表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/21

最初の1歩 自己紹介と1人反省会

 《高校生活1日目》



  今日から新しい学校生活が始まる。今年から俺は高校生になるのだ。

  幼稚園、小学校、中学校と彼女というものが出来た事がない僕は高校ではどうにかこうにか作りたい!と思っている。


  けれど俺はコミュ障だし人見知りなので中々厳しい。この高校には知り合いが1人もいないのもまた厳しいという理由の1つである。

  緊張した面持ちで入学式を終える。どうやら俺のクラスは3組らしい。どんな人達がクラスメイトなのだろうと入学式中に観察していたが、やはり見た目だけじゃなんとも言えない。

  なんと可愛い子はかなりいたと思う。その中でずば抜けて俺の好みどストライクの子がいた。その子の名前は「村田 花音(むらた かのん)」。

  一目惚れとまでは行かないものの、村田さんに興味が湧いた。

  髪は長すぎず後ろで少し結んでいる綺麗な黒髪。まだそんなにしっかりと顔をみていないからよく分からないが、美人というより可愛い系。スカートからスラッと伸びたマシュマロの様に白いくて細い脚。胸は……どうだろうか。俺には分からない。とにかく華奢で、身長も他の人と比べたら少し小さい。


  とまぁ、今分かるのはこのくらいだ。今現在でこんだけ村田さんの事を述べられるって相当ヤバい奴なのではと少し自分自身に引く。


  それに、男子も同様にレベルが高くイケメン揃い。ブスとも行かないと思うが、至って普通の顔の僕に勝ち目は無いのでは……。







  教室に着いて、黒板に貼ってある座席表を見る。俺の名前は「村上 明(むらかみ あきら)」27番か……。神の導きなのか、村田さんとは席が隣。

  ゴクリと緊張の生唾を飲み込み、席に着く。


  友達もいないので、席でじっと座っておく事にする。

  初日で直ぐに友達ができる人は少ないだろう。けれど、同じ中学の人がいたりした人はその人と喋ったりしていた。

  基本的に教室の中は静かで、話している人も小声でしか話していない。

  この空気感、苦手だ。


  友達は無理して作るものでは無い。自然と出来るものだ。

  決して俺は小中と、ぼっちだった訳では無い。毎回友達が出来るか不安だったが、数ヶ月経つと自然と友達が出来ている。

  「案ずるより産むが易し」が俺の精神を支える言葉。

  失敗しないか心配で不安な事も、やってみれば案外簡単だという意味だ。

  人生は全くもってその通りな事が多いと思う。


  人と話すのも、発表するのも、テストをしたりするのも案外大丈夫だったりする。

  そう思っていても、やはり一瞬の勇気を出すのが物凄く難しいと思う。

「勇気は一瞬、後悔は一生」こういうことわざも存在する。

  確かに一瞬の勇気を出さなかったら、いつまでも引きずって後悔する事になる。

  でも、その一瞬の勇気を出すのがどれだけハードルの高い事か、どれだけ難しい事か……。


「後悔先に立たず」

  やらずに後悔するよりやって後悔した方が絶対にいい。

  ことわざって繋がってるんだな。先人達の教えは的確で凄い。




  先生が来るまで暇なので、脳内でことわざについて考えていると隣に村田さんが座った。


  その瞬間、紛らわしていたソワソワとした気持ちが一瞬でドキドキに変わり変な汗をかき始めた。


  どうすればいい……隣だし「隣の村上です。よろしくね」って爽やかに挨拶した方がいいのか? それとも話しかけられるのを待った方が良いのか……。


  大体ラブコメでは話しかけて貰えるものだが如何せん、これは現実だ。

  自分から話しかけないと多分話せない。話しかけたいのは山々だが、生憎俺は女子と喋るのが物凄く怖い。

  キモイとか何このブスとか、何言ってんだこいつみたいに思われてたらどうしようと不安で仕方がない。

  いいや、名言を思い出せ。「自分が思ってるほど他人は自分に興味無い」

  1回話したくらいでどうこう思われる訳ないだろう。余程酷い会話じゃなければ……。


  チラッと村田さんの方をみると、村田さんはスマホをぼーっと眺めていた。

  俺と同じように、同じ中学の人はいないのか話す相手もいない様だった。


  よ、よし……取り敢えず挨拶だけでもしておこう……。

  コミュ障&人見知り克服して、高校では絶対彼女作ってやる。


  先人達のことわざや、ネットでみた名言を思い出し、「大丈夫。大丈夫だ。思ってるよりも簡単な事だ」と自分に言い聞かせ勇気を振り絞って村田さんに話しかける。

  俺の心臓はエンジンの様に早く鼓動していた。これ以上早くなったら死ぬんじゃないかというぐらい。



「あ、あの……っ」


  声をかけた瞬間村田さんは少しこっちを向いたが、扉を開ける音がし、クラス全員の注目は扉の方に。

  なんというバッドタイミング……。物凄く勇気を出して声を掛けた瞬間先生がやってきたのだ。


  もうちょっと早く決断して声をかけていれば良かったと後悔。

  それに村田さんは少しこっちを向いた。つまり、声は聞こえていたと言うこと。

  声をかけたのにその後声をかける事がなかったら何だったんださっきのはと不思議に思われる可能性大。

  また声をかけようにもまた勇気がいる、今の俺は既に疲労困憊だった。


  先生が号令をかけて、自己紹介を始める。


  あぁぁぁ、さっきの俺の顔キモかったよな……絶対キモかった……。しかも「あ、あのって」……。


  村田さん気付いてたし、次声かけるの一気にハードル高くなったってぇ。バンジージャンプぐらいハードル高いってぇ……。


  さっきの様子を思い出すと後悔ばかりだ。自分に嫌気がさす。


「……〜です。よろしくお願いします」


  すると、突然1人の生徒が何故か自己紹介を始めた。


  ハッと顔を上げるといつの間にか先生の自己紹介は終わり、生徒の自己紹介に移っていた。


  先生の自己紹介聴き逃した……重要なこと言ってなければいいんだけどな……。


  って、待てよ。自己紹介!? 何言えばいいんだ?好きな食べ物? いや、誰も興味ないだろ。ここは無難に趣味か? でもアニメとかゲームが趣味の俺は高校生になって早々、陰キャと皆に思われていいのか!?

  そうしたら、彼女おろか友達さえ出来なくなってしまうのでは……。カースト上位になりたいとまでは言わない、けれど自分で「あ、俺陰キャです」って言うのは馬鹿すぎる。それは自らの手で彼女や友達が出来る可能性を捨てるという意味だ。


  そんな失敗は絶対にしない。

  色々と脳内で考え過ぎて結局どんな事を言おうか考えてなかった!!


  よし、ではどんな自己紹介をしようかと考えている間に俺の順番が回ってきてしまった。


  ………………終わったぁぁぁぁ……。



  あぁ……なんも考えてないし他の人が何を言ったかも聞いてなかった……。やらかしにやらかしを重ねてしまった……。


  前の人の自己紹介が終わり、拍手が響く。遂に俺の番が来てしまった。


  重い腰をゆっくりと上げ、周りを見回すと皆の視線が刺さる。

  一瞬で目を下の机に向け、「えーっと……」と呟く。


  教室は、静寂に包まれている。


  自己紹介をするだけでこんなにも緊張してしまう。何だこの空間は。言葉を発しにく過ぎるんだが……。


  いや、ただの自己紹介だ。村上明、ただの自己紹介だぞ。こんなのも出来ずに何が彼女が欲しいだ。女子ともまともに、いや人とまともに話せない奴がここで変わらなきゃいつ変わるんだよ。今でしょ。


「あー……えっと……村上、明です…………好きな物、趣味は…………映画鑑賞とか読書です。よろしくお願いします」


  言い終わって座った瞬間どっと疲れが襲ってきた。パチパチパチと拍手が送られる。ありがてぇ。


  心臓がバクバクの中、早速脳内1人反省会。

  どもり過ぎ、声が低い。これじゃ機嫌悪いみたいに感じられた可能性あるよな……。もっとテンション高くやらないとダメだったな。

「皆さん初めまして、村上明です! 趣味はランニングです!!よろしくね!」

  的な感じが良かったか? いや、これはこれで周りに「何あいつテンション高……」「うるさい」なんて思われたら嫌だ。それに「自己紹介の時はあんなに陽キャっぽそうだったのに実際はクソ陰キャじゃねーかwww」とか言われるのは怖すぎる。

  うん、ないな。


「村田花音です。趣味は特にないです。よろしくお願いします」



  ………………?


  村田さんの自己紹介内容に暫く思考が停止した。


  ……ん?…………あぁ、そうか。顔が良ければ余程酷い自己紹介さえしなければこんなのでもいいのか。きっと村田さんは色んな人に話しかけられて友達が出来るタイプなのだろう。


  いやぁそれより、顔は好み。声は比較的落ち着いていてクールな印象を抱いた。可愛らしい顔とのギャップがいい。


  それに比べて俺は顔面は平均的、声もキモすぎ全然良い所ないな……。

  他人と比べると、どんどんネガティブな気持ちになっていく。

  その事を分かっていてもどうしても比べてしまう。

  他の人よりも劣っている俺は生きている意味あるのか……?


  あぁ、ダメだこれだと中学の時と一緒じゃないか。高校では変わるって決めたんだ。



  けれどもそんな簡単に人は変わるものではなく……結局、村田さんに声をかける事が出来ずに学校初日が終わった。



  家に帰り、全然ダメだったなと落ち込み自己紹介の時や朝、教室に入ってから挨拶とかもっとこうすれば良かったのでは?と一人反省会をしつつ夢の中に入った。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ