神様女子高生は異世界の侵略者を退治する
今現在世界は、実は少しだけ大変なことになっている。
お前は誰だって? アタシの名前は……まあ、それはどうでもいいさ。
つい先週からアタシがこの世界の管理者、分かりやすく言うと〈神〉になった。
アンタはそれだけ知っていればそれでいい。
前任者が言うには、最近はこの世界を含め、あらゆる世界同士が不安定らしく、他の世界と突然繋がって色々な不具合が起こる事があるらしい。
まあ別にそれもどうでもいいか。それを是正するために、アタシの前任者だった〈神〉が働いているらしいからな。
とにかく是正の仕事をする為に前任者はアタシを後任として新たな管理者、つまり〈神〉に選んだって訳だ。
その経緯についてどうしても聞きたいというのならば、詳しく話してやっても良いが、死ぬほどにとんでもなく長い話になるぞ? 基本、それを語るのはめんどくさいので、どうしても知りたいっていうなら、別にその手段を用意してやる。だから知りたいなら後で自分で調べて読んでほしい。
それよりも現在、何が起こっていて何が大変なのか、その話をするぞ。
今アタシがいる場所、それは富士山の麓に広がる樹海、俗に自殺の名所と呼ばれている場所だ。
ここにアタシが何をしに来たのか、それは異世界からやって来た謎の存在を何とかする為だったりする。
今から凡そ四十五分前、突如この場所が異世界と繋がった。
そしてそこに、この世界の普通の人間では太刀打ちできないレベルの怪物が現れたんだ。
場所が場所だったので、人的な被害は殆んどなかった。だけど、全くのゼロという訳でもなかったんだなこれが。
何が起こったかって言うといわゆる自然破壊。樹海と呼ばれる場所の木々が荒らされた。
それでアタシはその異常に気づいて、ここまでやって来たという訳だ。
と言っても〈神〉としてはまだ新米で、力の使い方に慣れていない所為で少々手間取ってしまったけどね。
まあともかく、今アタシの目の前には異世界のから来た生物がいる。
前任者の残したマニュアルによると一応、相手の目的を聞いて、穏便に済ます様にとの事なので、その通りに進めようと思う。
でも、向こうは突然現れたアタシをの姿を見てあまり歓迎してる様子はないんだよなあ。
まあとりあえず、声をかけてみるとしようか。
「アンタ、この世界の生物じゃあないよな? 何しに来たんだ」
目の前の奴がどう反応するのか、慌てずに様子を見る。
外見は頭が抹茶色の骸骨で身体は真っ茶色の西洋の甲冑みたいのを着ている……上下の色合わせろや。
音の響きだけ合わせてくんじゃねえよ。読み聞かせて貰う人が混乱するだろうが!
と最初は思ったけど、鎧兜着てる様に見えるだけで、どうやらこういう外見の生物らしい。だって透視しても、中に人の姿は見えないし内臓が人間とかとは違い過ぎるもん。
そんでもって何だかこの生物は身体の体温が非常に高いらしかった。
どうもこの世界の生物ではありえない温度みたいで、そのおかげで雪は溶け周囲の木々が少し燃え始めてやがる。とりあえず後で火を消さなきゃならんな。
まあ、こんなのが人の多い場所に現れなくて本当に良かったなあ、なーんて事を思いながら向こうからの返事を待っている訳である。
『お前はこの世界の人間か? 丁度良い、我々が侵略するにあたり、この世界がどの程度のものか試させてもらおう』
何やら喋りかけてきたので、どうやら知能はあるらしい。
ただ残念ながら、言葉は通じていない様だった。
どうしたもんかね、穏便に済ませろとなっているんだが、言葉が通じねえなあ。
〈神〉になったんだから、それぐらい通じてもよさそうなのに残念だぜ。
アタシは、もう少し対話を試みようと思い、どう言葉を紡ごうかと考えだしたその瞬間だった。骸骨が激しく光輝きはじめて、その頭上に直径一メートルほどの火の玉を作り出しやがったんだ。
『ほら、これはどうだ?』
ソイツが何か呟くと、火の玉は物凄い勢いでアタシに向かって飛んで来た。
ひょっとすると、その火の玉を受けることが異世界の挨拶かもしれないので、とりあえず黙って受けることにする。
その火の玉は凄まじい熱で、アタシを焼くために周りの木々共々燃え上がった。
『ふむ、この程度で燃えるか。大したことなさそうだな。我一人でもこの世界は征服できそうだ』
怪物が、そのままこの場から立ち去ろうとした。まだ向こうの目的も、ちゃんとした話もできてないので勝手にどこかに行かれては困ってしまう。
なので、まだ火は燃えているが怪物に声をかける。
「おい、ちょっと待てよ。まだ話は終わってねえからな?」
すると、アタシの声を聴いた怪物が肩を震わせて、アタシの方へと振り返りやがった。
何でそんな驚いた感じ出してるのか顔さっぱり分からん。
表情は……骸骨だから余計に分からんな。言葉が通じないってのは不便なもんだぜ。
しかしアタシは〈神〉になったんだから全知全能だと思ってたのに、一体どういうことなんだろうかね? きっと、まだまだ〈神〉の力を使いこなせていないって事なんだろうな。
『ほほう、まだ生きているのか。なるほど少し侮り過ぎたらしい。ならば本気でいくとしようではないか!』
今度は怪物はさっきよりも大きな火の玉を三つ、頭上に発生させる。
何となくだが、温度もさっきより高くなっていそうだ。
『死ねっ!』
怪物が何かを叫ぶと、火の玉がこちらに向かって一直線に飛んで来る。
再び、凄まじい熱がアタシの周りに広がり、大きな爆音と、派手な火の光が周囲一帯に激しく広がった。
とにかくよくわからないが、向こうがこんな事をするのはきっとアタシに喧嘩を売ってるのではないだろうかと思う。
なので、アタシも見よう見まねで同じように火の玉を作り出した。温度は、今受けたのと同じくらいに設定しておく。
そんでもって火の玉の数は、最初と今受けたのとを合わせた四つだ。他所の世界の事はよく分からんけど、これぐらいならやり返しても文句を言われんだろう。
という訳で、四つの火の玉を怪物にぶつけ返してやった。
『な、何だと!? グワアアアアーッ!』
何かを喚きながら一分もしないうちに怪物は消えていなくなってしまった。一応逃げた可能性もあるので、しばらく怪物を探して周辺を捜索したけど、どこにも見つからない。
なので捜索を終了して怪物がやって来たらしき異世界と繋がった場所を修復して家に帰ったのである。
◇◇◇
家に帰った後で、改めてコミュニケーション能力を強化して、怪物の言葉を思い返してみると、やはり向こうはアタシを殺すつもりだった様な気がするな。
とはいえ無益な殺生はあまり好きじゃない。
今回は最初から相手がこちらを殺すつもりだったので結果オーライだったかもしれないが、今後同じことがあった場合はもう少し慎重に行動しないといけないなと反省するアタシだった。
◇◇◇
その日の晩、寝る前に火がちゃんと消えてたのか気になった。一応念のために急いで戻ってちゃんと確認しておいた。さすがに冬場で雪も降ってたからちゃんと火は消えてたぞ。
消し忘れてた訳じゃないからな? 多分火を消したのはアタシだから。だって神だからな。
本当にちゃんと消したよ? そんな家の電気やガスじゃないんだから火を点けっぱなしで帰ったりはしないよ? いやマジで。
……んんっ、ゴホン! という訳で今度こそアタシは家に帰って、ゆっくり休みます。おやすみなさい。
【スキル】
〈コミュニケーション能力〉LV1→LV2へアップ
次回は残念な日常の話になります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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