プロローグ
ごうごうと燃える炎。人影に向かって手を伸ばそうとするももはや身体は動かない。だが私は忍び。肝心な時に使えぬ道具になど何の意味もないではないか。行かなくては…主のもとへ!その命、志、お守りせねば…!しかし思いも虚しく燃えてゆく城の中、私の意識は途切れたのだった。
次に意識が戻った時はきらびやかな部屋の中だった。目はよく見えない。金色の奇妙な髪色なものたちに囲まれている。ここはどこだ…?地獄か?それにしてはきらきら眩しいが…。
「〜〜〜〜!」
まるで分からぬ言語でまわりの者たちが騒ぎ出した。歓声か?喜びの感情が伝わってくる。よくわからないが…また私の意識は微睡の中に消えていった。
この身に起きたことを理解していったのは物心ついた3つくらいからのことだった。赤子のときは意識がはっきりしなかったし、言語も理解出来なかったが、教育を受け知識をつけていくうちにだんだんとこれがいわゆる輪廻転生だということに気づいた。
どうやら私はバーレリア王国という異国に転生したらしい。聞いたこともない国だが、日本からどのくらい離れているのだろうか?主の元に戻れるのだろうか…。いや、違う。私は守れなかっ…
「っ…!」
ズキっと頭が痛む。
前世の最期を思い出そうとするといつもこうだ。その度考えるのをやめ、修行に打ち込むことにしている。それもこれも脆弱な幼子であるこの身体のせいだろう。いつしかまた主にお使えする為、心身ともに鍛える必要があるのだ。私は忍び。良き道具だ。そう考えて、今日も窓から飛び降りた。
「お嬢様ー!キリーお嬢様ー!?」
侍女が必死に呼ぶ声が聞こえるが、気にせず走り出す。あのか弱い女に私の気配を探れなどしないのだから。
「旦那様!またお嬢様が消えました!」
「またか!厳重に見張りをつけているのに何故消えるんだ!?」
この時キリルシュカ=エイル7歳。公爵家の姫君として新たな生を生きていた。
軽ーい気持ちでお楽しみ頂けたら幸いです