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無敵になれない僕ら(3)

 こうして仕事に励み、数日が流れ、ようやく休日になった。ここでの仕事は時間も曜日も不定期なので、今週の休日は水曜日と木曜日になった。


 豊は相変わらず熊木にドヤされ、毎日菓子パンを食べていた。最近は目に見えて具合が悪くなっているように見えるが、だからと言っても誠が出来る事もなく、静観している状況だった。それに春の復活祭のキャンペーンが始まるため、konozon全体的に多忙で、余裕もない。客としては春の復活祭キャンペーン開催中は、水や服をショッピングしたものだが、今はちょっと控えたい気分だ。


 こうしてようやく休日になった為、誠は遅くに起きてきた。昨日は残業もあり、死ぬほど忙しかった。全身が筋肉痛で、起きてきて顔を洗って髭を剃るだけでも、筋肉が痛い。


 家は一応一軒家に暮らしている。元々は母の兄が暮らしていた家だ。誠からすれば叔父だが、かなりの変わりものだった。仕事は売れない作家や評論家。生涯結婚せず、家に引きこもって作品を作っていたが、去年、病死し、この家を引き継いだという経緯があった。この家は、職場までバスを使えば近いし、家賃もかからないのもいい。


 親戚連中もこの家を空き家にするか困っていたにので、winwinといえようか。もっとも築四十年とかでボロボロの二階建てで、修繕費に金は出たが。それでもリビングは雨漏りするし、掃除も大変なので、コスパが良いのかは不明だ。庭も広いのが、誠を悩まさせていた。すぐ雑草が生えるし、叔父が仕事場代わりにしていたプレハブ小屋もあり、ガーデニングや家庭菜園をする気になれないのが本音だった。


 最近は仕事も忙しいので、庭も部屋も汚れはじ

 めてうた。さすがに汚部屋というほどでもないが。


 近所は農家が多く、家と家の感覚も離れている。生活音などが気にならない点などは良いにだが、不満が全く無いわけでもない。


 朝の身支度を終え、パジャマから部屋着に着替えた誠は、キッチンに行き、湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れる。


 キッチンは広々とし、料理好きの誠には有り難いわけだが、一人だとちょっと持て余す。一応調理器具なども揃えているが、毎日料理をするわけでもないし、ちょっと宝の持ち腐れ感。


 出来上がったコーヒーを片手にリビングへ移動する。


 リビングのソファにどかっと座り、テレビをつける。この家はゆったりと広いが、最近ここで食事し、そのまま寝てしまう事があった。二階にもいくつか部屋があるが、今は掃除以外にほとんど上がっていない。死んだ叔父は二階は本をたくさん置いていたようだが、誠はコレクションするような趣味もない。趣味もスマートフォンのゲームだ。携帯さえあれば事足りてしまう。


「はあ、やっぱり一軒家で暮らすのは失敗だったかねぇ。ペットでも飼うか」


 独り言をいいながら、インスタントコーヒーを啜る。最近のインスタントコーヒーは進化すていて案外美味しいが、最近は独り言も増えている。


「婚活するとか?」


 テレビを見ると、マッチングアプリのCMも流れていた。可愛い女子とオタクが出会ったというドラマ仕立てのCMで、誠もうっかりマーケティング戦略に乗りそうになる。


 しかし、誠はイコール年齢だ。恥ずかしい話だが、身体も生まれたてのままだ。女に興味が無いわけでも無い。むしろ興味深々だが、幼少期からの極秘生活、低賃金仕事での苦労も重なり、そっちの方もあまり興味が持てないというか、そういう神経がすっかりショートしていた。確かに若い頃は職場に可愛い子がいれば気になるし、デートぐらいはこじつけた事もあったが、今はすっかりご無沙汰だった。


 ちょっとマッチングアプリに惹かれたが、やっぱり女はいいか。


「女は奢れとかいってコスパ悪いしなー」


 デートまで行った女からは、なぜか飯代を請求される事も多く、その点もウンザリする。


 持て余しているとはいえ、こうして持ち家もあるし、仕事もある。死んだDV父の事も思うと、余計に女への願望も減ってきた。


「ま、俺は今のままでもいいじゃん?」


 リビングの窓の外からは、近所の野菜畑や農家の屋敷なども見える。この平和な光景を見ていたら、これ以上贅沢言うなって事なのかも知れない。今はお一人様もブームだし、生涯未婚率も上昇すると言われている。そうだ、別に一人だって良いのだと自分に言い聞かせた時だった。


「うん?」


 しかし、庭に誰かいるのが見えた。


 雑草が伸び放題になっているから、よく見えないが、泥棒か?


 誠は素早く立ち上がり、庭の方に向かった。玄関に置いてあった野球バッドを片手に走る!


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