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100万円を置いた猫  作者: 椋木美都


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 第111話『これぞ青春』

補足

・4番勝負が終わったタイミングで全員水着から私服に着替えています。

・サマトレ中本当は全員に着帽させたかったのですが、一々描写を付け足すのが面倒だったので割愛しました。

・大日本帝国の夏は紫外線も熱中症もそこまで深刻なものではないということでよろしくどうぞ。

第111話『これぞ青春』


「わーい」


――そうだよね。『経営学部生』だったら『undergraduate business student』だけど・・・って駄目だまた思い出し笑いしちゃう。


大丈夫と言って答えた倉嶋さんの回答は、全然大丈夫じゃなかった。私は再び肩を震わせ、手で口を押える。


「笑い過ぎでしょ!」


「まぁまぁ。2人共落ち着いて。あと・・・この場で倉嶋さんを笑っていいのは、この問題に正解した人だけだよ」


熊本先生は隠れて笑っている数名に対して糸目を開く。私は手で顔を仰ぎながら皆の元へ戻った。


英語は好きだ。会話は苦手だけど、リスニングや長文読解は割と好きで。古文単語を覚えるよりは、英単語の意味を理解する方が楽しかった。母の教育方針によるものもあるけれど・・・習得できたらかっこいいし、勉強しておいて損はないという意見には賛成だ。


「さっちゃんすげぇが!クズじゃったけど」


「勝利おめでとうございます。幸生先輩英語得意なんですね。最低でしたけど」


「えー次から英語の課題全部さっちゃんに手伝ってもらお。あとね、ほんまカス」


「酷い!こうなるから黙ってたのに・・・」


苦手科目そっちのけで勉強しておいて良かった。これを機に英語の資格にでも挑戦してみようかな。


――また英語を勉強しよう欲が浮上したのは、謎にニャルラが英語で意思疎通を図るから・・・ってのもあるけど。


「にー」


足元を見ると、ニャルラが100万円を背中に乗っけて運んできた。私は考えるより先に頭から砂に飛び込み、ニャルラを捕獲する。


――おーーい!


「にー」


幸いにも皆はななちゃんと金子君の対決に夢中になっているようで、私の奇行を目撃した人はいないようだった。ニャルラとお金を抱きかかえたままテントへと戻る。折角砂払ったのに・・・。


「にーにー」


「え?優勝賞金?いや豪華すぎるでしょ。家に戻しておいて欲しいんだけどなぁ・・・今一番いらないよ」


ニャルラなりに私の活躍を応援しているみたいで・・・怒るに怒れなかった。少なくとも、この3日間で100万円の出番なんてないような気しかしないけど。


8番勝負1日目は、両チーム2勝2敗という結果で幕を閉じた。しかし――サマトレの夜はまだ、終わらない。私は煌びやかな海の上に浮かぶ雲を眺め、その鮮やかさに目を細めた。


(=^・・^=)

本日の夕ご飯はBBQ。普段滅多に食べることのない牛肉、大きな椎茸、最近高騰しているキャベツなど・・・見るだけでテンションが爆上がりする光景が眼前に広がっていた。おまけに2番勝負で行った得点予想対決で負けたKGLが準備と食材を焼いてくれる。なんて贅沢なんだろう。


それでも4番勝負のエキシビションマッチでは僅差でSIGが敗北してしまったので、片付けとゴミ出しは私達が行うそうだ。まぁこれくらいはいいだろう。


「秀才(笑)が焼いてくれた肉うめぇー!あ、小田先輩タン追加おねしゃす!」


「ク、クソ谷が・・・余計太るぞ!」


「ねぇねぇ今どんな気持ち?あ、こっちの台火力足りんわ。東ー炭追加ー」


「うるせぇぶち殺すぞ!もう少し待てやぁ!」


「きっしー。この肉もう取ってええ?」


「あ、仲達先輩それあたしが狙ってるやつ!」


「え?これななちゃんの?いや大きさそんな変わらんやろ」


「・・・俺の間で喧嘩すな」


さっきまで競い合っていた者同士であったのが嘘のようだ。大学と学年の垣根を越えて、15人の学生がバーベキューコンロの周りでわいわいと賑わっている。私はその光景を肴に塩タンを一口で食べた。


「うー美味―!これぞ大学生の青春って感じですねぇ」


「いや、君は何でそんな離れたところで食べてるの」


バーベキューコンロから数歩離れたところに設置されたアウトドアテーブルとベンチには、熊本先生と竹村先生と私とニャルラがいた。前述した通り、他の皆はバーベキューコンロの周りで立ち食いしている。


「さっちゃん沢山食べや」


「ありがとうございます。食事は座ってしたいんで」


「にー」


私は竹村先生の隣に座り、自分で紙皿に乗っけた肉や野菜を夢中で食べ進める。ニャルラは私の横で安定の猫缶だ。そんな私の様子を見て、熊本先生は乾いた笑みを浮かべた。


「大丈夫?ちゃんと交流できてる?」


「・・・できてます」


塩飴は誰にも渡せないままポケットの中に入っているけど。明日もあるし!


「君以外の子達はあんな和気あいあいとしてるのに・・・後輩に負けていいの?」


熊本先生が指差した方向を見たその刹那、私の精神に激震が走った。


「芙由香さんもロジレーザーのトラックボールマウス使ってるんですか!あれって――」


「芹尾君が使ってるメーカーで、ワイヤレス充電式のマウスパッドが新しく発売されたから買ったんだけど――」


――何かめっちゃ打ち解けてる・・・だと!?


軽くショックを覚えていることろで島永君と目が合う。そして次の瞬間、彼の顔が邪悪に歪められた。


――ぐああああ!『ざまあ』って顔に書いてあるーー!


『ずるい』と『羨ましい』で頭の中がいっぱいになる。会話の内容からして、私が入り込める領域ではなかった。PC用品関連は専門外だ・・・。


「ハハッ!島永は相変わらずじゃな。さっちゃんも頑張れ」


「うぅ・・・」


「にー」


――やめてニャルラまで悲しそうな目で私を見ないで。


私は痛む心を抑え、重い足取りで芙由香ちゃんがいる所へと向かった。ななちゃんと沖谷君はもう一つのバーベキューコンロで騒いでいる。そっちに行きたいのは山々だが、今日の失態は今日払拭しなければ・・・絶対後で引きずる。そう頭では分かっているのに、行動に移す勇気がなかなか出なかった。


――とにかく今は食べよ。野菜摂取に集中しよ・・・。


黒く焼き色のついたキャベツを一枚一枚自分の皿に移し、心の中で涙する。


「・・・これも食うか?」


「ありがとう・・・」


無心で咀嚼していると、楽村君が焼き茄子を置いてくれた。茄子の花言葉には『良い語らい』や『つつましい幸福』などの意味がある。


――そういえば文化祭の打ち上げで焼き肉屋に行った時、彼に野菜の花言葉の話をしたような・・・でも覚えているワケないか。


「なら私はこれかな」


私は焼きミニトマトを楽村君の皿に置こうとした。すると、彼は「ん」と言って口をぱかりと開ける。


――あ、それでいいの?


一瞬の動揺の後、冷めているかを確認して食べさせた。トマトの花言葉は『感謝』。なんだかんだ言って、KGLに知り合いがいたのは私の中でかなり救いになってたみたいだ。


「・・・どういたしまして」


「え・・・まさか花言葉覚えてたの?」


「当たり前じゃろ。今でもブロッコリー見ると思い出すわ」


声色で分かるくらい、嫌でも上機嫌さが伝わってきた。そんな彼を見て、私はある記憶を思い出す。高校生の時の昼食はほぼあの人手作りのお弁当だった。その日のメインのおかずが蒸し鶏の旨だれとブロッコリーのナムルだった時。それを食べている私を見て楽村君が顔をしかめた。


『沖谷ーそろそろ昼当番・・・げ』


『?』


『よくあんな大きなブロッコリー食えるな。草の味しかせんが』


『嫌いなの?』


『ガチで無理。野菜はどれも進んで食わんけど、ブロッコリーはダントツで無理』


『・・・小さな幸せ』


『は?』


『ブロッコリーの花言葉は小さな幸せだから・・・その意味を知った上で食べると、少しだけあったかい気持ちになれるんだ。言うて私も別に大好きではないけど』


――そういや、そんな話したなぁ・・・あの頃は数学勉強するフリして花言葉ばっかり覚えてたっけ。


ふと視線を動かすと、私達と同じバーベキューコンロの周りにいた東リーダーと藤脇先輩と万君と牧内さんと島永君と芙由香ちゃんが一斉にこちらを見ていた。


――えっ。え?


原因が分からず狼狽えるも、楽村君は全く気にしていないようで。皆の視線をお構いなしに、彼は2人だけの世界を継続する。コイツまじか。


「玉ねぎももういけるで。小野光はまだ野菜食えんの?」


「あぁ・・・ありがとう。はるまは永久不変だから。でも玉ねぎは元から食べれるよ」


「これ食っときゃ長生きできるわ」


「不死だからね」


――玉ねぎの花言葉・・・ってそうじゃなくて!


「えーと・・・」「幸生ちゃん」「は、はい」


熱々の玉ねぎを齧りつつ芙由香ちゃんを探すと、彼女はいつの間にか私の隣に移動していた。か、可愛い子がこんな近くに!


「わ、私もそのトマト頂戴!」


――えっ。


「は、はい・・・」


まさかのお願いに、脊髄反射で焼きミニトマトを皿に置こうとする。ところが、芙由香ちゃんは目を閉じ口を開けて待機していた。あまりの展開に一同無言で見守る。


「「・・・」」


――こ、これはまさか・・・私からの『あーん』を待っている!?芙由香ちゃんが!?


自覚した瞬間、体内温度が急上昇した。震える手で彼女の口に焼きミニトマトをそっと入れる。


「え、あ、あ、あーん・・・」


「ん。ありがとう」


「あ、い、いや。いえ・・・」


芙由香ちゃんのはにかんだ笑顔を見て、ビーチフラッグの一件が私の中で完全に清算された。

エキシビジョン ななちゃんVS金子 結果は引き分け(両者クイズ不正解)


金子「も、森本さん。俺が勝ったら・・・連絡先交換してください!」

皆「おおおおおーっ!」

ななちゃん(内弁慶解除)「オッケー。金子君よね。あたしと同い年じゃろ?名前呼びでええよ。あと敬語も抜きで」

金子「・・・分かった」


(金子はこれは脈ありか!と浮つきながらもしっかりと解答権を獲得。しかし問題がシンプルに難しく、あえなく撃沈してしまった)


ななちゃん「それで偏差値55ってマ?2年間なにしとったん。恋?」

金子「ぐはぁっ!」

皆「辛辣!」「ななちゃん抑えて!」「アイツ内弁慶外れたからってギア上げすぎじゃろ!」

(その後ななちゃんも普通に外す)


穂奈美ちゃんVS岸野先輩 結果は穂奈美ちゃん勝利(岸野先輩がクイズ不正解だったため)


穂奈美ちゃん「プッ・・・だっさ」

岸野「こいつ1年の分際で嘲りおった!俺先輩やぞ!」

皆「穂奈美ちゃん顔!顔!」「正体表したな」

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