対話
同じ嘘を何千回・何万回と繰り返せばそれは真実となる
〜アドルフ・ヒトラー〜
『で、なんで君はそんな服を着ているんだい?』
ようやく落ち着いたのか、雪は先程とは打って変わって不遜な態度で座っている。
しかし、明らかに動揺は隠しきれていない。
体を小刻みに震わせながら顔は我慢出来ないとでも言うようにニヤついている。
そんな彼女の姿に不思議そうな顔をしながら霊華は答えた。
『私、公私は混同しない主義なんです』
『いや、答えになってないよね?』
霊華の答えに雪はすぐさま突っ込みを入れる。
最強の吸血鬼は笑いで言うと突っ込みらしい。
なら、ボケは凜だろうか。
そのまま、雪は肩を落としながら手元にあるオレンジジュースを掴む。
その手には汗が滲み震えが迸っていた。
『まだ、治まりませんか?吸血衝動は』
霊華がそう言った途端雪は飛び上がる。
顔には驚きを隠せないとでも言うかの表情が浮かび上がっている。
『どうして…知っているんだい?』
凜すら知らない秘密をなぜこの女が知っているのか?
冷や汗が背中に走る。
凜を行かせたことは失敗だったと思いながら戦闘体制を整える。
そんな雪を見ながら霊華は優雅に紅茶を飲んでいた。
あまり高くはない銘柄だが彼女が飲むだけで高級レストランのワイルドティーのように思われる。
ゆっくりとそれを飲み干した後に霊華は言った。
『私の家の家系。桜楼院家は代々鬼を相手に殺しあってきました。その中で死にきらなかった鬼達を捕まえて鬼での実験を私の祖父は始めました。解剖から人体実験から何からすべて…ね』
霊華はスラスラと自らの家の事を語った。
雪の殺意を増幅させるほどに。
『…最悪だね。力を手にいれたお前達は恐ろしいよ。人間』
だから、雪は言った。
蔑むように。
『御互い様でしょう?汚ならしい人外の鬼』
霊華も静かに返す。
憐れむように。
『まぁ、それのお陰でいろいろとわかったんですよ。例えば、その腕。急に震えだしたでしょう?』
そう言いながら雪の震えている手を指差す。
『それは吸血鬼特有の体に血が足りてない証拠なんですよ。よっぽど血を飲んでないみたいですね?吸血鬼の癖に』
すべてバレている…
そう思いながら雪は意識を集中させる。
いつでも霊華を殺せるように。
と、その時どこからかとてつもない殺意を感じた。
その覚えがある冷たい殺意の元は…
『凜‥君かな?彼はどこでいったい何をしてるんだいまったく…』
そう言って雪は霊華になど目もくれずに歩き始める。
行く場所はもちろん凜のところだ。
どうせ、食人鬼と殺しあっているんだろう。
『あ、霊華君。ここの支払いは任せたよ?よろしくね』
霊華に腕を振ってあとの事を任せる。
彼女は、なにか言いたそうだったがどうでもいいだろう。
自分も行かなくては。
凜が食人鬼を殺す前に。
すべてが、手遅れに…なる前に。




