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私の好みが世界を変える 前

以前に書いたものですが、投稿することにしました。


全三話の予定です。


「まだ携帯電話は要りません」「あの世特務課」と違い恋愛要素、糖度は無いです。

 ここどこよ。…ってか、なんか分かるんだけどね、でもね、こういう時ってさぁ…。

 多いのって、森の中とか平原じゃないのぉ~~~~~!!!!


 ありえないありえない!いや、今こうしてこうなっているんだから有り得ているんだけど、やっぱりありえない!

 怒るしかないだろう。だって、ここ、どでかい湖?のど真ん中だと思われる場所の、畳1枚分くらいかなぁ?の広さの極小な島の上なんだから!

 そんなところにポツ~ンなんて。

 生えている草食べられるの?

 おトイレはこの何も目隠しの無い所で、野でするのですか?

 ここの湖の深さってどうなのよ。

 今日体育があったから今着ている制服のほかに体操着はありますけど?

 電話はもちろん圏外だし。

 鞄には、勉強道具と今朝コンビニで購入した飴とポッキーと飲み忘れていたスポーツドリンクがありますけど?

 昼休みに友達と読んだ占い特集、付録にタロットカード大アルカナ付き、がありますけど?

 これでどうやって過ごせって言うんだぁ~~~!!!!!

 ぜーぜーぜーぜーぜー。疲れた。


 近くに人影は無い。

 無駄に叫んでみたけど、本当に無駄だった。

 トイレに行きたくなった困る。

 落ち着こう。落ち着けるかぁ!

 落ち着けた気がする。


 よく見てみると綺麗な景色だと思う。幸い暑くも寒くも無い。

 一人は寂しい。

 しょぼんとしていると突然島の周りに複数のスクリーンが現れた。


「何なの…」


 突然のことに頭がパニックだ。理解する事を拒否しているような気がする。

 でも、そこに人の姿が映る。


「あ、あの!助けてください」


 ここが異世界なら言葉が通じないかもしれない。思わず助けを請うてしまったのは失敗か?

 もしかして禁忌の場所にでも落ちてしまったのだろうか。処罰されたらどうしよう。

 誤解を解かなくちゃ。

 あ~、もうっ。何からしたらいいのか、何を話せばいいのか。


「お久しぶりですのじゃ。姫様」

「…ひ・め?」


 姫って、お姫様の姫?は?


「おや。新しい姫様のようじゃ。どれどれ…やっぱり姫様じゃ。30年ぶりですじゃのう」

「私のこと知っているの?でも、私は知らないです。ごめんなさい」


 私は知らない。こんな「じゃ」とか使う知人なんか居ない。時代劇の見過ぎじゃないの?

 30年ってさぁ、私、生まれていないし。私が幾つに見えるのか問うてみたい。


「…人違いです。私、姫でもなければ30歳でもありませんから。他をあたって下さい。それとは別に、すいませんが私、家に帰りたいのですが、助けていただけませんか?」


 厚かましいと思うがここから離れる手段がない。…泳ぐのは却下。広すぎて途中で溺れちゃうもん。

 できたら濡れたくないし、荷物も濡らしたくない。


「ふぉっふぉっふぉっふぉっ。姫様じゃ。間違いないですぞ」

「…その根拠は?」


 私、一般人です。どこぞやの令嬢でもなければ何とか国の姫様でもないし、間違いなく孝則たかのり良恵よしえの娘ですが。顔も性格も似ているし、骨格や体質も似ているし。お姉ちゃんと弟とも顔似てますし、絶対違いますよ。

 だから、早く家に帰りたいんですけど。


「こっちの世界で30年じゃから、姫様の世界で何年経っているかはわかりませぬ。わしはすっかり爺さんになってしまいましたが、姫様は変わらず若いままで。お元気そうでなによりじゃ。

 この30年、姫様のお蔭で、『金髪碧眼細マッチョ、肌はつるつる』を基本とした青年がもてはやされたお蔭で、わしも息子も安泰でしたのじゃ」


 えっと。何だかよくわからないんだけど。確かにソレもカッコイイとは思うけど、時代はモフモフでしょ!


「あ~、やっぱり人違いだと思いますよ。私、今のイチオシはモフモフですから」

「なんと!」


 お爺さんの周りが慌しい。人が右往左往している。


「『モフモフ』とは?」


 そこからなの?お爺さんの世代じゃゲームをしない人もいるか。ライトノベルは…このお爺さんじゃ読んだ事なくても不思議じゃないか。

 ちょっと面倒くさいけど一々説明してあげましょう!


「お爺さん、いえ、お爺ちゃん!私が説明してあげましょう。よ~っく聞いてね。

 モフモフとは至宝!そしてファンタジー!夢、ロマン。この世の幸せ。

 獣人とか亜人とか区別していわれるけど。けしからんことに差別されることもあるけど。

 犬、猫、ウサギ、狐、熊、トラ。様々な動物の特徴を持っている人。

 人とはいうけど、そのケモ成分の量はまちまち。

 人間に通称ケモ耳としっぽが生えていて、人間より能力が高いひと。そして」

「姫様、分かりましたのじゃ」

「最後まで聞け~い!遮らないでよね」

「わしは静聴するのじゃ」


 うん、分かればよろしい。どこまで話したかしら。


「そう、もう、まんま獣な人。四つ足の獣が二本の足でみたいなタイプ。こちらの方がより獣の本能を残していて戦闘力を含め五感なども能力が高いわ。

 毛づくろいをされてでろ~んと痴態を晒すところなんか超ムラムラね。

 耳と尻尾が性感帯なのも、お・や・く・そ・く♪あーたまらないわ。

 発情期の独特の匂い…獣臭けものくさいかもしれないけど、ゾクゾクするに違いないわ!」


 ああ~、ここがファンタジーで定番の異世界なら居るんでしょ?

 ちょっとだけモフモフした~い!


 あ、あれ?あれ?


 うわっ、何?


 眩しいっ!


 ちょっ、えっ、嘘。


 まだモフモフしてなぁ~い!!


 ここは?ここは、いつもの通学路。あれぇ~?

 夢か現か幻か。


 鞄はある。コンビニで買った物も残ったまま。体操着…?あれ?

 えっと、占いの雑誌は?あの付録欲しかったのに。無くなっている。

 体操着が無いのはまずいなぁ。

 無い物って…落ちていないって事はあそこにあるんだよねぇ。

 取り戻すのは無理ね。

 勇者にも聖女にもならないで、あれだけで済んだんだから、超ラッキーなんだよね。

 体操着は、うん、これから注文しに行こう。

 お小遣いで買うとなると厳しいなぁ。しゃあない。お年玉の残り使うか。

 親に見付からないように、急いで体操着取扱店に走った。

 が、ふと、立ち止まる。


「私、何で体操着なんか買いに行こうとしているの?」


 体操着をもっていない。


「学校に忘れてきたぁ!洗わないと臭いかなぁ。明日でいいよね」


 私は方向を変える。

 時間を確認する。


「こんなとこに来たせいでドラマの再放送の時間にぎりぎりじゃんっ」


 結局、家まで走った。


お読み下さりありがとうございます。


中・後も今週中に投稿予定ではいます…が。…が?

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