続々々々 神様女子高校は異世界帰りの勇者と四十一人の嫁を出迎える
前回までのあらすじ。
嫁たちが魔王を応援したら、封印が解けたでおじゃる。
◇◇◇
魔王アルカリが完全に力を取り戻した。
朱色の髪色はそのままに、完全に血色がよくなった顔はかなりの美貌で年齢も若返ったように見える。
ムッチムチの身体に際どい水着みたいな恰好でなるほど、単純な男なら誘惑してあっさり落とせそうだな。
アタシの知ってる奴、バカとかロリコンとかは……こういうのがタイプじゃなさそうだから落ちないか?
しっかしコイツも乳でかいな。
後で揉むとしよう。男にはできん女同士のスキンシップって奴だ。
さーってと、今のこの位置にいると向こうも攻撃が出来ないだろうから少し場所を移動するぜ。
「それじゃあ誤解を解こうかな」
「誤解だと? 誰が何を誤解しておると言うつもりじゃ?」
「アタシが、そこの男に手を出すと誤解してるだろ?」
アルカリの表情がさらに険しくなった。
美人が台無しになるからやめとけよ。
「何を言うかと思えば……手を出さなくても近づくだけで殺すのじゃ」
「わお、さっすが魔王。過激な愛情表現だな」
「へ?」
この場にただ一人の男だけが、どういう事かを飲み込めていない様だった。
説明した方が良いのかね?
「つまりだな。この魔王はアンタに惚れてるんだよ」
「えっ!? うそっ!」
男の顔が驚きに満ちたモノへと変化していく。
おっと魔王は魔王でアタシを忌々し気に見やがるなあ。
「どういう理屈か知らんが、アンタ異世界に行って嫁が四十一人もできる程モテたんだろ? それを疑問に思わなかったのかよ?」
「いや、別に……」
「その男は、勇者の称号を得て我らの世界では最強となった。じゃが、それ以上に本人が自覚しておらぬとんでもないスキルを得ておったのじゃ」
「えっ!? そうだったのか?」
「へえ、とんでもないスキルねえ……そのスキルってなんだよ?」
「我らの世界では呪われし究極のスキルと伝えられる〈魅了〉じゃ」
「〈魅了〉だって? そんなの向こうの世界では聞いた事ないぞ?」
「存在を知る者すらごく少数の超絶レアスキルじゃからな」
なるほど、そういう事か。
それでこんなに女に惚れられて、さらには魔王までも虜にしちゃった訳だ。
まあアタシには全く効いてないけどな。
「基本幼い子供や年寄り、子供の作れぬ同性相手には効かん。世界に選ばれし強き者の子孫を残すために発現するレアスキルなのじゃ」
「なるほど。アタシがそのどれかに当てはまるとでも言いたいのかよアルカリ乾電池? ぶっ飛ばすぞ?」
「やってみろ小娘」
「おう、ぶっ飛ばした後にリトマス試験紙くっつけて何色に変わるか実験してやるよ」
アルカリ性はどっちに変わるんだったかな。
まあ、どっちでもいいや。
見えない魔王の手による攻撃が再び開始される。
四方から襲い来る攻撃の気配を察知し、かいくぐるようにして避けた。
だが攻撃はそれだけでは終わらず、次々と繰り出される。
しっかしコイツもチビ女も、アタシはお前らの惚れた男になんざこれっぽちも興味ねえのに勝手に勘違いしやがって。
何なんだろうな一体。
まあそれでもアタシに喧嘩を売った代償は高くつくぜ?
拗らせ魔王もチビ女同様、一発かましてやるとしよう。
宙に浮いたままの魔王に向かって跳躍。
そんでその勢いのままぶん殴――
「ブゲッ」
カウンター食らって叩き落されて、地面で頭を打った。
しまった、頭から落ちたからスカート捲れたじゃねえか。
男の方へと視線を向ける。
するとこっちと目が合って、ほっこりした顔で微笑みかけてきやがった。
「不可抗力だから、怒るのは違うぞ? なっ?」
何故か親指を立てながらそんな事を言う。
「おのれ小娘、何を可愛らしいパンツで男を誘惑しとるんじゃボケェッ!」
「誰が誘惑するか! そんで可愛らしい言うな!」
知り合いのガキからの貰いもんなんだよ。
お小遣いで買ったプレゼントだって言われたら捨てられんだろうが、そもそも捨てるのも勿体ないし。
って危ねえ!
頭上から見えない攻撃が連続で降ってきた。
すぐに攻撃回避の為に動く。
男を巻き込まないように距離を少し離す。
するとあっさりと攻撃が止んだ。
何かさっきから想定よりも攻撃の数が少ないぞ?
確か四十一人分の手を持ってる筈だよな?
つまり八十二本分か、いや自分の手も含めたらプラス二本は余分に見といたほうが良さそうだがそれでも少ない。
どうなってるんだろ……
「魔王ちょっと弱すぎるんじゃねえ?」
油断してカウンター食らったけど、やっぱりノーダメージだし。
手数も少なくて、何か一撃必殺を狙ってる感じもしない。
「いやいや、強いよ! 俺、アイツ封印するのに精一杯だったって言ったじゃん!」
「それはお前も弱いからだろ?」
「そうじゃなくて、この世界に戻ってきてから何か力が出ないんだよ」
「ふむ。つまりアレは魔王アルカリの本当の姿だけど、能力はもっと強力で強かったと? 噓くせえな。話盛ってるんじゃねえか?」
「盛ってない、全っ然、盛ってないから。本当にマジ洒落にならんくらい強いのよ」
なるほどね。
じゃあ考えられる理由は二つだな。
一つ、異世界の住人はこの世界に来ると弱体化する。
一つ、そもそも魔王は本気で戦っていない。
さてどっちかな?
この能力使うの気が引けるんだけどちょっと試してみるか……
魔王は凡そ七~八メートルの場所に浮いてるんだが、浮遊の能力を使ってる感じがしない。
て事は多分、見えない手で身体を支えてるんじゃないだろうか?
再び魔王に向かって跳躍する。
その途中で能力を発動。
「空泳空間」自分の周囲に水の抵抗を持つ空間を作り出すロリコンの使っていた能力だ!
「な、ん、じゃ、こ、れ、は!」
魔王もさすがに面食らってやがる。
あくまで水の抵抗を持った空間であって実際に水で満たされる訳じゃないから喋れるし呼吸も出来るぜ。
コイツで見えない拳の攻撃は無力化できる。
速度も威力も殆ど勢いを失うからな。
魔王が慌ててこっちを狙って攻撃してくるが残念、もう当たらねえよ。
力を隠しているなら、何か別の方法を使ってくるかもしれんが果たしてどうだ?
作り出した空間内を人魚の様に華麗に泳ぎ魔王との距離を詰める。
そして魔王の眼前で能力解除アーンド、神様拳骨!
「ヘブシッ」
魔王は地面に落下していった。
アタシは見事に魔王を仕留めましたとさ。
ほら褒めて良いぞ。
次回、いよいよこの話の最終回だ!
次で最終回です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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