運命の出会い
王妃主催のお茶会は貴族の子女数名を招いた茶会だった。この国の王太子とやらが現在の私と同じ齢7つで、どうやら同じ年頃の童たちを集めたらしい。それぞれの親の顔色を伺うと、妙にソワソワしぎらぎらしていた。
なるほど、側近もしくは室候補を選出するための一つの場か。みな王妃や王太子に群がり、我こそがと少しでも印象に残ろうと必死である。
これなら来るべき日に備えた下準備もしやすい。
そう考え、私は隙を見て気配を消した。
ーーー1時間後
よし、ある程度の道の確保も仕掛けもできた。この辺で茶会に戻るか。誰かに聞かれたら花畑に見惚れていて道に迷ったとでも言い訳しよう。
と、花畑の中程を歩いていた時、何者かが潜んでいる気配を察した。
(なんだ…?私を狙ってはいないようだが…。)
潜んでいる者はすぐに発見し、その視線の先を見やると1人の幼女がいた。薄桃色の珍妙な髪の幼女だ。茶会の客の1人だろうか?全く忍んではいなさそうだし、私と同じ目的でうろついているとは思えないから、茶会に飽いて遊んでいるのだろうか。手には花冠を持っている。
「よし、できた!うふふ、綺麗〜」
満足気に花冠を掲げているが、隙だらけだ。何者かが仕掛けようとしたその瞬間。
「動くな」
「なっ…?!」
私は何者かの後ろに回り込み、仕込んでいたナイフを背中に当てた。ちなみにこのナイフ、茶会の菓子用の物を失敬しただけの品なので通常殺傷力はない。しかし脅しには十分だ。
「きさま、何をしようとしていた?」
後ろを向かせたまま、童だと悟られぬよう出来うる限り低い声で尋ねた。
「き、きさま何者…!?」
「聞かれたことのみ答えろ。でなければ命はない」
殺気を出して脅して見せれば相手はやたらとオロオロし出した。
「お、俺は…」
「そこまで。」
凛とした声が横から届いた。
視線だけそちらに向けると今生では珍しい黒髪の童がいた。この童、先程の茶会で紹介されたー、
「なにかの遊びかい?それにしては物々しい雰囲気だけど…」
「クロード殿下!お助けください!」
ナイフで脅されていた者が現れた王太子に助けを求めた。こいつ王太子の子飼いか?しくじったか…?
「君は確か…バルク公爵家の息子かな?そしてそっちの君は…」
王太子の表情を見るに子飼いではなさそうか?ならば…
「この者があちらにいる幼女を狙っておりました。手込めにしようとしたかと思い止めた所存です」
「てごっ…!?いやいやいや、俺まだ8歳だし!茶会に飽きたからその辺のガキをこれでからかおうとしただけだし!」
そう言って手の中を開くとそこからカエルがでてきた。ゲコッ!む、可愛い…。
背が低いのは忍び故かと思ったが、正真正銘の童だったか。うぅむ、まだ今生の常識になれぬな…。
「そうか、ならば穏便に済まそう。幸い少女も気付いてはおらぬようだしな」
そう、少女はこの騒ぎに全く気づかずに先程とは色違いの花冠をもう一つ作っていた。そわそわと何かを待っているようだが、こちらは決して振り向かない。
一連のやり取りを見ていた王太子はブフッ!と下を向いて吹き出したかと思うと、顔を上げ
「邪魔をしないよう移動しようか。君たちとはもう少し話をしてみたい。」
王太子はそう言って柔らかく笑うと、私とバルク公爵子息とやらを茶会とは少し離れた東家の様なところに案内した。
王太子はこの世界で珍しい黒髪黒目