第二部 7.王の帰郷-2
四月まであと数日と迫った、ある日の夕方のことだ。北の国境の警備隊から、クレマン家の次男によく似た男が国境沿いの街で目撃されたとの知らせが、サンジェルマンに届けられた。闘技大会の会場でユーゴに“クレマン家のマルセル”と名乗った男のことだ。
男は仲間の男二人と連れ立って、“冒険者たち”のたまり場となっている宿屋にいたそうだ。彼らが冒険者かどうかは定かではないが、宿屋の主人の話では、全員が初めて見る顔で、首都ヴィスコンデールに向かうような話をしていたという。
その翌日の朝、サンジェルマンは別の部下の口から、ジェニーの兄ローレンらしき人物がラニス公地の城下町で目撃された、との情報を得た。ローレンを含む総勢四人で旅をしていて、そのうちの二名は雇われた護衛らしい。部下が探ったところでは、彼らは北東の関所から入国し、首都に住む貴族に注文された品を運ぶ途中のようだ。
サンジェルマンは、ジェニーの兄の生存を知って胸をなでおろす前に、仲間割れをしたとみなしていた二人が時をほぼ同じくしてヴィスコンデールを目指していることに、強い警戒心を抱いた。闘技大会のあと、彼らは仲違いをしたと見せかけ、ローレンが仲間から逃亡する形をとって、別々の方向に散ったのだろうか?
今、頃合を見計らって二人が別々に国内に入ったなら、首都のどこかで落ち合うかもしれない。ローレンの運ぶ荷がマキシム産の岩塩だとすれば、その搬入先がマキシム産の塩の流通に一役買っている黒幕で、二人の再会する場所である可能性が高い。
彼らがそれぞれ目撃された日から既に何日も過ぎているが、彼らを追跡する者からは、その後の行方をつきとめたという連絡はない。首都に住む一般の民からの通報もない。
闘技場での王の暗殺未遂事件のあと、ライアンが作らせた“偽マルセル”とローレンの人相書きは、首都にある多くの店や宿屋にばらまかれ、彼らの首には賞金がかけられている。
王の暗殺未遂の罪で既に取り潰されたが、クレマン家はライアン家の流れをくむ名家の一つだ。近衛隊副隊長ライアンの父親の従姉妹が現当主の最初の妻で、今は亡き長男の母親だ。
事件に関わったマルセルは当主の三番目となる妻の息子で、粗暴な彼の扱いに困った当主が、修学という名目で十年近く前に彼を外国に放り出したそうだ。マルセルは約一年前に帰国し、そりの合わない父親を嫌って、母親の実家である商家で東方の国との取引を始めたようだ。しかし実際には、彼は働かずに飲み歩いてばかりで、飲み代などの借金が嵩んでいたようだ。彼がローレンと知り合ったのは、ここ一年の間だろう。
複数の証言によると、塩取引を介して、クレマン家の懐は潤っていなかったようだ。むしろ、当主の妻の実家が利益を得ていたらしく、この半年間で、商家の主人が急に羽振りがよくなった、という声も出ている。また、この商家を贔屓にする貴族の家がいくつかあって、そのうちの二つの家が、最近になって金回りがよくなったという噂がある。
ローレンの目指す家はそのどちらかの家ではないか、とライアンは、塩取引をめぐる捜査であらたに判明した情報を説明したうえで、サンジェルマンに言った。
サンジェルマンが部下から得た情報は、ライアンにも同様にもたらされていた。彼も、ローレンたちの仲違いには疑問をもっている。
彼らがヴィレールの首都で何をやるつもりなのか、彼らの行動を注意深く監視していなければなるまい。そのためには、一刻も早く彼らの居場所をつきとめる必要がある。
その点で同意をみたサンジェルマンとライアンだったが、ライアンが「もう一つ、気がかりな点がある」と、緊張した面持ちで切り出した。その表情の厳しさを見て、サンジェルマンは同席していた部下を退室させようとしたが、ライアンはそれを遮った。
「その者にも心得ておいてもらいたい」
サンジェルマンの部下はライアンに目礼する。
「貴殿も知っておるだろうが、彼らが街に入る頃にちょうど、ベアール本家で祝賀会が開催される。ユーゴ殿が正式に家督を継ぐこととなって、その披露の場だ。私も招待客の一人だが、ジェニー殿も出席する予定となっている」
その祝賀会にはサンジェルマンも招待されたが、多忙を理由に断った。出席すれば、王の側近サンジェルマンもジェニーを次期王妃候補として認めているのだと、ユーゴに巧みに利用されることだろう。
「そのようですね。ユーゴ殿も、彼の姪であり、次期王妃として有望と言われる彼女をもって、家を盛りたてていきたいはず。彼女を擁立したい者たちが集う場に、彼女の出席は欠かせないでしょうね」
「そうだ、彼女は欠席できぬ。ローレンはこの祝賀会の件をどこかで知り、その機に彼女にひそかに接近しようと首都に入るのではないか? 奴の出現は、偶然にしてはできすぎている」
「ジェニーは兄が追われる身分とは知りません。実は彼女が兄と連絡を取り合っていて、今回の件を知らせていたのでは?」
すると、ライアンがサンジェルマンを不満そうに見返した。
「それはないだろう。彼女は心から兄に会いたがっている。もし兄と連絡が取り合える状況にいれば、兄を心配して沈んだ表情になることもなかろう」
彼女を擁護するようなライアンの意見は、サンジェルマンには意外に感じられた。
「物憂げな表情が演技ということも考えられますよ」
女ですからね、とサンジェルマンが続けると、ライアンが不愉快そうに頬を強張らせた。
「彼女はそのときの気分がそのまま顔に出る。彼女の作る表情に嘘はない」
そしてライアンは、女ではあるが、とサンジェルマンに突きつけるように言った。
彼のその言動から、サンジェルマンは、彼がついにジェニーを受け入れたのだ、と痛感した。曲がったことの嫌いなライアンのことだ、ジェニーに懐柔されたのではないだろう。もとより、ジェニーは誰かを懐柔できるような器用さは持ち合わせていない。ライアンの指摘したとおり、ジェニーは心で思ったことが正直に顔に出る人間だ。演技など、もともと出来ないのだ。
心の奥深くではずっと分かっていたことに、サンジェルマンはあらためて対峙する。
「今後、ローレンからジェニー殿に連絡が来ることもあろう。彼女のもとに届けられる品や手紙には逐一、目を光らせておこう」
ライアンの言葉に、サンジェルマンも部下も異論はない。
「ええ。アリエルにもよく頼んでおきましょう」
「侍女のアリエルか? 彼女はジェニー殿の味方だ。今回のように兄妹の再会を阻む件で、協力を得られるのか?」
「もちろんです。彼女は信頼できますよ」
アリエルの信用を疑われ、サンジェルマンの声に力がこもる。
「彼女はジェニーの侍女とはいえ、本来は王のために仕えているのです。心配りのできる、頭のいい女性です。王に恩義もありますし、我々にとっても心強い味方ですよ。彼女は期待に応えるだけの働きをしてくれるはずです」
サンジェルマンは、そう言い切ったところで部下の男と目が合った。彼の瞳は何も語らず、視線はさりげなく下に移ったが、サンジェルマンは些細なことにむきになった自分を恥じた。だが、サンジェルマンらしからぬ熱弁に、ライアンはそれほど不思議に思わなかったようだ。
「貴殿がそこまで申すのであれば、では、それについては貴殿に一任しよう」
「はい」
その後、ライアンと事務的な話を少しして、サンジェルマンと彼は別れた。
* *
ジェニーがユーゴ宛に書いた手紙に効力があったのか、それ以降、祝賀会の招待状以外、彼からの連絡はぱったりと途絶えた。アリエルは王城でユーゴと二回会ったそうだが、その両日ともに、彼は小城まで足を伸ばしていない。彼は、彼の計画に非協力的なジェニーに腹を立てているのだろう。
月が変わり、日没が遅くなりつつあった。先月下旬には雪が数回舞ったが、ジェニーが今見上げる空は淡い水色で、ゆっくりと漂う柔らかそうな白い雲一つとっても、雪を降らせそうな要素はない。
カミーユの昼寝の時間に入った頃、ジェニーはラニス公の遣いである男の訪問を知らされた。ラニス公から荷物が届いているという。
遣いの男が「ラニス公の贈り物」と長方形の箱を紹介したとき、ジェニーはベアール家に贈られた数々の贈り物と重ね合わせ、身構えずにはいられなかった。だが、ラニス公の身分を考え、すぐに思い直す。王の従兄弟であるラニス公が、ジェニーに取り入ることはないだろう。
ジェニーの手でも抱えられる箱を開けてみると、ジェニーがモーリスの家で好んで使用した、何度聞いても名前を覚えられない花の香水の匂いが、室内に広がった。農園の使用人が作っていた香水で、売り物ではない。その懐かしい香水の大瓶に加え、生成りの厚手のおくるみが三枚、カミーユが初めて着た白い絹の服、カミーユがお守りのように握って放さなかった木彫りの人形が箱の中に詰まっていた。それは全て、ジェニーがモーリスの家に残してきた、大事な思い出の品だ。
「ラニス公より、お手紙を預かっております」
ジェニーが品物を順番に見て手を止めていると、遣いの男が言った。ジェニーは男に渡された手紙を素早く開き、最初の文章を見て、息を詰まらせた。
ジェニーへ
きみがいつか私のもとでこれらの品を眺めることを夢見ていたが、
そのような状況はもはやなさそうなので、きみに返そうと思う。
ジェニーは手紙の文字から目を離し、涙で曇った目で隣にいるアリエルを見た。ラニス公の落胆ぶりが痛いほどに伝わってきた。ラニス公のもとにも、ジェニーが次期王妃候補として取り沙汰されている現状が伝わっているのだ。
ジェニーは思い出の品と再び会えたことが嬉しく、彼の心遣いに感謝したが、とても手放しで喜べる気分にはなれなかった。ジェニーと王は何も変わらないのに、周りだけが勝手に騒いでいる。
「あとでゆっくりお読みになったらいかがです?」
アリエルがジェニーの震える手に彼女の手を添え、開いたばかりの手紙を巻き戻した。それから、ジェニーを励ますように微笑む。
そうね、とジェニーは彼女に頷き、手紙を箱の中に入れた。
次の日から数日間外出する予定で、ジェニーは朝から忙しかった。いよいよ、ユーゴがベアール家の家督を継ぐ日を迎えるのだ。彼との関係が悪化しているとはいえ、彼はジェニーの数少ない親類だ。ジェニーはこれを機に、彼との関係を改善したいと考えていた。
その日の午前中、数週間ぶりに女官長が小城にやって来た。ところが、来客を常に歓迎するカミーユなのに、その日に限って、かつてないほどに機嫌が悪い。女官長が彼女を抱き上げようとしたところ、彼女は大声で泣いて、女官長の手から逃げたそうだ。乳母が外遊びに誘っても、新しい玩具で機嫌をとろうとしても、カミーユの機嫌はなおらない。
ジェニーがどうにか時間を作り、子ども部屋にようやく寄ったときだ。
「……ママー!」
手にあったボールを放り出して、カミーユがジェニーに駆け寄ってきた。
「カミーユ、いい子にしてた?」
ジェニーにたどり着くと、カミーユは片手でジェニーのドレスを掴み、もう片方の手を精一杯に上に伸ばして、床の上でぴょんぴょんと跳ねる。ジェニーが笑いながらその体を抱き上げると、カミーユが首にしがみついてきた。大人より体温の高いカミーユの肌がジェニーの首に触れ、ジェニーは娘が心から愛しく思える。
「マーマー」
ジェニーはカミーユの背を軽くたたき、尋ねた。
「今日はいつもより甘えん坊なのね。どうしたの?」
カミーユは頬をジェニーの首にすりつけて、母親を逃さないようにとジェニーの首にしがみつき、ジェニーの胸まわりに両足をからめようとする。
「ジェニー様が明日から外出されることに勘付いておいでなのですよ。だから、落ち着かれないのでしょう」
乳母が近寄ったことに気づき、カミーユは彼女に向かって手を突き出した。カミーユなりの警告のつもりだ。ジェニーはカミーユの体にまわした手に力をこめ、空気に揺れる彼女の髪に唇をつけた。
「カミーユ、ママは少しだけいなくなるけど、すぐにここに帰ってくるわよ」
すると、カミーユは疑いを含んだ目でジェニーを見上げる。その目の細め方はゴーティス王を思い出させる。カミーユはいつのまにか、王のそんな仕草まで模倣するようになっている。
「ねえ、ママと一緒に外にお散歩に行く?」
今朝の日は弱いが、空気は冷たくない。明日から、数日間とはいえカミーユを置いていくことを思えば、ジェニーはなるべく長い時間を彼女と過ごしたかった。
カミーユは唸り、ジェニーの首に頭をつけた。「ママ、行くー」
予想していたことだが、カミーユはジェニーの腕からちっとも降りる気はないらしい。
アリエルは明日の外出の準備に戻り、ジェニーとカミーユには、女官長と乳母、世話係の女が同行した。太陽は薄い雲の向こうに隠れていたが、外はやはり寒くなかった。庭園は庭師たちが整備している途中で、掘り返された土の湿った匂いが空中に漂っている。外が大好きなはずのカミーユだったが、まだすねているのか、ジェニーの手から降りようとしない。
ジェニーが建物に面する生垣の前に立つと、風向きのせいか、馬の蹄の音が風にのって聞こえてきた。音の大きさからして、馬がいる場所は小城に近い。それに興味を示したらしく、カミーユが顔を上げた。
そのとき、裏口から走り出てきた女が声を張り上げ、ジェニーを呼んだ。
「ジェニー様、王がお見えでございます!」
馬に乗っていたのは、彼だったのだ。
女の後ろにある裏口をジェニーが見ていると、王が二人の男とともに現れた。王は、ゆったりとした白い上衣に黒っぽい色の腰帯を締め、薄茶色の布地に包まれた脛の半分まで届く、茶色い靴を履いている。
王はジェニーに向かって直進してきたが、女官長たち三人の女が並ぶ前まで来ると、足取りをゆるめた。王の視線はカミーユに注がれている。カミーユも、王を見ている。
「この春初めての乗馬ね」
ジェニーが言うと、王はカミーユから注意をそらした。
「そうだ。おまえも乗りたいかと思うたが――」と、王はカミーユを再び見て、唇を結ぶ。
カミーユは一言の言葉も発さず、放心したように王を見ていた。王に特に変わった点は見られないが、カミーユの目を釘付けにする何かがあるらしい。
ジェニーから王に近づくと、カミーユがジェニーの肩をぎゅっと掴んだ。王の足が止まる。
「……そやつ、蝉のようにおまえにしがみついておるぞ」
「ひどいわね」ジェニーは笑いを堪えながら言う。「この子、明日から私がいなくなるのを察して、不安になってるみたいなの。だから、こんなにべったり」
「そのわりには嬉しそうな顔ではないか」
ジェニーはカミーユの頭に唇を押し付けて、王に笑った。
「娘に甘えられて、嬉しいのは当たり前じゃない」
王は釈然としない表情だった。彼はジェニーの頭に手を伸ばしかけ、カミーユが体勢を変えようと動くと、その手を空中でぴたりと止める。
「ゴーティス王?」
「……俺だとて、おまえが数日間でも城を留守とするのは……面白くはない」
王の伸ばした手の下にジェニーは動き、苛立ちの混じった彼の瞳を見上げた。ジェニーの不在を寂しがってくれるのは嬉しいが、彼のそんな顔は見たくない。
「私もあなたに会えないのは寂しいわ」
王の手がジェニーの頭に触れ、ジェニーは満足する。ジェニーがベアール本家に滞在するのは四日間だけだが、出発する前に王の顔が見られてよかった。
王の手の心地よさにジェニーが目をつぶると、彼が口惜しそうに低く呻いた。
「おのれ……」
ジェニーが目を開くと、王が敵意のこもった目でカミーユを見つめていた。カミーユは、今はもう王に背を向け、ジェニーの肩にもたれて、のんきにあくびをしている。
「どうかしたの、ゴーティス王?」
王はジェニーの問いかけなど耳に入らないかのように、低い声で言った。
「この娘、俺の場所を占有しおって……。もう十分であろう。そこをどけ」
ジェニーは王の放った言葉に唖然とした。
(娘のカミーユに嫉妬してる?)
「そこをどけ、カロリーヌ」
カミーユは二つの名のどちらを呼ばれても振り向く。だが、王の声に振り向いたものの、カミーユはすぐにまたジェニーの首にかじりついた。
「……イヤ」
王が怒りに顔を歪め、カミーユの小さな肩を掴んで怒鳴りつけた。
「そこをどかぬか! おまえが生まれるずっと前から、そこは俺のものだ!」
ジェニーの驚きより、王の背後にひかえていた女官長や近衛たちの驚きの方がはるかに大きかっただろう。カミーユは王の大声に驚いたようだが、泣きはしなかった。大きな瞳を見開いて、口も同じように大きく開けて、王を見つめている。
ジェニーの瞳と合い、王は正気に戻ったようだ。王は怒りの表情をすぐには消せず、下唇を噛む。そして、カミーユの肩にかけていた手を戻して、両手で目を覆った。
手で覆われていない頬に赤らみが広がり、彼が恥ずかしがっているらしい、とジェニーにも分かった。ときに尊大で、ときにふてぶてしい彼なのに、こんなに可愛い一面を持っているなんて、反則だ。
ジェニーはカミーユを腕に抱きながら、王に近づいて、彼の二の腕に口付けた。王は顔から手を浮かせたが、完全に手を取り去りはしない。
「ねえ、知ってた? あなたはいつも私の胸の中にいるのよ」
王が唇を細く開き、長い息を吐く。
「私がどれだけあなたを大事に思ってるか、想像できないでしょう? 私はあなたが大好きなの。だから、私の胸の中に住むあなたは、どこにも行きはしない」
王の手が、彼の視線とともにジェニーに静かに降りてくる。
「おまえこそ、俺がどれほどおまえを愛しておるか、分かってはおらぬ。現実の俺もどこにも行きはせぬ。それゆえ、おまえも――どこにも行くな」
王はカミーユの存在にひるんだが、ジェニーは彼女を胸に抱いたまま、王の唇を求めて手を伸ばした。彼はカミーユの存在を気にしながらも、ジェニーの唇の位置を探す。二人の体に挟まれたカミーユは、ジェニーの予想を裏切って身動き一つせず、二人が口付けを交わす間、ずっと黙っていた。
「私はどこにも行かないわ」
ジェニーが王の鼻先で囁くと、王は目を閉じ、嬉しそうに微笑んだ。カミーユが、ジェニーの胸の中で動き出す。
「……カミーユ、“オオ”に抱っこしてもらう?」
すると、王は片目を開き、非難するようにジェニーを睨んだ。
だが、王の腕はジェニーの背にまわる。彼はジェニーの体ごと、カミーユを抱き締めた。