孤立
女性は好きだが、理解しようとすると破滅する
〜チャップリン〜
孤立することが悪いなんてちっとも思わない。僕にとっては最高の気分さ。
かつて誰かが言っていた言葉だ。
たしかに、孤独で淋しく感傷に浸ることはあるけれど孤独が悪いなんて私にも思えない。
結局どう生きても人は一人なのだ。
本当に困った時に力になれるのは自分なのだ。
だから勝手に一方的な信頼を押し付けて他人に判断を任せたくせに、その結果に文句を言う人間が許せない。
その点孤立した者は他人に「頼る」、「依存」を無闇にしたりしない。
『自立』と『孤立』は似て非なる物だが結果論では同義なのだ。
『なんて、自己満足で且つ皮肉な考えなのだけど』
そこはとある一軒家の一般宅。
名前欄にはたしか…
そう、真柴だ。
真柴と書いてあった。
そんな真柴家の一室。
辺りに乾いた血の痕が残りかつて人だった真っ二つにされたものが横たわるその部屋にその少女はいた。
歳の程は十と七つほど。
腰まで届く長い艶やかな紫色の長髪にそれと同じ色をした淡く光る瞳を持った整った顔立ち。
女子としては少し高めの背に年頃の娘らしいまだ発展途上な胸元。
そして、その肢体に薄紫色の“殺人協会”の制服を纏っていた。
触ると折れてしまうかのように儚い彼女の腕には彼女の身の丈よりも長い紫色のブレード。
かつて“殺人協会”第五位として第三位と共に“皆殺し”と呼ばれていた少女はただ一人目標の接近をただただ待っていた。
ただただ目標が近付いてくるのを喋らず物音もたてず
静かに
空気と同化しながら
待っていた。
『目標が動き出しました。お供に殺人鬼と食人鬼を連れて近付いて来ています。貴方の計画通りに“翠色の暴力”も“化物”も足止めが出来ています。後は貴方の番ですよ。九夜鈴さん。いや…イギリス協会所属殺人協会序列第一位《紫色の死神》九夜鈴』
そんな少女の元へと突然に現れたのはまたまた少女。
いや、見た目の年齢的に既に成熟しているだろう。
先程、別の場所で七花に思いきりテーブルに叩きつけられたはずの女性。
イギリス協会所属殺人協会序列第二位《泥人形》ダート・アルカノートだった。
『そんな風に丁寧に話さなくたっていいのよ、ダート。貴方は私に恨みがある。いや、私達に。の方が正しいけれど』
『恨み?さて、なんのことですかね?…まあ、それはいいです。それよりも本当に貴方一人でいいんですか?』
鈴と呼ばれた少女の話しかけに対してダートはおどけたようにとぼけながらそう返す。
まるで、お前一人で大丈夫か?
とでも、言わんばかりに。
『第一位って肩書きだけじゃ不安ですか?』
『ええ。不安です。だって、その称号は貴方だけのものじゃ…』
ーーないじゃないですか。
そう言おうとしてダートは最後まで言えなかった。
突然動き出した鈴の…
目にも止まらない…いや、他の器官ですらまるで感じ取れない程の超神速で。
右手に持っていたブレードでダートの腹部を横薙ぎに切り裂いていた。
ダートの顔が驚いたように歪みながら地へと上半身ごと落ちていく。
だが、それは地面に落ちたと同時に泥となって辺りに飛び散っていった。
これが《泥人形》の能力。
だが、少女はそんな光景を見ても驚くことはなくただ一言。
『黙れ』
そう呟き、体を壁に預けまた目標を待つのだった。




