続々 神様女子高校は異世界帰りの勇者と四十一人の嫁を出迎える
前回までのあらすじ。
嫁の名前にツッコミを入れてたら、話が終わらなかった。
◇◇◇
お待たせ。
異世界から帰ってきたばかりなのにボケ倒す男に対してツッコミを入れる話の後半戦だ。
よしどこからいくかな?
「そういえば嫁は四十一人っつったな? 四十二人いるんだが?」
「おいおい、ちゃんと聞いてなかったのか女子高生の神さんよー」
「その呼び方をやめろ、それだとアタシが女子高生の中だけの神みたいだろ」
「ア〇ラーみたいな?」
「そこを伏字にすんな、別の神と間違われたらどうすんだ! 只じゃ済まないだろうが! てかそっちは信者の呼び名だ! そもそも今時何でそんなの知ってるんだよ?」
「シ〇ラ―も知ってるぞ」
「……ケンちゃんじゃないよな?」
「ちがうぞ。てかそれは知らないんだな……」
「話を逸らすな、実際四十二人いるからおかしいって言ってるんだよ」
「おかしくないだろ? ちゃんと四十二人の名前を呼んだあとに、うち四十一人が嫁だって言ったじゃないか」
ん? そうだったか?
えーっと、思い出してみるぞ。
『それじゃ、アイシャ、アカリ、イザベラ、イザベル、イライザ、いろは、うゐ、エリス、オリビエ、かよ、キンキン、クルミ、ケロンパ、サーシャ、しゑひ、ジュリー、スミレ、すん、そつねな、ソフィア、たれ、チーター、ツミレ、てあさき、トミエ、ナターシャ、にほ、ぬるをわ、ネトネト、のおく、ヒラリー、ふこえ、フルジェンコ、へとちり、マリー、ミッキー、メアリー、もせ、やまけ、ゆめみ、ヨッシー、らむ、以上! うち四十一名が俺の嫁だよ』
確かに言ってやがるな。
つまりこの中には嫁じゃないのが紛れてるって事かよ。
「嫁じゃないのは誰だ?」
「えー、誰だと思うー?」
イラッ、ときた。
コイツまじ殴りてえ。
「あっれぇー神なのに、女子高生の神なのに分かんないのかあ?」
何で急に煽ってきてるんだコイツ。
能力付加してぶん殴ってやろうかな。
一回深呼吸する。よし落ち着いた。
まあ、嫁じゃないなら何なのかってのを推理すれば良いんだよ。
つまり見た感じ動物っぽいのがいたからペットとかそういう感じじゃないだろうか?
ならヒョウ柄の奴と、トカゲの奴と、あのネズミみたいな耳の奴とかか?
しまったな、名前だけ聞いてて顔と一致してねえや。
ヒョウ柄はチーターだ、間違いない。
そんでトカゲとネズミっ娘は……
「どっちがミッキーでどっちがヨッシーだっけ?」
「なんであの二人を指差してそんな事聞くんだ?」
「そのままで大丈夫か? 国内と国外、それぞれ最強の法務部を持つ所を相手にしたくないんだが」
「いや何の話だ? ネズミの耳してるのはスミレでトカゲの方はツミレだよ!」
「トカゲのツミレなんか食えるか!」
「誰も食べろなんて言ってないだろ!? 大丈夫か女子高生の神?」
「お前がペットに変な名前を付けるのが悪いんだよ!」
「ツミレは俺の嫁だぞ!」
「トカゲを嫁って言い切った! コイツ気持ち悪っ!」
本当にコイツ、異世界に行って頭どうにかなったんじゃないか?
ここで生活させる前に病院に連れて行ったほうが良さそうだ。
この世界にいない未知の病原菌とか持ってるかもしれん。
ん、そういえばマニュアルにそんな事が書いてあったよな?
「面と向かって人に対して気持ち悪いって言うなよ……傷つくぜ。俺ってアンタに傷つけられてばっかだな、いろんな意味で」
「何を急に格好つけだしてんだ、さらに気持ち悪いな」
「だからやめてくれってば」
「まあどうでもいいや。それよりもマニュアル思い出したんだけど、お前がこの世界でまた暮らすのは構わないけど嫁はダメだからな」
「は? 何でだよ」
「こっちの世界のルールが狂う可能性があるからダメ絶対。それとお前の力もこの世界では封印するから」
そこまで告げてやると、目の前の男の纏う空気が変わった。
「何言ってんだ。それじゃあどうやって魔王を抑え込むんだよ!」
「いや魔王を倒して帰ってきたんだろうがお前はよ。自分でそう言ったじゃねえか」
「言ってないよ、世界は救ったけどな。俺の力では魔王の力を封印するのがやっとだった。長く苦しい戦いの末に俺は嫁たちの力を借りて魔王をようじょの姿に変えたんだ」
「……は?」
「そうして力を封じられやっと大人しくなったソイツを俺は一緒に連れていくことにしたのさ」
「……は?」
「俺と四十一人の嫁の力によって魔王は封じられた。だがその所為で俺たちは異世界から追放された。それがこの帰還の真実なんだ」
「……なるほど、そうだったのか。もしまた再び魔王の封印が解ければ異世界は大変な事になるもんなあ」
「だから俺の力を封印させるわけにはいかない」
なるほどねえ……
さて、どうやってコイツ等をこの場所から追い払おうかな。
どっか人のいない南米のジャングル辺りに放り出すか?
ちょっと確認してみるか。
「あっ、お前ら虫とか大丈夫?」
「何だよ急に」
「ワタシ、大好物デス」
トカゲのツミレが元気よく手を上げた。
いや、前足かな?
素直で大変よろしい。
「虫ダケジャナク、人間モ大好物デス!」
何だ? トカゲのツミレが物騒な事を言い出しやがったぞ?
「お、おいツミレ? 何言ってるんだよ?」
何か男の方もちょっと慌ててるな?
どういう事だ?
よく見ると、見た目が人間っぽくない嫁共の様子がおかしい。
目の色が違うというか、何か正気じゃないんじゃないの?
チーターとミッキー……じゃなかったスミレも唸り声を上げてるんだが……
「おいアンタ。何が起こってコイツらこんなに怒ってるんだ?」
「いや、わからない。こんな時にダジャレを言うアンタの神経が分かんない」
「やかましいわ。キンキンじゃない、偶々だ! って、アタシに何言わせてんだボケ!」
「余裕あるね、神は」
いつの間にやら正気っぽくない人外の嫁軍団に周りを囲まれていた。そんでもって、人の姿をしてるのは相変わらず死んだ魚の目をしたままボーっと突っ立ってるだけだ。
明らかに異変が起きてやがる。
「ゴ主人様、美味シソウ」
ツミレが男に襲いかかった。
男は反撃できずにあっさりと組み伏せられる。
「齧ラセテ、チョットダケヨ、顔ノ半分ダケダカラ」
うわあ、涎が酷いなあ。
男は顔がベッタベタ、いやネトネトになってるぞ。
ちょっと待てよ? こういう時こそ、ぬるをわって言うのかな?
「絶対に何かしょうもない事を考えてるだろ! ちょっと助けて!」
人の心、いや神の御心を読むんじゃねえよ。
読むならちゃんと忖度しやがれ。
「お前勇者なんだろ? 自力で何とかしろよ」
「そ、それが、ち、力が入らないんだ。アンタさっき俺の力を封印するって言っただろ。今はそれ解いてくれ!」
「いやいや、アタシまだアンタの力を封印してないからな?」
「えっ!? そんなっ、ちょ、ちょっと、ツミレ、ベロベロしないで、うわあ生臭い!」
いやそれお前の嫁なんだろ?
嫁に向かって酷い事言う奴だな。
こういう男は嫌だね全く。
アタシは無造作にトカゲに近づくと、頭部を掴んで男から引き剝がした。
さらにアタシがまだ人間だった頃に使っていた「発熱」の能力を使用する。
当然あの頃とは、威力が段違いだ。
トカゲは一瞬のうちに熱されて意識を失った。
「こ、殺したのか?」
男がおっかなびっくり、アタシに向かって話しかけてくる。
「いや死んでないよ。高熱の所為で意識がぶっ飛んだだけさ」
「そ、そうか。良かった」
男は心配そうにヨッシー……じゃないツミレを見ている。
とは言っても見てるだけで近寄って介抱したりはしていない。
まだそんな事ができる状況じゃあないからな。
さてと、それじゃあこんな事になった元凶へと視線を送るか。
「これはお前の仕業なんだよな、異世界の魔王?」
アタシはこの事態を引き起こしたと思しき人物に対して声をかけたのだった。
てな訳で、まだもうちょっと続くぞ。
本日、夕方頃にもう一話投稿します。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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