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プロローグ

昔から、奇妙な夢を見る事は多かった。



知らない国の見たとこもない技術。


魔法のように、遠くの人と話すことのできる金属の板。



よく分からない物質で小石を飴菓子のように固めて地面に塗りつけたかのような、黒い道。


その上を走る、馬や牛などの動物が引く必要が無く、ガタガタと揺れない乗り物。


人がたくさん働いたり、住んだりしている石で出来た四角い巨塔。


がっこう。じょしこうせい。じゅけん。ぷちめいく。いんすたばえ。てれび。

じどうしゃ。ひこうき。てろ。じこ。

こみけ。まんが。どーしんし。おたく。おとめげーむ。だいがくせい。にじげん。


知らない言葉。知らない文字。


夢に出てくる自分は女の子で、いつも1人で手に持った金属板に映る動く絵を、ボタンをカチカチしながら遊んでた。


ボタンを押して遊ぶのをやめたら、ボタンが1つしかなくて、表面を複雑に叩いたりなぞったりして使う、『すまほ』で遊ぶ。それらはきっと、高等魔術のアイテムなんだろう。


お金持ちしか持たないような綺麗な家に住んでいて、物乞い達が見当たらない大きな街。学校にも行けて、綺麗で変わった服をたくさん持ってる。


夜でも街も家も光魔法の魔法具でいつも明るくて、優しい両親がいる。


お姉ちゃんがいて、時々その子供の面倒を見てあげる。小さくて膨よかな姪っ子と、漸く歩き回るようになった人見知りをしない甥っ子。皆んな綺麗なお洋服を着ていて、甘いお菓子を食べてニコニコしてる。



全部、全部、僕には手が届かない。遠い貴族の住んでる綺麗な場所。


夢に出ていた彼女が、とても羨ましかった。




それが、僕の前世だったと知ったのは、流行病でたくさんの人が死んだ、運命の日だった。




============

=======

===



ああ、またこの夢だ。


この夢の主人公は、女の子。視点では僕自身が見ているようなんだけど、鏡に映る顔も、来ている服も、仕草も喋り方も全部違う。


シミのない、ちゃんと洗濯された綺麗な服。ヒラヒラのスカートがとても可愛い。

僕の国では、あまり多くはないシャープな顔立ち。切り揃えられた黒髪と黒い瞳がとても似合っている。


僕の居る国では、女の人が足が出た服を身につけて居ることも、髪を切る事も、常識はずれって言われているけど、『彼女』の住んでる所では普通の事らしい。



『彼女』は、魔法の金属板に、待ち合わせしている友達を呼び出して話している。


どうやらお友達は遅刻してるみたい。


僕にとっては高級品である、小振りの時計を手首につけていて、これからの予定や集合場所に着いて説明している。



お友達は、30分くらい 遅れるみたい。

ばすの中で、じゅうたい に巻き込まれたって謝り倒している。


『彼女』は仕方ないなって笑って、近くのお店で時間を潰すって言いながら移動を始めた。


すくらんぶるこうさてん に差し掛かって、しんごうき が緑色に変わった。『彼女』はラッキーって頬を緩めて人混みの中を歩いた。


こうさてん の真ん中辺りで、お友達にバイバイって言って会話を終わらせようとする。


そこで周りから悲鳴が上がる。視界が開けたと思ったら、『彼女』の身体が宙に浮いた。


そのまま黒い道路に背中から落っこちた。金属板から、友達の声が聞こえる。心配そうに大きな声を出してるみたい。金属板はたくさんのヒビが入っていて、触ると痛そう。



そのまま『彼女』は寝てしまった。こうつうじこだったみたい。





これが、僕の前世の女の子のお終い。


ーーーーーーーー

ーーーー

ーー



目が覚めたのは、いつもの場所じゃなかった。

とても立派な大きな広い建物の高い高い天井が目に入る。



僕は貧困街のボロボロの家で、母さんと暮らしてた。


母さんは流行病で一昨日、動かなくなった。


僕も、同じように流行病にかかった。


パン1つ買うだけのお金が入った腰袋を握りしめて、家から出た事は覚えている。きっとそのまま倒れたんだろう。



よくよく天井を見てみると、たくさんのアーチで出来た教会に似た場所だ。


身体が重く ろくに動かさせもしない為、重力を利用しつつ首をグリンッと動かす。


すると、見慣れた祭壇やステンドグラスが目に映るが、見慣れないものも沢山見えた。



いつもは数多くの長椅子が並べてある場所に、粗末な布が沢山並び、その上に人が転がされている。皆、流行病の特徴である髪の毛がどんどん白くなっていく症状が見受けられた。


髪が完全に真っ白になると、体力と魔力が一気に食われその人の魂は、不可視の女神の元へ行く聖なる扉へ連れて行かれる。



身体にも、魔力を奪う歪な紋章が刻まれ、じわじわと完成して行くそれ(紋章)を発症者達は怯えながら見ていた。


ここからでは、みんなに紋章が刻まれているか見る事は出来ないけれど、母さんや僕みたいに見えない所(服の下など)にあるのだろう。


また、まぶたが重たくなってくる。自分の病がどこまで進行しているかも分からないけれど、長くはないだろう。


息苦しさと熱の怠さを抱えながら、もう一度目を閉じる。


願わくば、この苦しさから楽になれますように。



意識が遠のく中、誰かの影が僕の上にかかったような気がした。

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