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電気羊はタンゴを踊る  作者: おしぼり
2/15

ハルカ

 ミツヒロはヨースケに続いて、食堂へと入った。

 

「A定食はハンバーグで、B定食は魚の味噌焼きか。ミツヒロ、お前、B定食にしろよ。俺はA定食にするから」

「なんだよ急に」

「それぞれが別のモノを頼んで、途中で交換すれば、両方味わえるだろ?」

「、、、」

「ん? 俺、なんか変なこと言ったか?」

「いや、お前、頭いいな。その発想は無かった」

「なんでだよ! どんだけカロマックス食えばそんな思考回路になるんだよ。頭の中もカロマックスなんじゃないのか?」

「違うよ」

 

 ミツヒロはそう言うと、カウンターでB定食を受け取る。

 食堂に入って、カウンターで食事を受け取る。そうすれば勝手にその分の料金が給料から引かれる。そのくらいのことはミツヒロも知っている。

 

「混んでるんだな」


 割と満席に近い食堂を、お盆を持ってミツヒロは見渡す。


「そりゃそうだろ。昼時だからな」

「そんなにみんな、食堂に来るんだな」

「昼食の時間も計算されて、会社は俺たちに仕事を振ってるんだ。それを、時間の無駄だとか言って、カロマックスだけ食べて仕事してるのなんて、そっちの方が少数派だよ」

 

 ヨースケはそう言うと、四人がけのテーブルへと向かった。そこにはひとりの女性が座っていた。

 

「ここいいですか?」

「ええ、私はもう済みましたから」


 ヨースケがその、白衣を着た女性に声をかけると、彼女はそう言って席を立った。

 そして、空になった器の乗ったお盆をカウンターへと返すと、彼女は食堂から出て行った。


「何やってんだよミツヒロ。早く座れ。のんびりしていたら、それこそ昼休み終わるぞ?」

「あぁ、わかってる」


 ミツヒロはそう言うと、ヨースケの向かいに座る。


「彼女に悪いことしたかな?」

「なんでだよ。食い終わってたんだからいいだろ?」

「そっか」


 ミツヒロはそう返すと、ヨースケと同じように食べ始める。

 ミツヒロは、食事とはどのようにすべきなのか、イマイチわかっていない。

 ミツヒロは、ヨースケを真似るように、味噌焼きを箸で小さく分けると口へと運ぶ。

 骨が口の中に刺さる。骨を取り出し、皿に戻す。

 今度は骨を外してから、口へと運んだ。

 やはり食事とは面倒なものだ。ミツヒロはそう感じる。


「それにしても彼女、変わってるよな?」

「知ってるのか?」

「有名人だよ。ハルカって名前らしい」

「へー」

「なんでもかなり優秀で、政府の極秘プロジェクトをほぼひとりでこなしてるらしい」

「そうなんだ」

「付き合いも悪いらしくてな。仲のいい同僚もいないらしい。それもあって、彼女がどういう人物なのかけっこう謎なんだよ」

「極秘プロジェクトやってるんだったら、仕方ないんじゃないか? 誰かと仲良くして、うっかり話してしまうことだってあるかもしれないし」

「なるほどなぁ。そうなのかもな。それより、そろそろハンバーグと味噌焼き、交換しようぜ」

「あぁ」

「ところで、この魚、なんの魚なんだろうな?」

「さぁ、ハンバーグも何の肉なんだろ」

「しらね」


 ヨースケはそう答えると、味噌焼きを頬張り、器用に骨だけを口から取り出した。


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