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最強の二人〜彼らの謎多き日常〜  作者: 地野千塩


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無償の愛の謎(11)

 豊と亜由は、ローカル線に乗り換え、市民公園駅に降りた。重奏町の北部にある大きな公園だ。なぜか人魚やピノキオの像も設置されており、通称童話公園とも呼ばれていた。休日は家族連れやカップルで賑わい、イベントもよくやっているらしい。重奏町の若者のデートスポットといったところか。誠はイベントのバイトでは何度も来たことがるが、個人的には一度も来た事のない場所だった。


「豊さん、童話公園でデートするつもりかしら。ここ、若者のカップルばかりよ」


 公園に入る豊とアリスの背中を見ながら、アリスがぽそっと呟いていた。


「だろうよ……」


 少し遠くに見える豊は、完全に浮かれていた。遅れてきた青春を取り戻すかのよう。若い頃モテなかった男女が、大人になってそうなると歯止めが効かなくなると聞いた事があるが、今の豊を見ていると頭が痛くなってきた。


 そうはいっても童話公園は木々に囲まれ、自然も楽しめる。デート云々を抜きにしてもジョギング目的で来ている老人や男性の姿も案外目立っていた。親子で走っているものもいる。お陰で叔父と甥という設定で来ている誠達もさほど浮いてはいなかった。その点は尾行している側としては助かる。


 豊達は公園の池の方に移動し、側のベンチに座り語らっていた。


 一方、誠達は木々に隠れ、二人の様子を見守る。この位置からは、何の会話をしているのかわからない。


 それにしても、今日はよく晴れている。池の水面はキラキラと光が反射し、野鳥が鳴き、老人が周りを散歩し、実にのどかな光景だった。この光景と結婚詐欺が結びつかない。


 亜由の演技は見事なものだった。さっきの電車の中では欠伸を噛み殺していたが、今はニコニコと笑顔で豊の話を聞いていた。おそらく女にとっては詰まらない話をしているだろうに、よくこんなアイドルみたいな笑顔が作れると関心する。今のところは、不穏な動きはなかった。見守っている誠もアリスも長閑な光景に飲み込まれ、欠伸が出てきそうだった。向こうも誠達に気づく様子はない。


「あの亜由、演技かしら? もしかしてガチで豊さんに惚れている可能性はない?」


 アリスは少々背伸びをしながら、豊の横顔を見つめる。これ以上ないぐらいにデレデレしていた。餅だったら、熱い鍋に入れたような状態だ。完全に溶け切っている。


「そら無いだろ。糸原というイケメンと一緒にいる時のメス顔じゃねぇ」

「確かにね」

「あれは演技だ」


 晶子からあの画像を貰っておいて助かる。こうして画像と今の亜由の顔を比較すると、どう見ても違う。画像はメス、今の亜由はいかにも猫を被っていますという表情だ。改めて女は怖いと思い、誠は震えてくる。


 それにしても豊の顔。心から幸せそうで、本当の事を言うべきか分からない。いっそ全部夢でも見ていたと言ってやりたいぐらいだ。この状況で頭の花を刈っても、ろくな事にならないのが目に浮かぶ。最悪、自殺する事も念頭においておいた方が良いかもしれない。すっかり忘れていたが、豊も心療内科に通院歴があった。


「そこまで気を使う誠さんって優しく無いですか?」


 この事を話すと、アリスはニヤニヤしながら言う。どうせ腐女子的な曲解をしているだろうが、そこはスルーしておく。


「優しくねぇよ。ただ、さ。豊のこんな女性と縁が出来る事ってたぶんもう無いだろ?」

「ひっどい。誠さんもそうじゃないの?」

「だから分かるんだよ。このまま夢見せてやる方が良いんじゃないかってさ」


 涙が出そうだった。自分は豊と違って結婚詐欺にすら遭っていない。しばしの夢すらも見られない。新垣結衣似の美女に騙されるなら、現実を知るより、騙されたいとも思う。亜由を訴えられない被害者の気持ちがわかってしまって、複雑だ。


「でも、このまま亜由を放置したらダメ。もしお金を騙されたら、豊さんはもっと借金漬けになるよ」

「確かにな……」


 意外とアリスはまともだった。頭おかしな女子中学生だと思っていたが、倫理観はあるらしい。


「弱い人、真面目な人、純粋な人が搾取されるのは、おかしいです。やっぱり亜由はちゃんと法の裁きを受けるべき!」


 アリスの正論には、誠は全く反論できなかった。


「豊がうまく傷つかない方法があればいいが」

「無理ね」

「そうかなー?」

「真実は痛みが伴うものよ」

「かっこいい事言ってるな!」

「深夜のBLアニメの決め台詞よ」

「なんだ、パクリかい」

「まあ、正論を言っても愛がなければ何の意味もないって台詞もあったわ」


 その言葉は、どっかで聞いた事があるような?


 母と義父の結婚式だ。教会で式をあげ、義父の同業者が聖書の言葉を朗読していた事を思い出す。詳細はよく思いだせないが、母は聖書の言葉を聞き、号泣していた事も思い出す。


「まあ、私もできれば豊さんは傷ついて欲しく無いわ……」

「う、そうだな。正論がしょうがない時もありわな」


 昨日は、豊の馬鹿面を見たいと冗談を言っていた二人だが、いよいよ笑えなくなってきた。


 どうやって豊の頭の花を刈らせるか? 枯らすか?


 亜由が捕まる事より、その方法を誠は一番知りたかった。

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