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さよならばかりのイストリア  作者: せいのかつひろ
-プロローグ-
1/25

第一話 「成宮新という人間のこと」

「さよならばかりのイストリア」




 はじめ、僕は何が起こったのか理解が出来なかった。

目を開いた時には、今まで一度だって見たことも無い景色の中にいて。

取り戻した意識はまだ朧気で、僕は必死に思い出そうとしていた。

どうしてこうなったのだろう。

何がいけなかったのだろう。

何が悪かったのだろう。

考えても考えても答えは出ない。


 ザワザワと僕を囲む木々が音を上げる。

小心者の僕には、それがまるでライオンの雄叫びか、まるで竜の咆哮のようにも聞こえて、更に身が縮こまる。

先程まで僕がいたであろう見慣れた道……コンクリートで舗装された、何の変鉄もない道はどこにもなくて、一体どこをどう間違えればこんなところへ迷い込めるのだろう、深い深い森の中にいた。

一体何故、こんなところで寝転がっていたのだろう。

止まらない「どうして」を少しでも解消するために、僕は目を閉じてもう一度、記憶の海へ潜ることにした――。




 ――成宮新という人間は、どこにでもいる、ごくありふれた中学二年生であったと思う。

成長期だというのに、自分だけ身長があまり伸びていないというのが少しだけコンプレックスだったり。

ファンタジー小説や漫画が大好きで、とりわけその物語に必ずいる、ヒーローに憧れていたり。

兄弟はいない。

他と違うところを挙げるとすれば、何かにつけいじめ……差別の方が適切だろうか。

とにかく、そういうものの対象になったり。

両親の仲が最悪で、同じ空気を吸いたくないから、実家から新幹線でなければ通えないほどのところにある私立中学への入学を希望し、一人寮生活をしていたりするところだろうか。

けれど、これだって今のご時世、どこにだってある「キャラ付け」の一つに過ぎない。

誰かにとって僕を僕たらしめているものなんて、その程度のものだ。

この世界に特別なんてない。

そうやって悲観して、誰かに哀れんで貰うのを待つなんて、馬鹿げてる。

でも、多くの人間は、多くの時間を費やして自分が特別であることを証明しようとする。

そんなにも価値のあるものには、とても思えなかった。



 気が付けば、この学校に来てから二回目の夏休みが迫っていた。

昼休み、僕は一年を過ごしても一ミリも馴染めずにいる自分の教室から逃げ出すように、体育館裏に来ていた。

ここには真夏にだって陽のあたらない倉庫がある。

少しだけじめっとしているが、幾分か涼しいのだ。

すぐそばにある組み木の上に座ってお昼ごはんを食べる。

コンビニで買ったおにぎりを二つ。

体育館からはバスケットボールをドリブルするけたたましい音、バレーボールを弾き飛ばす破裂音が漏れ聞こえてくる。

それなりの学力がある学校でも、存外机に齧り付いているだけ……という生徒は少ないように思う。

それでも皆、僕より全然頭がいいのだから、人間って不平等だよな、とか、ちょっとわかったフリをして誤魔化してみたりもする。


 こんな「ネクラ」な僕にも、親友がいる。

いや、「いた」が正しいのか。

 梶ヶ谷凍矢は僕の向かいの家に住んでいた男の子だ。

歳が一緒だったこともあり生まれた頃から交流があった。

トウヤは僕と違いスポーツが得意で、体格もよかった。

僕とはまるで正反対の位置にいるトウヤは、どういうわけか毎日のように僕を遊びに誘い、色んなところへ連れて行った。

公園、裏山、近所の川……。

僕が嫌だと言えば、無理強いすることなく、残念そうに帰っていく。

そんなわかりやすい奴でもあった。


(おーいアラター! 早く来いよ、置いてくぞー!)


 ふとした時に、トウヤが僕を呼ぶ声が聞こえてくるような気がする。

トウヤといる時は僕はなにもされなかった。

なにかされたとしても、直ぐにトウヤがなんとかしてくれた。

僕がありがとうと言えば、「気にすんな、オレとアラタの仲だろ!」と、背中を思い切り叩いてくるのだ。

あの痛みも、今となっては少し懐かしい。


 そんな彼が、ある時行方不明になった。

もう二年も前のことになる。

学校から帰る途中だったそうだ。

当時はちょっとした事件になったが、警察の捜査も虚しく手掛かり一つ掴めなかった。

その後梶ヶ谷家は引越ししてしまい、以降連絡も取っていない。

僕を見ると、息子の姿を思い出してしまうから距離を置かれたのだろうか、などと勘ぐってみたが、今となっては確認のしようがない。



 ……というようなことがあったせいなのか、或いは生来の性分かはわからないが、僕は今日も一人、誰かと関わるでもなくこっそりと隠れるように生きている。


 おにぎり二個なんて、あっという間に食べ終わってしまった。

少し物足りなさを感じるほどだ。

身体は成長しなくても、食い意地は成長していくなんて一体食べた栄養はどこに消えていってしまうのだろう。


 僕は半分に破けたおにぎりの包装紙二つ分をくしゃりと丸め立ち上がり、光の届かないその場所から離れることにした。



はじめまして。せいのです。


この度、初ファンタジー小説を執筆することと致しました。

……といっても、ここまでの内容では、


「一体どこにファンタジー要素があるんだ」

と突っ込まれてしまいそうですが……。


ご安心ください。これからコッテコテのファンタジー小説となるはずですので。


週1~2回のペースで更新できたらいいなと思っております。

生暖かい目で見守ってくださると幸いです。


それでは、また次回。



※2018/06/01追記

長らく滞っておりました、連載を少しずつ再開していきたいと思います。現在あるお話の部分は改稿、以降は書き下ろしていく予定です。


どうぞ、生暖かい目で見て上げてください……。

宜しくお願い致します。


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