本心
気に入らない奴はみんな透明にしてやればいいんだ
〜関根元〜
ここで、補足しておこう。
ボク、東雲凜は厳密に言うと人間ではない。
いや、人間と言うカテゴリーには属すがボクのようなものを人間と言うものは稀だろう。
今は語る必要性を感じない為あえて詳しくは説明しないが二年前の夏にボクは人であることをやめた。
いや、違う。
やめさせられたのだ。
ある一人の男によって。
友人と思っていたその男はボクを裏切った。
男はボクに呪いをかけボクを殺そうとした。
存在しているだけで周りを殺し尽くしてしまうそんな呪いをかけてまで。
常に周りを殺したいと言う欲望が渦巻く、強烈なまでの殺人衝動と言う名の呪いを。
詳しい病名もあるらしいがそんなことはどうでもいい。
わかることはただ一つ。
この呪いはひどく活発的である。
街を歩いているだけで急に目の前の人間を殺したくなる。
いや、殺せるなと感じてしまうのだ。
そして、人はその性からか出来ると思ったことは無意識でもやってしまう。
ボクが通った後には街1つが消えていた。
いや、地図上には存在する無人の街になってしまったのだ。
今でも鮮明に覚えている。
呪いの暴走によってその呪いをかけた男を殺した後も暴走を続けたボク。
辺り一面に鮮血が飛び散り壁に人の肉がへばりついても止まらなかった。
やめられなかった。
床には頭やぐちゃぐちゃに切り裂かれた人間の四肢などが散乱していた。
それでも、終わらなかった。
足りないのだ。
街1つ消してもボクの殺人衝動は消える余韻すら見せなかった。
きっとボクは狂っていた。
そして、もうきっと人間ではなかったのだ。
彼女、紅く尊い鬼、篠宮雪に会うまでは。
あの日のことは今でも思い出せる。
彼女は、彼女に覆い被さりナイフを首に突き立てようとしていたボクにふてぶてしくもこう言ったのだ。
『助けてほしいかい?』と。
その後の事は秘密である。
決して語りたいものではないし聞いていて心地のよいものではないからだ。
その日からボクは鬼になり彼女の側にずっといる。
殺した人数はもう憶えていない。
それくらい多くの人を殺した。
殺し尽くして喰らい尽くした。
ボクは自分を屑だと思う。
人の命を奪いそれを生き甲斐にするゴミだ。
でも、だからこそ彼女に選ばれたのではないかと思うのだ。
そう考えると人を殺したことに後悔はない。
笑いたければ笑え。
これが偽りのないボクの気持ちだ。