敗北
まずはこのオークの能力を知ろう、攻撃・スピード、まずはこの2つだ。どれだけ皮膚が柔らかかったとしても、攻撃を与える隙がなければ意味がない。
まずは
ブオン
「!?」
ガキン
「ぐはっ」
突如薙ぎ払われた棍棒を咄嗟に剣で受け止めるが力に耐えきれず吹き飛ばされる。
咄嗟に受け身を取り、剣を構える。
それもそうだ、敵を前に止まって悠長に戦いのシュミレーションをしようなんて、どうぞ攻撃してくださいと言っているようなものだ。
相手は待ってくれない、そんな初歩的な事も忘れていた。
幸い追撃してくる様子はない。変異の影響からか普通のオークとは行動が異なるのかもしれない。
しかし、追撃をしてこないとなると厄介だ。それほど知能を有している可能性がある。
あの咄嗟な攻撃もギリギリだが反応できた。ならあいつの攻撃は俺でも躱せる速度なのだろう、短時間でも成長していることがわかる。
後は隙、こちらの攻撃タイミングを見極めろ。不用意に飛び込んだらやられるのは俺の方だ
そう自分に言い聞かせ、オークの攻撃を躱すのに専念する
何回か攻撃を躱し、相手の攻撃に目と体が慣れてきた。
そして絶好の反撃タイミングがわかる
攻撃にパターンはないものの、こん棒を振り下ろすこのタイミングがチャンス
ザシュ
「ガァアア」
振り下ろした棍棒を横に躱し相手の腕を切りつける
切り落とせなかったものの、確実にダメージは入った
これで武器を握れないほどにダメージが入っていればよかったが、そう上手くはいかない。
オークは一瞬ダメージに怯むもすぐさま棍棒で薙ぎ払う。
追撃はせず、ヒットアンドアウェイを意識していたため難なく躱すことができた。
それを何十
次の攻撃でこいつは倒れる、長かった戦いもこれで終わりだ。
こいつには大分成長させてもらった、一瞬一瞬気の抜けない生死をかけた戦いがとてつもない経験値になった。
魔物とは言えど感謝しかない。
持ってる剣に再び力を入れ、オークの懐に飛び込み首めがけて剣を振るう
ガキン!!!
首を切り落とした音とは到底思えない甲高い音が周りに響き渡る
「え?」
見ると剣の先が折れているのがわかった。
そして、肝心のオークは何事もなかったようにその場に立ち尽くしていた。
首を落とす前に事切れたのかと思ったのもつかの間、オークに異変が起きているのがわかる。
体にあった斑点模様が見る見るうちに体を侵食していき、あっという間に全身が漆黒の皮膚になっていく。
遅かった
瀕死の相手にすぐ行動に移さず悠長に考え事、まだ解明していないこの変異という現象を前に何もかもが甘い行動だった。
「ウオオオオオオオオオオ」
直後オークが咆哮ともに手に持つこん棒を薙ぎ払ってきた。
咄嗟に折れた剣でガードするも勢いよく吹き飛ばされる
数メートル吹き飛ばされ、受け身も取れず強い痛みと衝撃が体中を走る。
「かはっ」
痛みに耐えながら、オークがいた方を向くとこちらに近づいてくるのが見える。
まずい、離れないと
しかし、体が思うように動かない、受けたダメージが大きすぎた。
いつの間にかオークは目の前まで来て俺を見下ろしていた。
ここまでか、何とも情けない結果だな。
死を覚悟したその時
ザシュ
オークの首が胴体から離れ力無く倒れる
「え?」
「馬鹿者が、戦いの最中に必要のないこと考えおって」
倒れたオークの後ろから呆れ顔のバレットさんがやってきた
そういえば戦いに夢中でバレットさんの事を忘れていた
「すいません、ありがとうございます」
「今みたいな事をしていたら、自分より格下の相手にも殺されるぞ」
「はい、以後気を付けます。」
「【ヒール】」
正論を言われ落ち込んでいると、回復魔法かけてくれた。オークによってつけられた傷は綺麗にふさがっていく。
「とりあえずお前は野営の準備をしろ、反省会はその後にしとけ。俺はもう少しこのオークをを調べるから。」
「はい。ありがとうございます。」
まだ少し気だるい体で野営の準備に取り掛かる
そういえば、剣を折れたんだったな。
家に置いていた奴を持ってきたから、そんなに悪いものじゃなかったと思うが仕方ない。今度町に行ったときに新調するか。
「おい」
突如バレットさんに声をかけられた。
「なんですか?」
「剣折れたんだろ?これを使え」
そう言って一本の刀を俺に渡してきた。
「これは…」
「昔連れていた奴が使ってたやつだ、そこそこいい刀だから当分はこれ使っとけ」
「いいんですか?そんな大事なもの?」
「刀は使わないと意味がない、お前が持ってた方がそいつもいいだろう」
「ありがとうございます!!」
思いもよらず新しい武器を手に入れられた、刀はまだ扱ったことないけどバレットさんからもらったものだ、きっと俺の助けになってくれるはずだ。
それにしても、バレットさんと一緒に旅してた人か、いったいどんな人なんだろう。