ペットが猫じゃなくなると
「んぁ……朝か…」
まだ寝ていたい気持ちもあるが、シアンをモフりたい気持ちが勝ったので起きることにしよう。
「…あれ?」
シアンが居ない。
辺りを見渡す。
昨日寝ていた布団にも、部屋の隅にも、タンスや机の上にも。
居ない。
よく見ると、足下にふくらみが出来ていた。
「なんだ、そんなとこにいたのか…びっくり」
させやがって…という二の句が、布団をめくった瞬間につげなくなった。
「すぅ…すぅ…」
そこには…白い髪の毛と蒼い眼を持った少女がおりましたとさ。
俺が固まったまま動けないでいると。
「…んぅ、ご主人様?」
眠たそうに目元を擦るシアン(おそらく)
ならば少し試してみよう。
「よ〰しシアン。おいで〰」
「にゃっ!」
シアンが飛び込んでくる。
「なるほど…」
飛び込み位置…良し
頭の擦り付け…良し
喉の鳴らし具合…良し
総合…シアン
姿形は少女ではあるが。この娘(猫)は完璧にシアンだ。数年間モフった俺が言うなら間違いない。
「ところでさ、シアン」
「ん、どうしたのにゃ?」
「今まで普通に会話したこと無かったよな?」
「あれ!?何で普通に会話できてるにゃぁぁあ!?」
気づいて無かったんかい。心でツッコミを入れて何とか冷静になる。
「なんで自分がこうなっちゃったか分かるか?シアン」
「多分…寝る前に猫は嫌だにゃんて思ったからだと思うにゃ」
「なんでまたそんなこと…」
「だって…」
「だって?」
「猫だとご主人様と…」
「俺と?」
「…一緒に居られないにゃ」
「………………」
嬉し過ぎて泣きそう。
なんでこんな美女になっちゃったかなぁシアン。
「…私にとってご主人が居ない毎日なんて猫じゃらしが嫌いな猫くらいあり得ないにゃ」
「ご主人様はシアンが居なくても生活できるかも知れないけど…にゃぁ…」
段々言葉が小さくなっていき。目尻には涙が溜まっていた。
まずいですよ。女を泣かせるのは結婚式だけで充分だと母から教えこまれたというのに。
「俺も…シアンが居ないとダメみたいだ」
「昨日帰ってきたのだってさ…シアン撫でたかったからなんだ」
「シアンが居ない毎日なんて俺がシアン以外のペットを飼うくらいあり得ない。」
「俺と一緒に居てくれ。シアン」
「…うっ…うぁ…ごしゅじんさまぁ…うれしい…にゃ
うゎぁぁん!」
結局泣かせてしまった。
ゴメンよシアン。
シアンを抱き寄せて頭を撫でてやる。
「朝からお熱いね。」
「お袋!?ノックくらいしろよ!?」