無償の愛の謎(7)
尾行ってどうするんだ?
誠はそんな疑問しかない。しかし、アリスや聡は妙に詳しかった。
「家族のフリとかしてるとバレにくいと思う」
「アリスは男装でもすれば? 誠くんは普通のスーツで落ち着いた感じで、メガネでもするか」
こんな調子でセレブ兄妹は、なぜか尾行について詳しかった。
あの後、アリス達の家に誠も向かったが、尾行用の服や靴、メガネなどもあっさりと用意された。
アリスもノリノリで、男装をしていた。カツラを被り、パーカーとジーンズ姿になり、本当に中学生男子に見えた。しかも、セレブ兄妹の家には、衣装部屋といのがあり、服だけでなくカツラなど、いかにも変装っぽいグッズも置いてあり、誠は頭の中に疑問しかなかった。
「どういう事さ?」
いくらセレブだからって、こんな変装グッズを収集している事が疑問だった。誠は衣装部屋の変装グッズを眺めながら、呟く。
すると、セレブ兄妹は顔を見合わせ、何か決意をしていた。
「実は、私達の父、政治家の荷島太郎なの」
「え、本当かよ」
これには驚いた。確かアリス達の両親は海外で仕事をしていると効いていたが。しかも荷島太郎は、妻と二人で子供はいないと聞いていたが。
確か与党のかなり大物政治家だった。派遣法を改悪した黒幕とも言われる政治家で、アンチもかなり多かった。それでも党内では大御所でもあり、次の総理大臣かとも言われている。あまり誠は政治に詳しくないが、どっぷりした大仏のようなルックスで、「悪代官」というあだ名が似合いそうだった。ネットではカルト教団との癒着も噂されていて、この件でもアンチをかなり作っているようだった。票集めに為にやっているのだろうし、カルト信者ではなさそうだが。
「つまり私たちは隠し子ね。私と兄は母が違うけど、ここで隠し子同士中良く田舎生活してるってわけ」
「そうか」
セレブ兄妹の複雑な事情に、誠はこれ以上何もいえなかった。
「まあ、それでも父は僕らを気にかけてるからね。こっちに来る時は、こうして変装を」
「SPさんもいるけど、父の執念アンチもいるのよ。ほら、カルト絡みで元総理大臣も暗殺されたから、余計にピリピリしているっていうね」
なぜかこんあ変装グッズがあるのか腑に落ちた。しかし、女もののカツラとかもあるのだが。荷島太郎の女装姿を想像すると吐きそうだが、よっぽど上手く変装しているのだろうか。
「ぶっちゃけ、殺害予告とか日常茶飯事だからね。豊さんの結婚詐欺なんて我が家に比べたら、蚊にさされたようなもんよ」
「そうか?」
スケールが違いすぎる事と比較されても。とはいっても、亜由の件もすぐにわかったし、やはりセレブ兄弟は頼りになるものだ。
「ところで、亜由の件と荷島太郎って何関係あるか? そういえば豊の母がハマってるカルトも荷島と癒着してる団体だったが……」
まさか関係ないと思うが。また、町にいるらしい泥棒も何か関係があるのだろうか。ピースがバラバラに散らばっているようで、全く纏まりがなく、イライラとしてくる。
「確かにちょっと妙だな。うん、僕は父の人脈駆使して調べてみるよ」
聡はそう言い残し、自室の方に行ってしまった。単なるニートだと思ってが、こうして見ると、頼もしいものだ。
残された誠とアリスは、尾行の最終確認をし、今日はお開きとなった。
「私は豊さんがどんな顔で結婚詐欺にあっているのか、見るのがとっても楽しみ」
アリアは腹黒そうに笑っていたが、誠は笑えなくなってきた。荷島家の事情を聞いたからだろうか。何か嫌な予感がしていた。




