最強の万能剣士のおじさん、冒険者パーティーを追放される
新しく追放系の小説を始めました。よろしくお願いいたします。
「おい、おっさん! もうお前とはここでお別れだ!」
ドカッと座っている若い男は俺に指を指しそう言った。男の名はトム、トム・ショート。
「お別れってどういうことだ?」
「不必要ってことだ、力のないお前とはやっていけないんだよ」
「な、何を言っている。俺は散々力を尽くしてやって来たじゃないか?」
「はぁ? 何を勘違いしている。お前は全然俺達の役に立てなかっただろう? 勇者であるこの俺が今までお前にどれだけ苦労をかけられて来たことか?」
「勇者ってお前……!?」
「何だ、エヴァン。お前、俺のことを勇者だと思ってないみたいだな。俺は勇者だぞ、勇者」
ビシッと親指を曲げて自身を指差すトム。
「そうよ、トムは本物の勇者よ。そうだと認めなさい、おっさん!」
「そうよ、そうよ! おっさんの癖に気持ち悪い!」
キャサリン、ジャスミン、ステファニーが俺に悪態をつく。
こんな女達三人に言われて気分が収まらない、不愉快な気分になってしまう。
トムはと言うと自身のことを本物の勇者だと思い込み自信過剰になっている。
本当はトムはこの俺よりも全然強くないのに勇者だなんてどこからそんな自信が湧いてくるのか?
勇者って言うのは選ばれし者だけがなれる職業なんだが……。トムはそんなことも知らないのか……もっと早くから教えてやるべきだったな。
それならばトムが勇者を名乗れるくらいもっともっと稽古を付けることが出来たのではないのか? でも俺が稽古をしようと誘っても一向にする気さえ起こさない。
一応、トムはパーティーのリーダーなんだし、この俺を越えて欲しい思いで稽古を始めようとするが、すぐに稽古を辞めてパーティーの女達と遊んでしまう。
キャサリン達も俺を邪魔物扱いして、トムを誘惑してばかりだ。実はと言うと俺はトムよりもこの女連中の方が嫌いだ。
魔物との戦闘中も俺、一人が頑張っているのに倒すのは当たり前みたいな感じてこの俺を挑発するように言ってくるのに、トムが一匹でも魔物を倒したら過剰に彼を褒めまくるのだ。
まっ、一番腹が立つのはそんなことではないけどな。
でもトムが本物の勇者だと言うのなら稽古でも、何でもしてこの俺を打ち負かして欲しいと常々そう思っている。
だから勇者を甘く見ているトムにモヤモヤがあるのだ。
「良いか、トム。勇者って言うのは偉業を成し遂げるであろう選ばれし者だけがなれる職業だ。そんな簡単になれる物ではない」
「バカにするんじゃねえよ、エヴァン! お前、負け惜しみしているんだろう! この俺にパーティーを追放される形になって悔しいんだろう!」
「いや、違う。俺はお前が心配だ。この先、魔族との戦闘でやっていけるかどうか?」
「お前さえいなければ十分やっていける。俺はこの三人の可愛い子ちゃんとやっていくからな」
「そうか、じゃあ俺は本当に不必要なんだな」
「何度も言わせるんじゃねえよ、おっさん!」
「分かった……後で後悔するなよ」
「後悔なんてしねえよ。早く出ていけ、出ていけ」
仕方なくそう言われ、俺は宿から出ていくことになった。
とりあえず今日はここまで…次回のお話の投稿日は未定になります。