エイル公爵家
「キリー、最近王太子様からよく呼ばれているようだけど、どんな話をしているんだい?」
朝の食事の中、お父上様から話しかけられる。
ちなみにエイル公爵家では朝は必ず全員で食事をとるのが慣わしらしい。全員金髪碧眼の派手な見目で、未だになんとなく落ち着かない。
しかしこれは私の働きはどうかと探りを入れられているのだろうか。お父上様のお考えは私もお聞きしたかったところでもある。天下を狙うためにどう私をお使いになるのか…
「主に自然の話や食事の話、あとは騎士団の話など当たり障りのない範囲であるかと。あと…王太子様のお名を、クロード様と呼ぶようにと命じられております。これは憶測ですが…友という存在に飢えているように感じられました。」
「う、うん。まるで部下からの報告を聞いているようだね」
なぜか少したじろぐお父上様。憶測は余計だったか?
「しかし…友達、ね。王家からのお話では少し違う印象だったが…。バルク公爵家の次男坊、ガルシアとも仲が良いと聞いたけど、そちらとはどうなんだい?」
「カエル…ガルシア、は年相応の少年かと。クロード様とも臆することなく友人として接しているようです。ただ少し軟弱なので今日もこれから鍛錬する約束をしております」
よい滝行場を見つけたのでこっそり教えてやるつもりだ。あやつ、感激するだろうな。
「軟弱って…騎士団長の御子息がかい?確か嫡男云々に関わらず、みな厳しい鍛錬をしていると聞くが…。そうそう、幼いながらガルシアは剣術の腕前も中々のものらしいよ」
なるほど。文官であらせられるお父上様からすればそのように感じるのかも知れぬ。
「あの…僕もお姉様と遊びたいです!」
私の隣から喋ったのは6歳の弟、ロティアーグ=エイルだ。
「ロティ!あなたにはまだ危険だと言ってるでしょう」
お母上様がやんわりと制する。そこまで危険でもないのだが、やはり嫡男は大事だしな。
「キリーちゃんは何だか時々話が通じない様な時があるから止めきれないし、もう別の次元の生き物かな?って思う時あるけど、あなたはまだこちら側にいてほしいのよ!」
別の次元…?もしや!私が輪廻転生していると言うことに感づいておられる?さすがお母上様!
「でも王子様たちばっかりズルい…。僕もお姉様と遊びたいのに。またあの大きなカエルに乗せてもらいたいし…」
「カエルに乗る?」
「ロティ?」
口止めをしても所詮は童か。怪訝な顔を向ける公爵夫妻を誤魔化す様に話を逸らす。
「ところで、私が王太子様と交流をすることをお父上様はいかにお考えですか?」
そろそろなんらかの指示はないものか
「いかに…って、そうだね。キリーは大人びているところがあるから、わかっているのかもしれないね」
そう。謀反の心ありなどとは声に出しては言えまい。遠回しにでもお父上のお心を知れれば…
「娘を持つ父親としては寂しい限りだけど、いつかは仕方ないしね。それにまだいきなり王宮に住むとかではないから、この家での時間も大事にしてほしいな」
やはり!いずれは王城を乗っ取るおつもりなのだな。そして今はまだじっくり準備の段階だと…。寂しい、というのは一命に代えても任を果たせとのことか。
「お館様のお心、しかと承りました」
「ねえ、あなた。なんかまたキリーちゃんとの間に齟齬が発生しているような…」
「旦那様、そろそろお時間です」
「あぁ、もうこんな時間か。それでは、行って来るよ。みんな今日も元気にすごすんだよ」
執事に促され仕事に向かうお父上様。そのお心に沿うため今日も鍛錬に励もう!
クロード様には申し訳ないが、お父上様には育てて頂いた御恩がある故逆らえぬ。チクリと胸が痛んだ気はするが、私は忍び。心などないのだ。




