表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電気羊はタンゴを踊る  作者: おしぼり
10/15

研究室

「まだかな」


 目の前の空間にモニターを表示させるが、ハルカからの連絡はなかった。

 今日、一緒に帰ろうとハルカから言われていたミツヒロは、それでも社内から一緒に帰ることに少し抵抗があり、会社から少し離れた公園で時間を潰していた。

 夜の暗い公園には子供の姿はない。公園に面した道路を、仕事に疲れた者たちが、家路を急ぎ通り過ぎていく。

 

「何かあったのかな」


 ハルカから告げられていた時間は、とうに過ぎていた。

 ミツヒロは、公園を出ると、家路を急ぐ彼らの流れに逆らうように歩き出した。



 退社してから数時間ぶりに、会社へと戻ってきた。

 さすがに夜も遅いので、職員の姿はほとんどない。

 ミツヒロは、傍で誰も見ていないのを確認してから、もう一度、通知モニターを出現させる。公園を出るときにハルカにメールを送っていたのだ。だがその返信はない。

 少し悩んで、ミツヒロはハルカの研究室の方へと向かうことにした。

 ハルカの研究は極秘プロジェクト。社内のほとんどの職員が、その内容を知ることは出来ない。当然、研究室に近づくこともできない。

 それは当然、ミツヒロもそうだ。

 だが、ハルカのことが気になるミツヒロは研究室に向かうことにした。もしかしたら、ハルカの同僚などに会い、彼女の居場所を聞くことができるかもしれない。

 エレベーターの扉が開き、廊下に出ると、突然大きな扉が出現した。

 この扉の向こうには、中に入れる権限を持つ者しか入ることはできない。

 あたりに、職員の姿もない。

 

「やはりダメか」

 

 そう諦めかけ、扉の前に立つと、勝手に扉が開いた。


「えっ? なんで?」


 扉の向こうには、廊下が続いていたが、やはりそこにも誰の姿もない。


「おっ、おじゃましまーす」


 ミツヒロはそうつぶやきながらゲートをくぐる。

 静かな廊下を進む。

 途中、いくつか扉があったものの、鍵が掛かっていて開かない。


「どこだろ」


 更に進むと、一箇所、扉の開いている部屋があった。

 中を覗く。


「えっ、、、」


 あまりの衝撃に言葉を失う。

 部屋の中にはもう一つ、透明な壁で仕切られた部屋があり、その中には血だらけの何かが倒れていた。

 そして、その何かの傍に、何者かが佇んでいる。

 その何者かが、いきなり電気が点いたことに驚き、こちらを振り向く。


「ヨースケ?」

「ミツヒロ、、、何でここに?」


 ヨースケは、ミツヒロと同じく驚きの表情を浮かべている。


「いや、ハルカさんの帰りが遅いから心配になって、、、そんなことより、ヨースケ、これは一体、、、それは一体、何なんだ?」

「これは、、、ミツヒロは聞いていなかったのか? ハルカの研究対象だよ。絶滅したと言われていた生物。もう死んでるけど」

「えっ?」

「違う。俺じゃない。俺が来た時には死んでいたんだ」

「じゃあ誰が。というか、なんでヨースケがそれを?」

「それなんだが、、、」


 そこで、ヨースケは懐から拳銃を取り出すと、ミツヒロへと向ける。

 

「ちょっ、ヨースケ、何を」

「やはりお前だったか。残念だよ、俺の読みが当たったことが」

「一体、何を言って、、、」


 引き金を引くヨースケ。それに、思わずミツヒロは目を瞑る。

 そしてゆっくりと目を開ける。

 体に異常はなかった。

 目の前には拳銃を構えたままのヨースケが立っていた。

 そして後ろで何かが倒れる音がする。

 ミツヒロが恐る恐る振り返ると、そこにはヨースケの放った弾丸で左目を破壊されたメグミがいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ