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第二部 5.生と死の境界線-1

 ライアンによる剣の訓練は今も継続している。毎朝、ほぼ同じ時間帯だ。妥協を許さない彼は、剣士でもないジェニーにも手加減はせず、指導は厳しい。それは体力的にもジェニーを疲れさせるが、練習が終わったあとの爽快感はたまらない、とジェニーは最近になって感じ始めていた。

 ライアンが一貫してジェニーに冷淡に接することに変わりはないのだが、一つだけ、興味深い小さな変化が起きている。それは、コレットに接近されると、彼はジェニーに用があるふりをしてコレットから離れ、彼女をやり過ごそうとすることだ。ジェニーは以前からなんとなく気づいていたが、女嫌いと評される彼は、おしゃべりな女が特に苦手らしい。剣の練習を始めた当初、彼はジェニーをその視界に入れることさえも嫌がっていたように見えたことから考えれば、小さな態度の変化ではあっても、大きな前進だ。


 数日前のこと。

 ライアンは、剣の稽古中に突然訪ねてきた女官長に接した際も、コレットに対するのとほぼ同じ反応をとった。女官長もコレットに負けず劣らず、いや、それ以上におしゃべりな人間だ。彼が女官長を苦手としても、不思議はない。

 ジェニーと口をききたくないらしい女官長はライアンの存在を頼りにしたかったようだが、彼がそんな調子で、すっかり当てが外れたようだ。彼女は一気に不機嫌に転じた。

 そしてその女官長だが、小城の誰一人として彼女に尋ねないうちから、「庶子であれ、王の娘の成長には自分も責任がある」とか何とか、ジェニーを含む、彼女を出迎えた者たちを前にして、突然の来訪理由をもったいぶった調子で伝えた。

 だが、女官長がカミーユの顔を見たくてやって来たのは、誰の目にも明らかだ。威厳を保とうと努めていたらしい女官長は、カミーユの邪気の無い笑顔に接すると、いとも簡単に、あっという間に相好を崩した。

 女官長が敵視するジェニーの娘だったとしても、彼女は、カミーユを心の底より可愛がっている。

 ジェニーは女官長がカミーユを大事そうに抱きしめる姿を目の前で見て、文句なく、嬉しかった。ジェニーを牽制するようなきつい言葉を放っていても、彼女はカミーユに対しては本物の祖母のように優しい。彼女に再会して興奮したカミーユ以上に、彼女は溶けそうなほどに甘い顔に一変した。


 だけど一言、カミーユに会いたかった、と口にしてくれたらもっと嬉しかったのに。


 女官長の訪問によって中断した剣の練習にジェニーが戻ったとき、ライアンはジェニーの呟きを聞き咎めるように眉を震わせた。

「おまえは忘れておるようだが」と、彼は木剣の先をいじりながら言った。「女官長はおまえが城から逃亡した事実を忘れてはおらぬ。私と同じように――彼女はおまえが誰と逃げたかまでは知らぬが――到底許せぬ行為だと今も憤慨している。あの女官長がそんなおまえと顔を会わせることも厭わず、ここに出向いたことに、私は感心すら覚えたが」

 ライアンにわざわざ教えられなくても、ジェニーは自分が彼女に疎まれ、敵視されていることを認識している。ケインとの逃亡事件はいつまでも尾を引き、王側にいる人間から見れば、ジェニーの信用はなかなか回復されないだろう。それもよく分かっている。

 事件が誰かの口にのぼるだけで、ジェニーの胸は痛みに疼く。だが、正直なところ、女官長やライアンたちから嫌われ続けたとしても、実際にはジェニーにはそれほど堪えなかった。王に心を閉ざされないだけ、ジェニーはまだ救われている。

「女官長が私をよく思ってないのは知ってます。カミーユに会いに来てくれたことは驚いたけど……嬉しかった」

「おまえは女官長にそれを伝えたのか?」

「ええ。信じてはもらえなかったけど」

「おまえが何を言おうと、そう簡単には信じまい」

 ライアンは責めるような眼差しをジェニーに向け、木剣を宙で大きく振った。空を切る音がして、彼の髪が耳の上でふわりと揺れる。ジェニーが木剣を両手で持ち直すと、彼がそれに気づき、ジェニーの正面に立って目をすがめた。

「女官長の主人は王城におられる王妃様だ。その主人を残して個人の感情だけでここに出向くのは、彼女の沽券に関わること」

「私の娘に会うことが、なぜ問題になるんでしょう? あの子は今まで王城で育てられていたのに」

「場所の問題だ」分かりきったことを訊くな、とでも言うように、ライアンが唇を曲げる。「女官長がカロリーヌ様を可愛がっていたのは周知の事実だ。さりとて、彼女が王の庶子を産んだ女のもとに出向くのは、王妃様もいい気分はされないだろう。会いたいから会うなど――皆が皆、おまえのように単純な考えの持ち主ではない」

 めったに歯を見せないライアンがにやりと笑ったように見えたのは、ジェニーの見間違いだろうか?

 王妃の存在を示され、ジェニーが暗い気持ちに覆われてしまう前に、ライアンが木剣をジェニーの面前に突きつけた。

「再開するぞ」 

 ライアンの目が細くなり、唇が横にすっとのびて、真剣な面持ちに変わる。ジェニーはその顔を見ると、どちらかといえば恐怖を感じるのだが、コレットは、その顔を見ただけで一瞬にして恋に落ちる、と表現する。

「どこからでも来い」

 ジェニーは、王妃の面影を頭から消し去った。


 ライアンはあいかわらず遠慮なく怒鳴り、ジェニーを褒めたことは今までに一度もない。だが、この日、彼は練習の終わりに、もう少し稽古をつけたら本物の剣を持たせるとジェニーに告げた。

 本気だろうか? 

 ジェニーはこの発言にはかなり驚いた。ライアンはこの訓練をジェニーの暇つぶしとみなし、ジェニーに木剣以外を持たせる気がないのだとジェニーは日頃から思っていた。しかし、彼は冗談も世辞もめったに口にする人間ではない。だから、それはたぶん、ジェニーなりに腕が上達してきたと、彼が認めたということだろう。



 真夏の強い照り返しはもうすっかり過去のもので、小城でもっとも日が入る南の一室は、午後ののんびりとした時間を楽しむにはちょうどよい暖かさだ。この時間帯はカミーユも昼寝している。ここ数日の王は多忙で、昼間にジェニーを訪ねはしない。図書室から持ち出した本を手に、ジェニーは部屋の中央に置かれた椅子の上でうとうとしていた。


 どれぐらいそうしていただろうか。近くに人の気配を感じ、ジェニーはふと目を覚ました。

「コレット?」

 目覚めたジェニーを見て、コレットがほっとしたように顔をゆるませる。が、すぐに、彼女は部屋の入口を振り返りながら、言った。「大変でございます、ジェニー様! 今しがた、王妃様が急に来訪されまして」

「王妃様が?」

 数日前の女官長に引き続き、今日は王妃まで。

 ジェニーはすぐには、王妃の来訪を信じられなかった。王妃は一度だけ庭に現れたことがあるが、それはたぶん、王が離宮に住まわせている愛人がどんな女かを確認したかったためだ。だが、ジェニーを見知った今、彼女がここに来る理由が見当たらない。

 まさか、女官長のようにカミーユの顔を見たかったから、というのでもないだろう。王妃は王の愛人の産んだ娘など、目にしたくないに違いない。

 じゃあ、なぜ急に?

 以前の後宮に住んでいた女たちのように、激しい嫉妬心から、ジェニーを威圧するために来たというならまだ理解できるが、王妃はそういった行動はとりそうもない。彼女はおとなしく、ジェニーを娘に引き合わせようとした親切な人間だ。

 ジェニーは本を脇のテーブルに無造作に置き、立ち上がった。とにかく、訪ねてきた王妃を無視するわけにはいかない。

「行きましょう」

 だが、ジェニーの心は複雑だ。立場が今と違ったら、もしかしたら王妃とはいい友人になれるかもしれない。王妃の人の良さを感じるだけに、彼女に敵対心を持ちにくい。

 でもその一方で、王の隣を正当に占めることのできる彼女の立場そのものには、激しい反発を覚えている。王も王妃も、二人が夫婦となるのは国の定めたことであって、自分たちの選択ではなかったはずだ。二人はそれを望んでもいなかったはずなのに。それでも、ゴーティス王の隣にはあの王妃が正式な妻として存在している。

 優しそうなあの王妃は、同じように、こんな思いをしているのだろうか?


 コレットと最初に駆けつけた広間に王妃はおらず、召使の示すままにカミーユの部屋に移動したジェニーは、そこで小さな寝台を覗き込んでいる王妃の姿を見つけた。その白い寝台の中では、カミーユが午後の昼寝を楽しんでいるはずだ。ジェニーは、王妃がカミーユの側にいることが腑に落ちず、ひどく面食らった。

 でも……カミーユを見る王妃は、なんて優しそうな顔なんだろう。

「あ!」振り返った王妃がジェニーを見つけ、思わず出してしまった声を抑えて、口に手をあてる。

 こんにちは、と、カミーユを起こさずにすむように、ジェニーは囁き声で挨拶し、王妃に頭を垂れた。すると、王妃は名残惜しそうに背後を振り返った後、ジェニーの方に慌てて歩み寄ってきた。

「突然お邪魔してごめんなさい」

 可愛らしい少女の声がジェニーの耳の中を転がる。

 前はもっと化粧をのせていた王妃の顔が、今日は素肌に近く、ジェニーより三、四歳若いという、年相応の少女に見える。日に焼けたような色の肌に、ユーゴと同じとはいかないまでも、王妃の深い青い瞳はよく映えた。そのすらりと細長く伸びた手足には、瞳の色とほぼ同色の青いドレスをまとっている。黒く濃いまつげと同じ色で、ドレスの手首部分や襟口には手の込んだ刺繍が施されていた。

「いいえ、王妃様。お会いできて嬉しいです」

 ジェニーの前に立つ王妃は、ぎこちない笑みを浮かべ、ジェニーを見た。彼女の来訪に戸惑い、ジェニーが返した笑顔も、恐らくはぎこちなかっただろう。

 前回会ったときより、王妃の目線の位置がわずかに高くなっていた。王妃はジェニーより背が高く、彼女に向かうと、ジェニーの目線は彼女の鼻のもっとも高い部分にぶつかる。聞いたところによると、王妃は今も成長期らしく、身長が伸び続けているそうだ。王と並んでも、彼女は少し背伸びをするだけで、王の唇にキスできるだろう。


「……お元気そうね」

 王妃の弱々しい笑みを見たとき、ジェニーは、やはり彼女を嫌えない、と感じた。ジェニーが知る貴族の女たちにあるような、高飛車な態度は王妃にはない。むしろ、彼女に同行してきた侍女二人の方が、ジェニーへの蔑みの感情を隠そうともせず、つんとしている。

 その侍女の一人が、ジェニーに手土産の存在を示した。ノワ・パイだ。ジェニーの好物だとどこかで情報を仕入れ、王妃が用意したのだという。

 気の利く人だ。ジェニーが王妃に礼を述べると、彼女は、自分もそれを口にして好物になった、と微笑んだ。

「王妃様もお元気そうですね」

 王妃はそれには答えず、後方のカミーユのいる寝台の方に振り返った。

「一緒に住めるようになって、あの子も喜んだでしょう? なんといっても、あなたはあの子の母親なんですもの」

「王妃様、娘に……会いに来てくれたのですか?」

 ジェニーが王妃の発言に戸惑いながら問うと、彼女は一瞬言葉をつまらせ、ええ、と首を縦に振った。

「あの、お邪魔かとは思ったのだけれど」

「そんな、まさか! 娘を可愛がってくださるなんて……とてもありがたいことだもの」

「まあ」王妃の笑みが深まった。「この子を可愛がらない人がどこにおりましょう? こんなにも愛らしいのですもの」

 王妃はカミーユに目を移し、微笑んだ。王妃がカミーユを眺める目つきは、母親のような愛情に満ちている。彼女は、カミーユが大好きなのだ。

 娘が愛されていると知るのは、本当に嬉しい。

「ありがとうございます」

 ジェニーは幸福感に包まれかけたが、次に続いた王妃の科白を聞き、思いがけず愕然とした。

「あの子は、姿形だけでなく、仕草まで……本当に王にそっくり」

 そして、王妃がうっとりとしたようにため息をつき、カミーユに愛情のこもった眼差しを向ける――彼女は何を……誰を見ているの?

 ジェニーはさらに衝撃を受けた。ついさっきまで母親の情が込められていた王妃の瞳には、誰かを愛しく思う女心が映し出されている。見つめていたい、でも、見つめるのが辛くもある、そんな切なげな視線だ。

 予期せぬ場所で転んで、胸を思い切り地面に打ちつけたときのように、ジェニーの息が詰まる。

 政略結婚に恋愛の情など絡まない、とジェニーは思っていた。ジェニーには理解できない、結婚の成り立ち。会ったこともない他人同士が結婚する、家同士または国家間の取り決め。

 王妃が恋焦がれる誰かとはもちろん、彼女の夫であり、ジェニーの愛するゴーティス王だ。

 ――王妃が王を愛しているなんて。

 ジェニーがゴーティス王の言動を見る限り、少なくとも、彼は妻に対して特別な感情を持ってはいない。彼は国家間での結婚を王としての義務としか考えていない。ジェニーは、まったく同じことが王妃にも当てはまるのだと考えていた。

 ジェニーは信じたくなかったが、王妃の顔を見れば信じないわけにはいかなかった。王妃はカミーユの寝顔を大切な宝物のように見つめながら、王に思いを馳せている。王によく似たカミーユが可愛くて仕方がないのは、王を愛するがゆえだ。国としたらそれは喜ばしいことだろうが、ジェニーはとても喜べない。

 喉がうなり、心臓があまりにも大きな音をたて、ジェニーを揺らす。ジェニーは王妃からそっと顔をそむけた。



 王妃が小城を去ってしばらくしても、ジェニーの胸のざわめきはしばらく消えなかった。食欲が今ひとつわかず、王妃がジェニーのためにと持ってきた好物のノワ・パイも、今の今まで手をつけずじまいだ。

 多忙と聞かされていた王が晩餐前に来る、と知らされ、ジェニーはさらに動揺した。王妃の存在が心に重くのしかかり、ジェニーは王に会う心の準備ができない。ジェニーはそれまでも王妃の存在を思うと憂鬱だったが、今日の今ほど、苦にしたことはなかった。

 ジェニーは自分の置かれた立場をあまり深く、客観的に考えたことがなかった。日陰の身分だと呼ばれても、今ひとつ、現実味がわかなかった。王の顔を見られれば、幸せだった。

 けれども、会いたいと思ったときに王に会えて、好きなだけ彼を見つめていられるのは、ジェニーではなく王妃だ。いつもいつも、王妃はあんな一途に王を見ているのだ。彼は王妃のそんな眼差しに接して、何とも思わないのだろうか? 王はきっと、妻に愛されていると気づいているだろう。

 私は、王と結婚がしたいのだろうか?

 ジェニーは返答に迷う。王との結婚は起こりえない夢物語だと一笑に付される前に、ジェニーは、彼と一緒にいられるだけいたい、と思うだけだ。ただ、だからこそ、王に会いたいと願ったときに行動できない立場にいることに、ジェニーは、口惜しさと途方もない悲しみを覚えるのだが。


 夕日のあたる一室でジェニーが外を眺めていると、廊下を歩く複数の靴音がした。おそらく、ゴーティス王が到着したのだ。

 王はジェニーのいる部屋の入口から颯爽と現れると、窓際にいたジェニーを見つけ、不敵にも見える笑みを浮かべた。彼は、機嫌がいいようだ。

 ここ一週間で、日が弱くなると急に冷え込むようになったせいだろう、王は濃赤の長袖に腕を通していた。袖口からは白いフリルのような飾りがのぞいていて、王が前髪をかきあげると、彼の白金色の髪とともに優雅に揺れる。王と同じような髪を持ったライアンは白や淡い色がよく似合うが、王は色の濃い服装に身を包むととても華やかだ。つい先日会ったときとは比べられないほどに、成熟した雰囲気だ。彼に会う準備が整わなかったはずなのに、ジェニーの胸は、それまでの不安とは違う音を発している。

 ジェニーの前に来ると、王はジェニーの耳に手を触れながら、顔をのぞきこむ。ジェニーと会えずに数日間を過ごしたあと、彼がジェニーに会って最初に必ず行うことだ。そして、納得するまでジェニーを眺めたあと、ようやく、彼は頬をゆるめるのだ。いつもならば。

 だが今日は、王はジェニーと視線を合わせながら、既に笑い出していた。

「おまえに土産がある」

 王はいたずらを企む子どものように目を光らせ、ジェニーの頬を人差し指で撫でた。彼のこんな表情を目にしたのは、ジェニーは初めてだ。近頃の彼は毎回新しい表情をジェニーに見せ、そのどれも見逃したくなくて、ジェニーは彼から目が離せない。

「土産って?」

 やっとのことでそう問い返しながら、ジェニーは王妃のくれたノワ・パイの盛られた皿になにげなく振り返った。コレットがテーブルの上に用意してあったのだ。

「あれはノワ・パイではないか」

 ジェニーの肩越しにノワ・パイに目を留めた王が、ジェニーに説明を求めるような目を向けた。

「そうよ、もらったの」

「誰からだ」

 王の声には咎めるような響きがあった。ジェニーが返答を迷うと、彼の疑いはさらに深まったらしい。

「誰だ?」

 王に不要な心配をかける前に、ジェニーは思いきって言った。「王妃様よ」

 王が問い返すまで、ひと呼吸あった。「妃が、あれをおまえにやったのか?」

 ジェニーは頷き、王の不審そうな顔を見返した。

「今日、カミーユの顔を見にこちらまで来られたの。そのときに――」

「待て。あの女がここに来たのか?」

 驚いていた王の顔が次第に不快そうに歪み、ジェニーは返答することも忘れて彼を見つめる。


 そのとき、

「王! ジェニー様!」

 と、厨房で働く召使女が、息せき切って二人の前に駆けこんできた。

「ジェニー様、まだあのお菓子は召し上がっておりませんね! 王もまだ……!」

 そして彼女はテーブルの上のノワ・パイを見つけると、ジェニーの体を押しのけるようにしてテーブルに突進した。

「何ごとだ! 誰がおまえに入ってよいと言うた!」

「こっ、これでございます!」召使女は青くなりながらも、ノワ・パイを指し示した。「これを口にしたら、王もジェニー様も、コレットのように死んでしまいます……!」

 “死んでしまう”?

 ジェニーと王は顔を見合わせた。そして、召使女がつまみ上げた、一見どこも変わったところのない菓子ノワ・パイを、恐怖と緊張をもって見つめた。


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