はじめての友達
そうしてしばらく意図のわからない話を続けていたが、やがて王妃様の使いが茶会の開きを伝えにきた。
そういえばこの王太子、開催理由からして今日の主役であろうにこの様なところにいて大丈夫だったのだろうか?そして結局のところなぜ私たちをこの東屋につれてきたのだろうか。やはり私の工作に気づいて…?
「さて、今日は思いの外楽しい時間を過ごせたよ。どうもありがとう」
そうにこやかに言う様は何を考えているのかいまいちよくわからない。まぁ殿上人の腹の中などわかるわけもない、か。万一気づいていたとしても咎め立てする気は特になさそうだ。
「いえ、俺も、いや、私も楽しかった、です」
慣れない言葉で辿々しく話すカエル少年
「どうか先程までと同じ喋り方で頼むよ。友達になって欲しいんだ」
「え、あ!お、俺で良ければ喜んで!殿下は命の恩人なんで」
「ん?始末しようとしていたことを根に持っているのかカエル少年」
「カエル少年じゃねぇガルシアだ!って始末って⁈やっぱり殺そうとしてたのか⁈」
「うるさい。殿下の御前ぞ。始末などせぬわ、目的や飼い主の名を吐くまで拷問しようとしたまでだ」
「こっわ…!お前本当にご令嬢かよ⁉︎」
あ、ブルブルするカエル少年を見て、思い出した。
「このカエル貰ってよいか?試したいことがある」
「いいけど…ストローとか刺すなよ?」
「たわけ。その様なことせぬわ童め」
ぶっふ!とまた王太子が吹き出した。今度は腹まで抱えている。なんだ、笑い上戸か?
「ふ、はは!君本当に面白いね!ぜひとも友達になって欲しいな」
「勿体なきお言葉。私めなどにその様な扱いはこの身に余りまする」
「まさかの全力拒否かよ!」
横でカエル少年が叫んだ。うるさい童だ
「そもそも身分の上下で友人を決めるつもりはないけど、公爵家で無理なら僕は友達という存在はどうやって作れと…?」
何やら打ちひしがれる王太子。哀れに思ったのかカエル少年がオロオロと声をかけた。
「あー、俺!俺はもう友達だからな!元気だせよ!ほら、お前も遠慮してないで!」
こちらに目で訴えてくる。ふむ、少しヤンチャだが根は悪くはないのだな。
「お友達、なってくれますか…?」
再び不安そうに聞いてくる王太子。これは断る方が不敬というやつか
「承知いたしました。ひとえに励む所存で参ります」
「いや、なんでそんなに固いんだよ!」
「相手は殿下ぞ。戯れに首を飛ばされるかもしれぬのだぞ童め」
「え…」
不安気に王太子を見るカエル少年。ようやっと己の立場に気づいたか
「いやしないから。そんな危険な独裁国家じゃないから」
眼前で手をブンブンとふり否定される。
「その…、身の安全は保証するから、近いうちにまた遊びにきてくれないか?」
「おう!」
「御意」
こうして奇妙な幼なじみたちが度々王宮に集うことになったのであった。