エピソード2 停止した時間
〜あらすじ〜
高校2年の井為宮涼介は
中学3年の伊藤美優に
新聞配達の手伝いを頼まれる。
西暦2084年6月19日PM.12時54分
災厄まであと6分…
日本・京都
〜伊藤家宅前にて〜
「あっ、おーい!!涼にぃー!!!」
青いパーカーとジーンズを着ている青年に
小柄で白いTシャツと青いスカートを
着た少女が笑って手を振っていた。
青年の名は井為宮 涼介と言い、
彼の背には木刀を入れたリュックを背負っていた。
少女の名は伊藤 美優、涼介を
兄のごとく頼り、時として振り回している。
今回も彼女の新聞配達を手伝ってもらう為、
涼介を呼び出した。
「いつものごとく買い物かと思ったら、
今回はバイトか?中学生でバイトはちょっと…」
そう言うと、涼介は美優の頭を優しく撫でた。
「バイトじゃないの!新聞配達の人が風邪で
寝込んで、私が代わりに配達しなきゃならなく
なっちゃったの!あと、『いつものごとく』って
どういう意味なの!?」
美優は撫でられながらも『いつものごとく』に
強く反応した。
「あーもう、そんなことより新聞は?
何部くらいあるんだ?50超なら今から帰るし。」
「何よ!63部という数に腰が抜けたの⁇
それで高校2年なの⁇ププッ情け無いわy」
「そう言えばお前小学校の発表会の時、涙目で
涼にぃ涼にぃってずっと言ってたよなぁ〜」
「23部配達してくださいお願いします」
…こうして涼介は23部、美優は40部を配達する
ことになった。
「で?どこの家に新聞を入れればいいんだ?」
涼介が尋ねると、
美優は新聞に挟まってる紙を見せながら、
「新聞に挟まってる紙に『〇〇様』って
書いてあるはずだから、そこのお宅のポストに
入れるだけ。カンタンでしょ?」
「あーはいはいなるほどなるほどー」
涼介は少々舐められたと思い、棒読みで答えた。
すると、唐突に近くの公園の時計台を見た。
時計台は午後12時59分から午後1時に変わった。
刹那、涼介と美優の持つスマホから
緊急の警報アラームが鳴り響いた。
涼介が警報アラームの詳細を確認している間、
美優は現状の理解に苦しんでいた。
「震度7…………………!?」
『震度7』と記されているのを確認した途端、
涼介は美優の左腕をつかんで公園へ走った。
「えっ、ちょっとぉ!?何かあったの⁈」
左腕をつかまれた美優は引きずられた状態で
涼介を追った。
「やらせてたまるかっ!!」
公園に着いたや否や、美優の左腕をつかんだまま
涼介は滑り台の下に潜り、柱につかまった。
「ハァ、ハァ…涼にぃ、何かあったの…?」
涼介のダッシュにより、
ヘトヘトになった美優が尋ねた。
「あぁ、実はな…」
警報アラームの詳細を説明しようとした直後、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………
「……えっ?何⁇」
美優は何の音か一瞬分からなかった。
「俺から離れるなよ!!!!!」
涼介は美優の手を握った。
「わ、わかった!」
美優も握られた手をしっかりと握った直後、
…ガタガタガタガタガタガタガタ!!!!!!!
「「うわぁああああああああっ!!!!!!」」
…地球上から時間が止まった。