。


「俺を勧誘していただいて非常に嬉しいですが、弟子であるマリナを放ってはおけません」


「……エヴァン様」


「彼女は魔王に両親を殺された。だから復讐のため、旅をしていると。

 そしてこの森の奥での魔族との戦いで初めて出会いこの俺の強さを見た時、師匠になって欲しいと言ってくれた……今は師弟関係です。

 勿論、精霊様のお誘いもありがたかったです。俺のことを必要としてくれたから。

 でもまたあなたの勧誘は魔王を倒した後日にしていただけませんか?」


「そうですか……分かりました。先ほどの私のお誘いはなかったことにして下さい」


「精霊様、本当に申し訳ありません。こんな俺を許して下さい」


「構いませんよ。またこの森に来たくなったら何時でもお越し下さい」


「精霊様、ごめんなさい」

「良いのよ、マリナちゃん。でも目的はきちんと果たすのよ。良い?」


「はい!」

 ギュッと精霊様はマリナを抱き締めていた。日が照って朝になろうとしている。


「精霊様、村の領土が知りたいのですが、何処にありますか?」


「あの方角に行けば村の領土があります。行ってみて下さい」


「精霊様、短い間でしたが、ありがとうございました。また魔王を倒したらこの森に来ます。その時はよろしくお願いいたします」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 俺は頭を下げると、精霊様も頭を下げる。


「精霊さん、また会おうね」


 マリナは精霊様に手を振ると、彼女も手を振って返す。


 魔王を倒すために俺とマリナは次の村の領土に向かうことにした。


お忙しい中、読書のお時間いただきましてまことにありがとうございました。

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