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神様女子高生の残念な日常~異世界帰りの勇者と四十一人の嫁編~  作者: 城火十夕顔
第二章 異世界帰りの勇者と四十一人の嫁編
4/9

神様女子高校は異世界帰りの勇者と四十一人の嫁を出迎える

 たまになんだが連れ去られただか、迷いこんだだかでこの世界から別の世界に行く人間がいるらしい。


 前任者が言うにはそういうのを異世界転移だとか呼ぶそうだ。

 因みにこの世界で死んで、魂がどっか別の世界に行って生まれ変わると異世界転生になるらしいな。


 アタシが知らんのだから、これは一般的な常識ではないのは間違いない。

 だから誰にでも分かるようにちゃんと説明するアタシは親切な神様だろ?

 褒めて良いぞ。


 おっと、話がそれたな。


 とにかく今回はそんな異世界に行ってしまい、元々住んでいたこの世界へと帰ってきた男の話だ。

 正直、この話をするかどうかは迷ったんだよな。

 何せ未だにアタシはこの話をすると頭が混乱するんだ。

 まあそれでも自分で何とか頑張って話をしようと思う。

 非常に難しい話だから、聞き終わった後に問題があったとしてもそれは多分勘違いだからな?


 オチの解釈は自己責任で頼む。

 それじゃあ、語ろう。

 とある異世界帰りの男の話を。


◇◇◇


 確かあれはまだ少し寒い冬の日だった。


 近所の公園にいつもの別の世界と繋がる時特有の空間振動が起こったんだ。

 アタシのいた場所から比較的近かった所為もあって、そこまでは五分とかからずに到着した。


 何もない場所から何かが出てくるってのは普通の人間が見ればパニックになる。

 だから能力で周囲の人払いをしたうえで結界を張り、アタシは一人で公園が異世界と繋がるのを待った。


 大体そこから十分くらい待ってたら、大きな門が出現しやがった。

 さらに門の扉が徐々に開いて、やがて向こう側に誰かが立っているのが見えたんだ。


 また侵略者かなと思って様子を見ていたら、そこから出てきたのは二十代半ばくらいのアジア系の男だった。

 格好は何かピカピカ光る鎧兜、それと腰には西洋の諸刃の剣。

 何時の時代の人間だって感じの奴が、背伸びをしながら出てきやがったんだ。

 とりあえず、黙って様子を観察していると、その男が喋りだした。


「いやーようやく元の世界へ帰ってこれたぜー! ある日突然異世界に召喚されて魔王と戦えと言われた時にはどうなる事かと思ったけど、向こうに召喚された時に貰えた勇者の力のおかげで俺TUEEEEEな感じで世界を救ってやったぜー! ひゃっほーい!」


 事情を聴く前に全部自分で喋ってくれたな。

 アイツ中々やるじゃないか。

 こっちの手間が省けて助かるぜ。


 まあそれでも前任者作成のこういう時の対応マニュアルの通りにしないとな。

 とりあえず日本語喋ってるな。多分日本人らしいから、普通に話しかけるとしよう。


「おいそこのアンタ、ちょっと良いか?」

「うおっとー、何だいきなり! えっ、女子高生!? ようやく戻ってきたのにまだ何か起こるのかよ!」


 何だかとつぜん男がキョロキョロしだした。

 まあ、いきなり知らん人から声かけられたら普通は驚くわな。

 アタシなら喧嘩売られたって思うし。


「驚かせて悪いな。喧嘩売ってる訳じゃないんで安心してくれ」

「いやいや、喧嘩売ってるとか思ってないから。それでアンタは何でこんな場所にいるんだ?」


 ……それはアタシの台詞だ。

 お前が何しにここに来たんだっていう話なんだよ。

 まあ混乱させたみたいだし、マニュアル通りに進めよう。


「アタシがここにいるのはアンタの目的が知りたいからだ」

「目的? いや生まれ故郷に帰ってきただけだから。これからはこっちの世界で平和に暮らすのさ。まあ俺って多分この世界でも最強だから人知れず世界を救っちゃうかもだけどね」

「あっそう。えーっと、次なんだっけ? ああそうだ、帰ってきたのはアンタ一人だけか?」

「いや俺だけじゃないよ」

「他にもアンタのいた場所にこの世界の人間がいたって事か?」

「違うよ。そうじゃなくて、俺には嫁がいるんだ」

「えっ?」


 何だコイツ、変な事を言い出したな。

 すっごい嫌な予感がするんだけど、一応聞かないと不味いよなあ……


「あー、その嫁ってのはこの世界の人間か?」

「ハッ、そんな訳ないだろ。こっちの世界の女なんて異世界の女に比べたら月とスッポンポンだからな」

「それを言うなら月と鼈だろ」


 なんだスッポンポンって?

 裸になるのか?


「ああそういえば、そう言うんだったね。異世界生活が長くて少し日本語が不自由になっちゃったぜ」

「いや日本語ペラペラ喋ってんだろうが。まあそれは一旦置いといて、それじゃあ異世界人をこっちの世界に住まわせたいのかアンタ」

「そういう事さ。まあ俺は異世界を救った英雄なんだからそれぐらいは当然の権利だと思うぜ?」

「ふーん」


 こういう時はどうしたら良いんだっけ。

 認めた方が良いのか、それとも……


「そういや俺は何で女子高生なんかにこんなに素性を話してしまったんだろう?」


 今頃かよ、そりゃアタシの能力でこっちに疑問を持たずに素直に話をするようになってるからだよ。

 まあそんな事は一々教えてやらんが、こちらの素性くらいは教えてやっても良いだろう。


「それはアタシがこの世界の管理者で神様だからだ」

「えーっ、うっそだー! 神ってのはもっと見目麗しく気品があるんだぜ? アンタは人間にしては綺麗な方だけど神としてはなあー気品も感じられんしー」


 ……ちょっとムカついた。


 コイツ、一発ぶっ叩いてやろうかな。

 アタシは近所のおばさんに最近すごく綺麗になったねって言われるくらいは美人なんだぞ。


 ……まあ大体その後おばさんは「私の若い頃には負けるけどね」って言いやがるけどな。


 よし決めた、おばさんの分も込みで後で二発殴ろう。


「信じようが信じまいがどっちでも良いよ。それよりもその嫁とやらはどこにいるんだ?」

「ああ、それならあの門の向こう側に待ってるよ。こっちが安全かどうか先に確かめるために俺が先に出てきたんだ」

「そうか、今はこの辺りに人払いの結界を張ってるからその嫁とやらを呼んで良いよ」

「そうするよ。おーい、こっちに来ても大丈夫だぞ」


 男は門に向かって呼びかけた。

 すると門の向こう側から一人誰かが姿を現したんだ。


 それは身なりの整った美しいドレスを着た金髪碧眼の少女だった。

 容姿は明らかに幼く、恐らく年齢は十代前半ってところか。


 少女の姿を見て思わずアタシはドン引きしてしまった。

 そしてしばらくの間、思考を止めてしまったんだ。


 今思えば、その後の惨劇はここでアタシが正気を保っていれば起こらなかったのかもしれない。

 だけど、この時のアタシはそんな事が起こるなんて思ってもいなかったんだ。



 次回へ続く


投稿再開


本日はもう一話を夕方に投稿します。


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