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100万円を置いた猫  作者: 椋木美都


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番外編⑧ 『謝罪したいパロディ回 後編』

前回のあらすじ


 『推し』という言葉についてあなたが思うことを自由に書いてください。という問題について幸生が解答した内容。というか物語――『梅島太郎』

 亀を助けた(?)梅島は、亀からの恩返しを跳ねのけようとしていました。しかし、亀はお礼の品である玉手箱を受け取ってもらえないと困る状況下にいて・・・。

 恩返しをしたい亀VSさっさと部屋に戻って麻雀をしたい梅島。1人と1匹の決着の行方はいかに!

番外編⑧『梅島太郎 後編』


尚もしぶとく玉手箱を押し付け・・・贈ろうとする亀に向かって、梅島は仏の顔をして黙ります。


「何その顔逆に怖いな!乙姫様から、助けてもらったらお礼しなきゃいけないって言われてんですよ」


「乙姫?」


「はい。竜宮城の長です。姫っていっても、周りが乙姫って勝手に呼んでいるだけで、実際は赤髪セミロングの身長148cmで14歳の純真無垢な男の子なんですけどね」


「・・・え?何て?」


ここで初めて、梅島は乙姫という存在に食いつきました。それに気づかず、亀は黒縁眼鏡の奥にある瞳を潤ませて梅島に懇願します。


「14歳にしては小柄で華奢で、甘いものに目がないんです。特にフルーツパフェを出すと目ぇキラキラさせますね。普段から赤色の着物姿っていうのも、乙姫と周りの大人達から言われる所以なのかもしれません」


「イメージカラー赤・・・ショタ・・・甘党・・・」


亀は梅島が乙姫のイメージ像を構築しているのに気づかず、続いて玉手箱のPRを始めます。


「あと、こちらの玉手箱なんですが、中身は我らが姐さんチョイスです」


「姐さん・・・どんな人?」


「えぇーっと、年齢は梅ちゃんより4、5歳年上で、身長は167cm。艷やかな長い黒髪に赤い目がチャームポイントだそうです」


「――ゎ」


「え?」


――お姉さんに甘やかされたい・・・頭なでてギュッてされたい・・・。


といった欲望を前々から胸に秘めていた梅島はハイテンションで外に出る支度を始めました。


「こんないいもん貰ったらお礼言わんとおえんわ!行くべ!やっぱ可愛い女の子とショタがおるんならついていかんとおえんわ」


「えぇ・・・」


ドン引きの視線をものともせず、梅島はウキウキで戸締まりをするのでした。


(=^・・^=)

竜宮城にて。梅島太郎は豪華な食事に、ピアニスト高橋による演奏。梅島の友人である由衣ちゃんにそっくりな姐さんの抱擁を十分すぎる程堪能しました。


「――大変お待たせいたしました。乙姫様の御成りでございます」


「ようこそお越しくださいました。Princess」


亀が開けた扉から、あどけない整った顔立ちの美少年が現れます。しかし乙姫の姿を見た瞬間、梅島は背を向けて壁際まで走って行ってしまいました。


「えっ梅ちゃん何してんの」


「おめ、お目汚しになるんでいいです」


「え・・・でも乙姫様に会いたかったんじゃないの」


「ほら、私推しに認知されたくないタイプやから。生まれ変わったら推しの家の壁になりたい・・・」


「お母さんそれ聞いたら泣きそうだな・・・推し?折角乙姫様が目の前にいるんだから話しなよ。こんな機会そうないよ?というかお礼言いに来たんじゃないの?」


「それとこれとはちゃうやろ」


「おかしいだろ!」


「・・・自己紹介から始めましょう。私の名前は――」


見かねた乙姫が梅島の近くまで来てくれますが、梅島は走って出口まで逃げてしまいました。


「ちょっ!梅ちゃん!?」


すぐに亀が後を追うと、梅島は竜宮城の外壁に額をつけて立っていました。


「壁になろうとしてるー!」


「かわちい・・・姫って・・・お前が姫だよ」


喋る壁梅島は、乙姫の台詞を思い出して口元をにやつかせます。


――好みドンピシャなら握手くらいすれば良かったのに。


梅島の要望通り、家まで送る途中、亀は再度乙姫と話さなくてもいいのかと聞きました。


「神的存在の人と話せるわけないじゃろ」


「いやあの人別に神とかじゃないんだけど・・・もしもう1回会えるって言ったらどうする?」


「いらん。これ以上あったら乙姫君の成分が蒸発しちゃう」


「しないよ」


「減っちゃう。汚れる」


「何が・・・?」


開いた口が塞がらないまま亀は梅島を自宅まで送り届けました。軽く放心状態の梅島に玉手箱を持たせると、神妙な面持ちで呟きます。


「これ・・・乙姫君が触っとる?」


亀が頷いた途端梅島はビニール手袋を装着し、自分の部屋から持ってきたガラスケースに玉手箱をそっと入れました。亀が今日イチで引いたのは言うまでもありません。


「・・・・・・」


「ふぅ。そういうの最初に言ってや」


「もし触ってないって言ったらどうしてたの」


「じゃあ要らないですってなる。こんなデカイのゴミになるやん」


「態度変わりすぎでしょ」


亀が悪戯心でガラスケースに手を伸ばすと、勢い良く手をはたかれてしまいました。


「触るな!」


「ごめんなさい!」


こうして、透明ケースに保管された玉手箱は永久的にその品質を保ったまま代々遺産として受け継がれてゆくのでした。めでたしめでたし。


(=^・・^=)

「――この問題に対して私が用意した答えは、『推しに向ける感情表現は三者三様であることは理解しているが、共感は全くできない』ですかね」


不遜な態度を崩さない幸生に、熊本は呆れて何も言えなかった。


「いやでも、普通に面白かった。この場合、本当に面白いのは梅島・・・経営学部の梅田さんか」


解説ありがとう。と言って熊本は口角を上げた。


「また来年も僕の授業で会えることを楽しみにしているよ。試験の結果楽しみにしといて」


「・・・はい。失礼します」


1人になった相談室で、熊本は2人分のカップを流しで洗う。


――沖谷さんは本当に面白い人だなぁ。


「そろそろ・・・僕も本腰を入れなきゃね」


PCデスクの前に座り事務作業を再開する。熊本は時折窓の外に映る景色を眺め、彼女の気まぐれで綴られるかもしれない次回作に心を躍らせた。


幸生「グッズのくだりリアルすぎるでしょ!飾れとまでは言わないけどせめて袋からは出しなよ!」

梅ちゃん「袋から出したら傷つくからなぁ・・・推しの顔面に爪の傷がついたら嫌じゃろ。尊い推しの顔面やぞ」

幸生「くっそ言い返せない・・・誰か反論して!私の中にあるこのモヤモヤを代弁してー!」

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