悪魔の巨大惑星
ある恒星系で巨大な惑星が突然、移動を開始した。
この惑星は近くの小惑星郡に突入し全てを粉砕して驀進してゆく。
時に軌道は乱れ大きな旋回を繰り返しつつ重力加速にて速度を高める。
ある恒星系に進入した時。ある知的生命体の住む惑星に直撃する軌道をたど
った。進化した彼等は複数の衛星に設置したブラック・ホールガンで対抗を
試みた。しかし悪魔の巨大惑星には何の効果もなかった…。彼等の恐怖と戦
慄の表情が現われ全ては無の世界に返ってしまった。
悪魔の巨大惑星は加速を重ね遂に光速を突破した。一端、降下した軌道から
再度、上昇に転じた時、急激な減速が発生した。重く冷たい海洋惑星に激突
した悪魔の巨大惑星は氷層惑星に変貌し淡い旋回をしつつ落下してゆく。
そこに太陽系第三惑星地球があった。
地球人は肉眼で天体をみるのがやっとであり、日に日に大きさを増す、その
天体に神の名称をつけ拝むのだった。彼等にはこれが宇宙的事象である事す
ら解らなかった。不安も恐怖もなかった。何故なら太陽が昇ると巨大な天体
は消えてしまうからである。
「そこだっ!いけっ、あたれっ」
悪魔の巨大惑星は暖かい太陽系の陽光をあび、我が身の氷層を溶かし水の惑
星と化していた。幸い地球には激突せず付近をかすめた。
「くそ〜もうちょい、だったのに!」
その時、地球上で大音響が発生した。引力で吸引された悪魔の巨大惑星の水が
大量に地球海面に落下したのである。海面は破裂した。島は粉砕され人や動物
は高空に吹き飛ばされ高圧縮された大気の中で焼かれていった。
海面は衝撃で飛び上がり飛沫は天空に向けて飛散してゆく。再度、海面に悲鳴
が起こり巨大な輪を描いて海面は持ち上げられる。その高さは8000メート
ルの高空におよんだ。
大陸沿岸の人々は大音響と衝撃波でもがき苦しんでいた。目を使えるわずかな
人々は驚き絶叫した。人の視界をはるかに越える海水の上昇を見た。それはみ
るみる大きくなり大陸沿岸の山や森、そして人々を直撃した。呑み込まれると
いうより、すり潰された。抗う事の出来ない質量と圧力が人々や動物をすり潰
してゆく。
海面全体から湧き出る水蒸気が雨雲となり豪雨を降らせた。生き残ったわずか
な人々に強い雨が降り注いだ。海水の流入は収まる所か、激しさを増していた。
何とか高山にたどり着いた一握りの人々が、最後に見たものは大洪水の中を漂
う方舟であった。船上に長い白髪を蓄えた老人が豪雨に打たれて、天空に両腕
を上げ何事かを絶叫していた。人々は、ある女は、赤子を持ち上げ叫んだけれ
ど、老人は振り返りもせず、方舟と共にいずこともなく消えて行った…。
「なんだ!あのジジィは、結局生き残っちゃったじゃん!」
「う〜ん。やっぱ直撃じゃねぇからな〜」
水晶の輝く部屋の奥から一人の老人が血相を変えて現われた。真っ白いドレス
の様な衣服をまとっている。頭には白い雲のような輪が浮いている。
「こらっ!そこの天使、何をしておる!」
二人の若いカップルは真っ黒な長方形をした台からダッシュして逃げ出した。
長方形の台の上にはキラキラと輝く大銀河が存在していた。台の横には丸いボ
タンが左右に付いている。前面のパネルには災厄に喘ぐ地球の映像。そして得
点が…。
「おお…何という事を、地球が…。おお…星も幾つか無くなっておる。
このピン・ボールは創造主しか遊べぬと言うのに…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ダイヤモンドできらめくハイウエイを疾走する大型バイクがある。ゴッド・ダ
ビットソンクラシック。先程の若い天使カップルが乗っている。男の髪は金髪
のショート・カット。耳にはピアス。目には濃緑色のパイロット・サングラス
をかけている。男に抱き付き紫色のロング・ヘアーをたなびかせた女がこう聞
いた。
「ねぇ、ルシファー今度は何をやって遊ぶ?」
「その名はもう使わねェ。神は俺の事をこう呼んでいる。
堕天使サタンと…」
ここは天上界、銀河を超えた光の世界。
△ Grund Blue 2009 2/01
ちょいと、壮大な物語を書きたかったんで…(笑)
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