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仲間たち

お久しぶりです。

当方社会人であり、今後もゆっくり更新が続きますがどうかよろしくお願いします。

「ユーマ様、本当に大丈夫ですか?」


「あ、ああ。問題ないよ」


心配でたまらないといった様子のリリーに付き添われながら、優真は従者たちが集結している玄関へと向かう。


(にしても……リアルになって豪華さが増したな)


廊下には意匠を凝らした文様のカーペットが敷かれており、踝まで沈み込むのではないかと錯覚するほどの柔らかさで以って優真の足を包み込む。

ところどころに掛けられた絵画は、写真のような精巧さで描かれた風景画もあれば、あえてデフォルメを施した天使の絵もある。


要所に飾られた壺や像も、物によっては金色や虹色に光り輝いている。

比喩ではなく、実際に自ら発光しているのだ。

どれも芸術に対して素人の優真でも価値の高さが窺える一品だ。

基本的にこれらの美術品は、ダンジョン攻略の際に発見したものである。

本来ならば換金アイテムとして売りさばくのが基本ではあるが、島に引き篭もって貨幣経済とは無縁の生活(プレイスタイル)を送ってきた優真が使用人に命じて適当に飾らせているのだ。


また、芸術品ばかりでなく屋敷自体も非常に金がかかっていることが見て取れる。

廊下自体も非常に幅広く、乗用車程度であれば余裕ですれ違うことが出来る程だ。

柔らかな光を投げかける魔力灯に照らされた壁は目に優しい乳白色や暖色であり、傷や汚れとは無縁な様子は、非常によく手入れされていることを静かに物語っている。


(流石、5000円もした追加DLCだな)


因みに、ゲームでは『G(ガルド)』という通貨単位が使われており、現実の通貨100円でゲーム内通貨1000万Gの購入が出来る。

ゲーム内で購入できる一般的な住宅(木造平屋建て、風呂なし)は10万Gから20万Gで購入することが出来ることから考えると、優真の邸宅は5億G、一般住宅5000軒分である。


休憩室から5分ほど歩いた優真は、玄関に向かうために階段を上った。


その先に驚くべき光景があることも思わずに。






「……っ!」


階段を上りきった優真は息をのんだ。

それは玄関、エントランスホールに狭しと並んだ人の群れのせいである。


もちろん、群れとはいっても雑然さは全く感じられない。

彫刻を並べたかのようにメイド、スチュワート、警備兵などが微動だにせず跪いていた。

メイド30名、スチュワート3名、警備兵30名である。

それだけの人員を収容できるエントランスホールもそれだけ広いということである。

そしてそれらの先頭に、四人の人物がいた。


獣人族のフリージア、ドワーフのネリウム、ダークエルフのカトレア、淫魔族のヴィオラ。

そして、その四人の隣に天人族のリリーが並んだ。


「ユーマ様、全員集合いたしました」


「……あ、ああ」


三年間、見ない日はないほど見慣れた五人の従者たち。

しかし、それらが現実となり命が吹き込まれたことで更なる魅力が生まれていた。

それは絵画や彫刻では決して表現することのできない領域。

生命に宿る魂の美しさとでも呼ぶべきものだ。


「えっと……フリージア、だよな?」


「はい! そうです! フリージアです!」


尻尾をピコピコと振るいながら、獣人族のフリージアが元気良く手を上げて応える。

ショートの茶髪がふわりと揺れ、同じくスカートも揺れる。

大きな丸い瞳は爛々と輝いており、活力が満ちている様子が見て取れる。

全体的なスタイルはスラリとしているが、それでも出るべきところは出ているようだ。

健康的な女子高生アイドルのよう、というのが優真の正直な感想だ。

テレビでもフリージアのような美少女アイドルは見たことはないが。


「で、ネリウム」


「ん」


開ききらない眼で頷きながら返事をしたのはドワーフのネリウム。

フリージアよりも暗い色合いの茶髪が僅かに揺れた。

標準装備の作業服姿ではあるが、幼い外見も相まって『ごっこ遊び』に興じる子供にしか見えない。

幼いながらも整った容姿は、数年経てば『傾国』と名がつくほどの美女になるであろうことを予感させる。

しかし、ドワーフであるネリウムはこれ以上肉体的には成長しない。

……このままでも良いという紳士的な声が優真の中から聞こえてきそうではあった。


「カトレア」


「はい。我が主の命に従い、ここに参上いたしました」


優真が呼びかけると同時に膝をつき、頭を垂れるダークエルフのカトレア。

セミロングの銀髪が、色の濃い肩から流れきらめく。

凛々しい切れ長の目とその表情、そして騎士甲冑が見事に調和している。

訓練の賜物か、引き締まった体つきをしているが女性らしいまろやかさは失われてはいない。

柔らかな二つの球体が、鎧との間で魅惑的に形を変える。

もっとも、女性らしさを多分に強調する鎧なので『くっころ』感は否めない。


「ヴィオラさん」


「はぁい」


成熟した女性でありながら、過ぎるほどに甘い声がよく似合うのは淫魔族のヴィオラ。

光を飲み込み逃さないほどの美しく長い黒髪と眩しく光を反す白い肌。

五人の中でも最も大きな胸部や、自然体でありながらも艶めかしさを感じさせる仕草。

リリーが男性の求める清純さの具現であるとするならば、ヴィオラは欲望の顕現だ。

もちろん、優真がそう作ったわけではあるのだが。


フリージアのネコミミと尻尾、ネリウムの三つ編み、カトレアの鋭い眼光、ヴィオラの胸元と順に優真の目線が移動する。

端のリリーまで目線が行ったところで、もう一度ヴィオラの胸元を経由してから真っ直ぐ前を向いた。

正直な目線である。


(やばい、なにこれ! みんな可愛すぎ! 美人過ぎ! フリージアの元気娘っぽいのもいいし、ネリウムのジト目ロリな感じもいい! カトレアの凛々しいのも素晴らしいし、ヴィオラさん、エロすぎです!)


外出しても恥ずかしくない服装でありながらも、熟成されたセクシーさを醸し出すヴィオラに対しては、何故か『さん』付けの優真である。

『女らしさ』にはとことん弱い童の帝である。


「ええと……」


整然と並んだ大勢の人間の前で話した経験など無い優真は言いよどむ。

自分の身になにが起こったのかは想像がつくが、何をすればいいのかは全く想像がつかなかったのだ。


数秒思考を巡らせた優真が選んだのは、開き直りともいえるものだった。




「自分は、この世界の人間ではありません!」




考えなしの早すぎるカミングアウトである。

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