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第一部 8.遠のく瞳−1

 剣技大会の幕が降りて興奮さめやらぬうちに出発したベルアン・ビルへの旅も、今日が三日目だ。サンジェルマンが部下と宿で提供される夕食を静かに口にしている今も、ベアールは席を離れたきり、一度も戻ってこない。そして、それは、初日の夜からずっと連続している。サンジェルマンは、ベアールがほろ酔い加減で宿場の給女たちとふざけあう姿が視界の片隅で見えたとしても、もうそれほど気にならなくなっている。

 最初こそ、彼らは金品を狙う盗人の目を引くのを嫌って、なるべく目立たないように旅をするつもりだったのだが、最初の宿場町に着いて早々に考えを変えた。その理由は同行者のベアールだ。彼がどんなにみすぼらしい身なりをしたとしても、その魅力的な容姿は例外なく女たちの目を引き、彼もまた彼女たちに愛想良く応えてしまう。彼が王城でサンジェルマンに見せた、抑制された行動とは大違いだ。

 だが、彼の気楽さというか、危機感のなさに、サンジェルマンが苛立ちと不安を覚えたのは確かだが、彼の振舞いのおかげで一行が不審な旅行者とみなされず、宿での待遇が改善されるという思わぬ恩恵を受けたのもまた確か。サンジェルマンは唯一、女たちに囲まれる彼に難癖をつける者の出現を危惧していたが、運良く、今のところは、そんな困った状況には遭遇していない。


 ベアールに酒をつぐ給女が彼にしなだれかかるのを見て、サンジェルマンは対面にいた部下に言った。

「彼は今日もどうせ戻って来ないだろう。今宵は寝台を使え」

「いえ、そんな。私は床に眠りますよ。明日は目的地に着く予定ですし、ベアール様も今宵は早く戻られましょう」

 サンジェルマンは息をつき、部下の真面目な顔を見つめた。

「そんな男ではないと思うが――」

 ベアールとはたった三日間しか行動を共にしていないが、サンジェルマンは、ずいぶんと彼について理解できた気がしている。

 サンジェルマンがベアールのいる席に近づいていくと、その反対側で彼と話していたふくよかな女が目を上げた。「あら、いい男」

 サンジェルマンは、悪印象を与えないだけの笑みを素早く作った。ベアールと、彼の腕に抱かれた女が後ろを振り向く。

「おや、これはサンジェルマン様ではないですか! 嬉しいな、我々のお仲間に?」

 ベアールが明るく笑いながら席を移動しようとしたが、サンジェルマンはそれを笑顔でやんわりと止める。すると、ベアールにもたれている女がくぐもるような声で笑って、杯をサンジェルマンに差し出した。

「どうぞ。うちの自慢の酒をいかが?」

 他の男の腕の中にいるくせに、女はサンジェルマンを媚びた目つきで見つめる。男好きのする、若い女だ。彼女にそんなまなざしを向けられると、サンジェルマンは数日前に別れたばかりのアリエルが妙になつかしく思い出された。

「いや、結構だ。私は、明日が早いからもう休むと彼に伝えに来ただけだ」

「やだ、まだ夜は早いじゃない。一杯くらいお付き合いなさってよ」

 サンジェルマンが笑顔で女の誘いを断ると、後ろにいた女が小さく笑って彼女をたしなめた。

「やめなさい、いくら誘ったって無駄よ、無駄! この人には故郷に大事な奥方がいるんだから」

「ええー? 何を言うか、このお方は私と違って、自由気ままな独り身だぞ!」

「まあ、あんたは既婚者なの? ……あらあら、こんな夫を持って奥方様はかわいそうに。だけど、ふうん、そうなの。私の目に狂いはないと思ったんだけど?」

 ベアールが納得しかねるように渋い表情でサンジェルマンを見上げたが、サンジェルマンは何の返答もせずに、ただ微笑む。ベアールたちの向こう側から、おやすみ、とその女がサンジェルマンに手を振ってみせた。


 次の日、ベアールは日の出前に部屋に戻ってきて、そそくさと出発準備に加わった。三人はそろってベルアン・ビルへと出発し、昇りはじめたばかりの朝日に向かっていく。

 再び馬上の三人となった一行は、その後しばらく無言だった。目的地までの道は平坦でそれほど苦労はしなかったが、山脈の入口に位置するため、今まで経てきた地域よりも標高が高い。ゆるやかな上り坂に歩みを進めるごとに、空気の質が変わり、気温が低くなるように感じられる。

 ほどなく、木もまばらな林を通り抜けた一行の前にベルアン・ビルの境界線を示す標識が現われた。集落は見えないが、青い山を背に数軒の横長の家が緑の広野に望める。広野の中で黄色の敷物のように見える一角は、ひまわり畑らしい。

 サンジェルマンはいっそう暗くなった曇り空を眺め、さすがに緊張と興奮が高まってきた胸を落ち着けようとした。太陽が空に出ていれば、おそらくは、真昼の時間帯だ。

「もうすぐですよ」

 サンジェルマンの部下が隣でそう言い、広野を斜めに横切ってひまわり畑に消える道を指し示した。サンジェルマンは旅の目的を達成する実感をかみしめて彼に頷き、彼の横にいるベアールを見た。彼はまだ疲労感をただよわせた顔色ではあったが、サンジェルマンに向けられた視線の意味をきちんと感じ取ったらしく、ひまわり畑の方を眺めて頷いた。


 三人がひまわり畑の間を抜ける道を通っていると、左側の畑で作業をしていた農夫が彼らに手を振った。「やあ、こんちは!」

 ベアールが当惑したようにサンジェルマンに振り返る。サンジェルマンは彼の向こうに見える農夫とその少し先にいる幼い少女が、笑顔で自分たちに手を振るのを見て違和感を覚えはしたが、旅人たちにも気さくに声を掛ける、平和な地域なのだろうと勝手に解釈することにした。

 そこから少し先にいった二股の道を右折し、なだらかな坂道を上がっていく途中、彼らはまた地元の住民に挨拶をされた。道の脇に建つ小さな家の前で話していた中年女の二人で、そのうちの一人は彼らに搾りたての山羊の乳をくれようとした。一行は単なる旅行者である自分たちへの親切な申し出に大いに驚き喜びながらも、それを丁重に断る。遠慮なんかしなくていいのに、と笑いながら言う女の態度に、サンジェルマンは、ここはなんと平和で友好的な地なのだと感心する。 


 部下が馬を止め、サンジェルマンたちに振り返った。

「あそこがそうです」

 丘をのぼりきった先に木立が見え、木々の隙間から背の低い建物がのぞいていた。サンジェルマンが馬から降りると、それにならって、二人も馬上から飛び降りる。

「ねえ、サンジェルマン様」

 木立に入って、粗末な門扉が前方に見えてきた頃、ベアールがおもむろに口を開いた。

「その……一人の女を想うのって、どんな境地です?」

 いきなり何だ、とサンジェルマンが彼を見返すと、彼が肩をすくめて言った。

「いえ、そのですね、ちょっと興味があるんですよ。私には妻がいますが、家を存続させるに必要な、ただの結婚相手に過ぎない。もちろん大事な存在には違いありませんが、だからって、たった一人に貞操を捧げるほどには――」

 ベアールが気まずそうに言葉をにごした。その反応を目にして、彼が、昨夜の女がサンジェルマンに言った内容を確認しようとしているのだ、とサンジェルマンはやっと気づく。

「貞操を――守るというより、単に他に目が移らぬだけだろう。貴公は、これまでの恋愛遍歴の中でそういった相手はなかったのか?」

 サンジェルマンが前方の家の前で動く存在を見つけた後にベアールの方に振り向くと、彼は理解に困った様子で両手を広げた。

「そんな相手に遭遇したことはありませんよ。サンジェルマン様のように考えたことは、一度もない」

 サンジェルマンは、後宮のアリエルを頭に思い描いた。王城にいるときにはほとんど意識しなかったのに、二人の距離が離れるたびに彼女の面影が頻繁に頭にちらつく。旅に出発する前に、彼女の顔を一目見ておきたかった。

 彼女は常に身分の差を口にして限定的な関係をにおわせるが、それではもう満足しない、と痛感する。これまで具体的に考えたことはなかったが、サンジェルマンは、自分が彼女と結婚したいのだ、と悟った。

 王城に戻ったら、彼女にそう告げよう。サンジェルマンはひとり、それを心に決める。

「仕方あるまい。人は、それぞれだから」

 サンジェルマンが言うと、ベアールはじっと彼を見つめ、やがて深い息をついた。

「そうですね、仕方ない。でも、なんだか……そう思える人がうらやましい気がしますよ」

 ベアールは明言しなかったが、サンジェルマンはアリエルの存在を見抜かれたようで恥ずかしくなり、彼から視線をそらした。


 木立の終わるあたりで年老いた男が木にもたれて立っている姿を見つけたのは、一行が男の間近にまで接近したときだ。着ている服の色のせいだけでなく、老人は周囲の景色に同化していた。しかし、男は木立の間を歩いてくる三人にずっと前から気づいていたようで、サンジェルマンの部下が挨拶をすると、男は彼を飛び越えてベアールに笑顔を向けて言った。

「やあ、お疲れさん。旅はどうだったね?」

 そして木から離れて一行に歩み寄り、数歩近づいたところで老人は顔をこわばらせ、急に立ち止まる。

「あ、あんた? あんたたち、誰だね……?」

 三人が男の不可解な反応に顔を見合わせ、部下が男に訪問理由を説明しようとしたときだった。

「ローリー!」

 甲高い子どもの声が聞こえ、三人は家の方を振り返って見た。三人の男女の子どもが庭におり、いちばん年長の少年が飛び跳ねながら、ちぎれんばかりに頭の上で手を振っている。少年は喜びいさんで三人の方に駆け出した。

「今回はすっごい早かったね!」

 少年はけたたましい笑い声をあげ、両腕をぐるぐると振り回しながら走り寄ってきた。一行が不思議に思って少年の接近を見守る中、少年は脇目もふらずにベアールの前に飛び出した。そして、彼を見上げた少年の明るい笑顔が、本当に、瞬間的に、恐怖に取って代わる。

「……おい?」

 ベアールが声を掛けると少年は両手で顔を隠し、そうかと思うと、一目散に元いた場所へ駆け戻っていく。

「何だ? 何なんだ、いったい?」

 ベアールの疑問に誰も答えられないまま、サンジェルマンと部下は少年が家の中に逃げ込むのを見つめた。だが、その少年と入れ代わりとなるように、一人の女が扉から姿を現す。彼女の服の後ろに隠れるようにして、さっきの少年が、一行をにらみつけるように顔をのぞかせていた。

 女はブロンドの髪を後ろでまとめ、くすんだ赤い服につけた白い前掛けのような物で両手をぬぐいながら、一行を不審そうに見た。顎に少し肉がつきはじめており、見たところ、四十に入る少し手前のようだった。

 ――サンジェルマンが初めて会う、ジェニーの叔母だ。

「ジャック、お客さんなの?」

 女の呼びかけに反応した老人を横目に見て、サンジェルマンは再度彼女を観察する。彼女はどこにでもいそうな、ありきたりの母親のように見えた。今のところ、ベアールは彼女を見ても気になる反応を見せていない。老人は何も返答しなかった。

「ゲンスブールさん、マークです! お約束どおり、主人を伴って参りました!」

 彼女にそれ以上の不信感をもたれないようにと、サンジェルマンの部下が声を張り上げた。すると、彼女の顔いっぱいに驚きと喜びが広がる。

「まあ、本当に? じゃあ――」

 彼女が前掛けを両手で握り、一行の方に歩き出した。彼らの背後をのぞこうとして、頭を一生懸命に動かしている。

「……サンジェルマン様、彼女が――そうですか?」

「ああ。行こう」

 この女は何者なのか。

 二人は同じ緊張感を共有していた。この瞬間のために、ベアールは剣技大会の最終夜の宴を欠席してまで、三日半もかけてヴィレールからやって来たのだ。隣に並んだベアールの表情を盗み見ながら、サンジェルマンは初対面のジェニーの叔母に近づいていく。

 突然、ベアールが歩みを止めた。はっとして彼を見ると、サンジェルマンの隣で、彼がまるで息をし忘れたかのように彼女を茫然と見つめている。

「ベアール殿?」

 サンジェルマンの声に彼は反応しない。それを目の当たりにして、サンジェルマンの喉が痙攣する。

「あなたは……!」

 ほどなく、別方向から女の声も飛んだ。彼女の叫びに触発されたかのように、ベアールがふらついた足取りで前進し始めた。女のため息がもれる。サンジェルマンが振り返って、わざわざ確認するまでもない。

「なんて、なんて……父親そっくりなの! あなた、あなたは……ユーゴ……?」

 彼女の振り絞るような声が続き、サンジェルマンはようやく覚悟を決めて、二人の再会の場面に目を向けた。ベアールは背中しか見えなかったが、女は顔面蒼白となって彼を見上げ、迷いがちに両手を彼に伸ばそうとしているところだった。

「なぜ、こんなところに――」

「なぜだって? そっちこそ、なぜここに……」

 冷淡にも聞こえる口調でベアールは言ったが、彼女の手が肩に触れると体をかがめ、彼女をその体に抱きしめた。その光景を目にして、サンジェルマンは、冬の冷気に全身をさらされた気分になる。ジョー姉さん、と言う彼の声が、はっきりとサンジェルマンの耳にも届いた。


 彼女はベアール家を追放されたユーゴの実姉だった。つまり、ジェニーの父親はユーゴ・ベアールの長兄ということだ。

 ヴィレールを逃れて各地を転々としていた男のもうけた子どもが、何の因果かヴィレールに連れ戻されるとは。なんて奇妙な縁だろう。

 サンジェルマンは判明した事実に気が遠のく思いがしながら、これをどうやってゴーティス王に伝えようかとしきりに考えていた。

 ひとしきりの再会の抱擁を終えた後、家に招き入れられた一行をぐるりと見渡して、ジェニーの叔母は硬い表情となった。

「――ジェニーはヴィレールにいるのね?」

 ジェニーを保護している主人と紹介されたサンジェルマンを、彼女は責めるような目つきで見る。

 何の説明もしていないのに察しがよい、と彼女を感心して見ながら、サンジェルマンは彼女に隠し事をするのは賢明ではないと判断した。彼女の冷たい目を直視して、正直に答える。

「そうだ。彼女はヴィレールにいる」

 彼女は絶句し、そして、それを聞いていたベアールが何かを思い出したようにはっとしてサンジェルマンを見た。

「――短剣の、現在の持ち主?」

「そうだ」サンジェルマンはベアールを見て、微笑んだ。「貴公のおかげで彼女の身元が判明した。身内とわかった今、貴公にも彼女を紹介せねばなるまいね」

「は。……え、いえ、そのような……」

 ベアールは瞬きをせず、急に怖気づいたように首を小刻みに振った。その彼の態度で、サンジェルマンは、彼がジェニーの存在と立場を知っていると気がつく。

「ああ、彼女を――知っておられるようだね」

 サンジェルマンが彼を覗き込むと、彼が青ざめた顔で微かに首を縦に振る。

「はあ、まあ……噂で」

 この反応ならば、あらためて彼に口止めする必要もないだろう。

 サンジェルマンが少し安堵したとき、屋内の彼らの耳にも明らかな、急を要するような馬のひづめの音が聞こえた。この家に通じる木立は細かな枝があちこちの方向に伸び、馬で駆け抜けるのは危険だというのにも関わらず、その大きな音はどんどん近づいてくる。

「サンジェルマン様!」

 ジェニーの叔母の前では本名で呼ばないように口裏を合わせていたのに、屋外にいた部下は彼の名を扉越しに呼びかけた。サンジェルマンは不快な胸騒ぎに襲われる。彼女がサンジェルマンに振り返る中、彼は断りを入れて家の外に急いで飛び出た。

「マーク、いったい――」

 サンジェルマンが部下を問い詰めるより前に、黒い馬に乗った、見慣れた男の顔が家の前に現われた。できれば、こんなところで見たくなかった顔だ。

 男は手綱を勢いよく引いて馬を急停止させると、馬上から体をひらりと地面に着地させる。

「サンジェルマン様!」

 男の声はしわがれていて、サンジェルマンは不意に目の前が暗くなったように感じた。

「まさか――王の身に何かあったか!」

「いえ、そうではありません! ジェニー様が――」

「彼女が、どうした? まさか、体がどうかしたか……?」

 彼女の流産を望みながらも、彼女の体のことは心配だ。

 息も絶え絶えに言葉を操ろうとする王城からの使いを見ながら、サンジェルマンは最後に見たジェニーの表情を思い出した。王城の屋上で、彼女は王と恋人同士のように見つめ合いながら、泣き笑いのような顔を見せていた。

「いいえ! ジェニー様が王城から……いなくなったそうです!」

 彼の部下は肩で激しく息をしながら、サンジェルマンの応答を待っている。二人の間に数秒の沈黙が発生した。

 ――イナクナッタ?

「待て――何だって? いなくなったって? なぜ、彼女が城からいなくなる?」

「わかりません。剣技大会の朝より姿が見えず、後宮中を探しまわっても発見できなかったそうです。王が知る前にとアリエル様が私に極秘に教えてくださいましたが――おそらく今頃は、王の耳にも届いていると思われます!」

 ジェニーが失踪? 

 サンジェルマンが必死に頭を回転させ、思考を働かせようとしていると、男がさらに付け加えた。「サンジェルマン様、緊急のご報告がもう一つ」  

「何だって? これ以上に何の緊急用件がある?」  

 サンジェルマンが呆れ、苛立った声をあげると、男は声をとがらせて答えた。

「五十二号が看守に負傷させ、牢より逃走いたしました。現在、王城内外を捜索中です」

「何……だって?」

 この部下は、囚人五十二号が大罪を犯した人物とは認識していても、本来の身分を知らない。

 重責と苦々しい口惜しさを感じながら、サンジェルマンは部下を見る。この脱走によって、サンジェルマンは、不本意だが、五十二号の命を奪わなければならなくなった。

「……王は、この件をご存知か?」

「いいえ」

 ジェニーの失踪だけでも王には相当な痛手だろうのに、そのうえ、余計な心痛を与えたくない。

 本当に――ケイン様逃げた……のか?

 ジェニーの失踪、ケイン様の脱走。

 ふと、サンジェルマンは、一見すれば別々の事件に思えるジェニーとケインの件が、実は関係があるのではないかと思えてきた。二人の接点は考えつかないが、失踪と脱走、あまりに時期が合いすぎている。

 二人が共謀しているかどうかはわからない。しかし既に、ジェニーの失踪からは四日が経とうとしている。サンジェルマンは、王を欺いたジェニーに対する怒りと失望が沸々と吹き出してくるのを自覚した。  

「すぐにここを発とう! 彼女はきっとここを目指しているはずだ、王より先に私たちが彼女を見つけなければ。途中で必ずくい止める!」

 主人ジェニーを逃してしまったアリエルは、王の咎めを当然受けるはずだ。機転をきかせて知らせを走らせたアリエルのことを思うと、サンジェルマンはジェニーの侍女である彼女の身が心配でならない。彼女はまだ無事なのか、彼女と再び顔を合わせる機会が訪れるのか?

 何としても、王より前にジェニーを確保せねば……!

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