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最強の二人〜彼らの謎多き日常〜  作者: 地野千塩


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無償の愛の謎(1)

 怒涛のゴールデンウィークが終わった。世間は休みで、黄金の一週間だっただろうが、誠達は仕事漬けだった。その上、アリスの件にも巻き込まれ、大変だった。


 ただ、六月はその分振りかえ休日もある。上司ガチャの失敗し、熊木にぢドヤされている毎日だったが、決してブラック企業に勤めているわけではなかった。それを思うと、誠の気分も上がっていた。


 そして五月の最終週の休日。基本的に不定期に休みだが、今日は二人とも土日に休日があたり、余計にテンションが上がっていた。


 もっとも豊はプレハブの自室で朝も眠っていたが、豊はテンション上げて朝食を作っていた。


 今日はパンケーキを作る事にした。


 小麦粉は時子から貰ったものが余っていたし、アリスの一件で作ったものも、案外美味しかった。十分、食事として成り立つ。


 そういえば、子供の頃の極貧生活時代、小麦粉を水に溶かし、すいとんを作っていた。キャベツやモヤシでかさまさしし、それでも満腹になった事を覚えている。


 母親が病気になり、仕事がなかった時は、本当にきつかった。その時のすいとんの味と比べられると、今作っているパンケーキの香りは天国のようだ。


 順調に何枚も焼き重ねていき、あっという間にパンケーキタワーができた。今のテンションの高い誠の目からは、スカイツリーよりも立派なタワーに見えるものだ。食べられるタワーの方がいいに決まってる。やっぱり自分は花より団子なのだと思ってしまう。


 他にも目玉焼きやカリカリベーコン、シーザーサラダなどを作る。いかにも休日のごちそう的な朝食ができ、誠は満足だった。


「って、アリスも来てるのかよ」


 リビングにが、ナチュラルにアリスも同席していた。豊も眠そうな顔をしていたがいる。寝癖をつけ、「BIG LOVE」というロゴが入ったパジャマを着ていたが。どこからどう見てもも冴えないおじさんだった。一方、アリスは清楚な黒いワンピースに、長い黒髪は編み込み結んでいた。こちらは、どこからどう見てもお嬢様だ。同じリビングにいお嬢様が同席しているのは、奇妙だが、時々、アリスは飯をたかりにくるようになった。本人は取材といい、部屋に間取りや豊と誠の会話などをメモしていた。


「いいじゃないですか。兄も公認です」


 アリスは口を尖らせ、パンケーキを綺麗に切り分け、上品に食べはじめた。こいしてごご飯を食べにくるようになったアリスだが、一応兄の聡の公認だった。二人揃って挨拶しに来たこともあり、高級なクッキー、ゼリー、カニ缶、豚肉などももらってしまい、後の引けなくなったというわけだ。


 高級豚肉でトンカツを作った時は、アリスだけでなく、隣の時子や母もたかりに来たので、ちょっとしたパーティーみたくなった事も覚えている。こうして冴えない気持ち悪いおじさんとアリスが一緒に食事をしているわけだが、怪しい雰囲気は皆無。むしろ、このリビングは会社のカフェテリアや大家族の食卓のようか開放感すらある。庭に近く、外からもよく見えるとうのもあるが、勝手にマイ箸やマイコップも置かれていて、撤去できない雰囲気になってしまった。


 アリスにコソコソ見られてから、カーテンとかつけてちゃんと防犯もそようと思ったが、こうなった今は、あまり意味がないと思い、何もやっていなかった。


 時子から泥棒の噂は聞いていたが、今は怪しい人影なども見ない。怪しいのは全部アリスだったと結論つけ、泥棒についても特に対策していなかった。そもそもこんな貧乏労働者の家には、金目のものは置いていない。アリスの荷島家も金持ちだが、防犯カメラもあり、庭には古典的な落とし穴も作っているらしい。あそこの防犯はバッチリらしい。


 となると、時子の無人販売所ぐらいだろうが、今年は豊作で、獲れすぎるのも色々困っているらしい。野菜の価格が落ちるので、豊作でもあんまり嬉しくないと嘆いていた。あの無人野菜販売所も「持ってけドロボー」状態となり、特に防犯もやってないならしい。


 という事で、泥棒についてはすっかり忘れていた。というか、そもそも泥棒なんていなかったじゃないかと思い、忘れる事にした。


「アリスちゃんは、創作の方はどう?」


 豊はパンケーキに目玉焼きを乗せながら言う。この食べ方は誠も一押しだった。パンケーキは甘さ控えめに焼いているので、こうして目玉焼きやパンケーキと合わせてもあう。誠もベーコンやマヨネーズを乗せてパンケーキに乗せて食べれてみたが、我ながら絶品で、ほっぺが溶けそうだった。


 思えば誠も底辺の労働者だ。金は余裕はない。となると娯楽は、スマホゲームか食事ぐらいしかない。誠は飯はおいしければ、日々仕事のストレスも大幅に軽減できる気がして、今日のようにご馳走の日は余計のテンションが上がる。いつもは三白眼のキツネ顔だが、今がふにゃふにゃと犬のような目つきになっていた。


「それが、難しいんですよ。どうしましょう?」


 アリスは、誠たちをネタのBL漫画を創作捨て歌。タイトルは「最強の二人!〜男二人の純粋な愛情〜」というタイトルだった。BLといっても十八禁描写はなく、あくまでも心のやり取りがメインだった。


 正直、美化されて気持ち悪い。そもそも自分はボーイズラブ系の男でもない。新垣結衣が好きなおっさんだ。それでも、誠は怒っていないし、気の済むまでやらせておこうと決めた。もちろん、何か取材する時は、コソコソしないという約束をして、こうして一緒に食事するような仲になったが。


「何が難しいんだよ。AIに描いて貰えばいいだろ?」


 誠はパンケーキをガツガツと咀嚼しながら言う。


「確かAIに背景描いてもらってるんだよね?」


 口の悪い誠とは違い、豊はおっとりと笑顔だった。実際、このアリスの件でも怒っていない。豊も似たような事を誠にやっていた為、責められないというのもあるのだろう。


「ええ。でも、主人公二人が婚活パーティーに行くシーンは、どうしてもルアルな感じが出なくて。ねえ、二人とも、取材で婚活パーティー行ってくれないかしら」

「おい、クソガキ。大人は全部自分の思い通りになるって思ってるんじゃないだろーな?」

「誠くん、目が怖いよ。睨むと超怖いよ〜。しかし婚活パーティーかぁ」

「俺も行った事ないが」


 婚活パーティーなんて行っても結果は目に見えている。それに医者限定とか、年収五百万以上とか、三十歳以下とか条件も厳しそうだった。ちょっと婚活したい気持ちがあった時も無くはない。それでも婚活パーティーの条件に、すぐに砕かれてしまった。それに婚活パーティーに新垣結衣もいないだろう。


「だったら、一回ぐらい参加したら? そうだ、重奏町でもやってるそうよ! あの公民館の隣の大ホールで」

「うわ、あそこか……」


 あまりにもローカルすぎる会場だった。公民館の一部らしいが、ホールといっても老朽化が進み、全く綺麗に見えない場所だった。アリスのよると、地域で結婚を推し進めるNPO団体があるらしいが、どうも怪しい。


「へえ、そんなのあるんだ。アリスちゃんが勧めるなら、一回ぐらい行ってもいいかなぁ」

「は?」


 意外な事に豊はやる気を見せ、寝癖も気にしれいた。


「そうよ。二人とも、意外と悪くないわよ?」

「そら、おめーの腐女子視点だろ〜?」

「まあまあ、誠くん。暇だし、冷やかしに行っても良くない? こんな田舎の婚活パーティーなんてどうせ変な女しかいないだろうし」


 うん?


 この言い方だと、前も婚活パーティーに行った事があるようだったが。


「まあ、一回ぐらいなら?」


 そう言う誠も暇だった。一回ぐらいなら。冷やかしなら、行っても良い気がした。


 それに、この取材に協力してくれたら、アリス高級すき焼きセットをくれるらしい。この餌には、逆らえない。


「まあ、すき焼きくれるなら、いくぜ!」

「僕も行きます。すき焼き大好き!」

「やった! これで決まりね!」


 という事で、二人は婚活パーティーに行くことが決定した。


 この時の誠はすき焼きしか頭になく、再び謎に巻ききまれる事など、全く想像していなかった。

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