入学式と専攻発表
新たな出会いを経て入学式に参加するヨシュア。
破天荒な学園長や新たな仲間と共にヨシュアの学園生活が今始まる。
魔導剣術学園物語
第3話始まります!!
それでは本編をどうぞ!!!
『それでは、新入学生の入場です!! 在校生は大きな拍手でお出迎えください!!』
ワァーーー
パチパチパチパチ
控え室のホールを抜けたドーム状の室内には、大歓迎と拍手の嵐が巻き起こった、その中央を僕達新入生は歩き出す。
「なんかスゴいね、この学校、こんなに人が居るんだぁ……」
僕の横を歩いていたエリルがひそひそ声で喋りかけてきた。
「そりゃそうでしょ、何たって世界に5つしか無い魔法学校の1つだしかなりの人数になるはずだもん」
それを聞いた僕もひそひそ声でエリルに返した。
『それでは、新入生の皆様はご着席ください』
ドーム状の建物の中にアナウンスが流れると、僕達新入生はステージの前の椅子に着席させられた。
その時には、今まで騒がしかった在校生達はしんと静まり返っていた。
『それでは、まず学園長に新入生の皆様にお言葉を賜りたいと思います。では、学園長先生ステージへどうぞ』
高らかに学園長の入場が宣言されたのだがー…
し~ん-…
「だれもこないね?」
隣にいるエリルが今度は、ひそひそ声を少し大きくしながら顔を近付けてきた。
「……なんかハプニングの予感がー…」
『あれ? 学園長?あれ……おかしいな……もしも~し』
どうも僕の予想通り、ハプニング発生のようだ。
その時-…
『ワァーーハッハッハ!! 新入生諸君!! 君達の入学を心から歓迎する!!』
突然僕達の後ろから割れんばかりの大声が響き渡った。
「な、なんだ!?」
僕は、入学式という場面であることも忘れて立ち上がり、大声の方を振り向いてしまった。
『あ~ああ~~~!!』
だれだか解らない人が、どこに持っていたのかも解らないロープを取り出しターザンをやってのけた。
ロープにぶら下がりすごい勢いで僕の頭上を通過しステージに向かった。
『とう!!』
その瞬間ロープを放し、見事な空中三回転ひねり。
『のわぁぁーーー!!!』
ドン!! ガラガラ!! ガシャーーーン!!!
そして見事な着地失敗、盛大にずっこけた。
きれいに整えられていたステージのセットがメチャメチャのバラバラになった。
僕をはじめとする新入生一同は、ただただ唖然として見ているだけだった。
少し経つと、ずっこけた男の人が、咳払いをしながら、声を続けた。
『あーコホン-… ようこそ!! 我が魔導剣術学園へ!! 私が学園長を勤めるルシフェル・ド・シャルマンだ!! よく覚えておきたまえ!! 新入生諸君!!』
僕達、新入生の間にざわめきが広がった。
それもそのはずパッと見る限り、20~30代の間くらいに見えるこの長身美形の男性が、その実500才を超えるとさえ噂される、あの大賢者ルシフェル・ド・シャルマンだと言うのだからだ。
しかも、その大賢者が学園長を勤めるこの学校の規模もまた底が知れない。
「もうなんか、何から何までメチャクチャな学校だな……」
僕が席に座り直しながら呟くと、すかさずエリルが顔を近付けてきた。
「でも、退屈はしなさそうだね、ボクは退屈なのが一番苦手だよ」
エリルは、僕の真横で、満面の笑顔を浮かべながら僕の顔を見ていた。
「たしかにね」
僕はエリルの言葉に相づちを打った、僕も退屈という物は苦手なので共感しやすい。
『さあ!! 堅苦しい挨拶は、抜きとしよう!! 新入生諸君!! 私は君達の入学を心より歓迎する!!』
パチン!!
学園長が指を鳴らすと魔法をかけたのか、いきなり新入生と在校生の椅子が僕達を乗せたまま瞬く間に移動し、とても長く大きいテーブルが現れ、そこに次々と、料理が出現した。
『新入生諸君!! 今日は君達の歓迎会だ!! 今日の料理は君達のために、学園のシェフ達が腕によりをかけて調理してくれた絶品だ!! 在校生も新入生も遠慮無く!! ドンドン飲み食いしてくれたまえ!!』
ワアアァァァァーーー!!!
学園長の高らかな声を合図とし、パーティー会場と化したドーム状の建物は熱狂の渦に飲み込まれた。
その後はもうお祭り騒ぎ、宴は昼から夜にかけてとり行われた。
****
「それでは、宴もたけなわ、ここで新入生のクラス分けと各人の専攻を発表する!!」
漆黒の空が世界を覆い始めた頃、学園長のこの言葉に今までドンチャン騒ぎをしていた新入生と在校生が、パッタリ静まり返った。
「順番等は関係無い、適当に読み上げて行くから聞き逃さぬように!!」
学園長が次々と生徒のクラスと専攻を発表していった。
発表を聞いて行くとどうやらこの学園は独自の特色を持った四つのクラスに別れているらしい。
一つ目は、清き心と勇敢なる精神を重んじるジャッジメント・シャイン(正義の光)。
二つ目は、静かなる闘志と聡明なる知力を重んじるサイレンス・ナイト(静かなる夜)。
三つ目は、厳格なる戒律と他者への包容を重んじるヘヴンズ・ライトニング(天上の雷)。
四つ目は、優しく穏やかなる心と他を慈しむ慈愛を重んじるブレッシング・スピッツ(祝福の精霊)。
そしてそこから各クラスに『アリア』と『クロス』の2つに別れているらしい。
(僕は、何処のクラスになるかな-…)
僕はドキドキワクワクしながら僕の名前が呼ばれるのを待った。
そしてー…
「第120番 ヨシュア・ウィークネス!!」
「はい!!」
ついに僕の名前が呼ばれ、同時に勢いよく立ち上がり、大声で返事をした。
「うむ!! 元気があってよろしい!! 君のクラスはジャッジメント・シャイン・アリア!! そして専攻はー…」
僕は息を飲み、次に発せられる言葉を待った。
よく見ると学園長の横に座っている、学校の幹部と思われる人達もなぜか息を潜めていた。
「専攻は-…ナイト!! 剣士課程とする!!」
その声を聞いたとたん緊張がほぐれたのか思いのほか、大きな声が僕の口から発せられた。
「はい!! よろしくお願いします!!」
その声を聞いていた学園長の顔は、微かな笑みを称えていた。
「第121番!! エリル・フィリ」
「あ!? はい!!」
横に座っていたエリルが、立ち上がった。
「エリル・フィリ!! クラス!! ジャッジメント・シャイン・アリア!! 専攻はウィザード!! 魔導師課程とする!!」
「やったぁーー!! あ…じゃなかった、えとー…よろしくお願いします!!」
ゴツン!!
エリルが焦ったように頬を赤らめながら大きく礼をしたが、テーブルに頭をぶつけてしまった。
「あうぅ~~…」
エリルは、うっすら涙を流しながら、頭を抑え、再び僕の横に着席した。
その様子を見ていた在校生と新入生は笑いを爆発させた、当の本人も頭をかきながら照れくさそうに笑っていた。
その後もしばらく発表が続き、遂に最後の一人も呼び終わった。
「以上!! 総勢248名の入学を許可する!!」
ワァァァァーーー!!!
学園長の高らかな宣言に再び会場は、熱狂と歓声に包まれた。
「料理もまだまだ余っている!! 存分に食べてくれ!!」
学園長の言葉に再び食欲に火の付いた僕達生徒は、更に食が進んだ。
****
「そろそろ宵もふけてきた、今宵から、新入生諸君は、学生寮で生活してもらうことになる、寮は一つの大部屋に3~4人の割合で入ることとなっているが、大部屋の中に4つの個室がある、各人使いやすいようにレイアウトしてくれて構わない。」
新入生一同は学園長の話を聞きながら、自分たちの部屋の構想をねっているようだった。
「では解散!! 皆、明日からの授業に備え、ゆっくり休んでくれたまえ。 新入生はしばし待て、これより部屋割りを発表する」
学園長がそういうと在校生は早々に退室し、後には僕達新入生だけが残った。
「よし!! 皆、入学したてで疲れているだろう? 手短にすませよう」
そう言う学園長の言葉から、部屋割りはもう決まっているのだろうと、僕は考えていた がー…
「さて!! それではみんなでくじ引き大会だ!!」
ガクッ!!
僕達新入生はいきなり脱力するハメになった。
どうやら全く決まっていないらしい。
「しばし待たれよ、今くじ引き作るから……」
えぇぇぇぇーーー!!!
しかも、そのくじ引きもまだ出来ていないらしい。
僕達新入生は、大声をあげて絶叫した。
それもそのはず、この新入生全248名分を普通に作るというなら確実に夜が明ける。
がー…
「そーらよ!!」
パキィーーン!!
突然部屋全体が強い閃光のような光に包まれたかと思うと、学園長の手には、総勢248人分のくじ引きが握られていた。
「さあ!! 引きたまえ!! 安心せよ!!どの部屋も造りはほぼ一緒だ!!」
信じられない物を見てしまった、いかに高名な魔導師と言えど、一瞬で物質を生み出し平然としてられる者など、世界に片手で数えられる位しか居ないであろう。
「なんか……すごい人だよね、あの学園長」
どうやらエリルも同じことを考えていたらしく、僕に声をかけてきた。
「本当にね、性格もメチャクチャなら、その魔力の膨大さもメチャクチャみたいだ……」
そんな事を話してるうちに僕達が引く番が回って来たので、あまり深く考えず、適当にくじを引いた。
どうやら僕はD1437と書かれた棒を引いたようだ。
(D1437か……これが部屋番号かな?)
とりあえず相部屋の人を探そうと動き始めた時、不意にエリルに声をかけられた。
「あ!? ヨシュア!! 何号室だった?」
僕が振り向くと、満面の笑顔で僕の部屋を問いかけてきた。
「あ、えとー…D1437号室かな」
それを聞いたエリルは、驚いた様子で口を両手で塞いだ。
「ホントに!? わあー! スゴいねボクたち!! 部屋も一緒だよ!!」
そう言ってエリルは嬉しそうに僕と同じD1437と書かれている棒を僕に見せた。
「え!? あ、本当だ……」
それを見た僕も、驚きながらエリルの棒と僕の棒を見比べた。
「それじゃ、ヨシュア!! 改めて!! これからよろしくね!!」
「うん、よろしくっ!!」
エリルの満面の笑顔に返すように僕も笑顔で頷いた。
「では、各人行き渡ったな? では、これより、部屋へ向かう。 しっかり付いて来たまえ」
****
学園長の引率の下、複雑な階段を幾つか登ると、扉が羅列したフロアにたどり着いた。
「サア、ここが君達の部屋だ。各人、自分の棒に書かれた部屋に入るがよい!! それではお休み!! 明日を楽しみにしているよ!!」
ヴォン
そう言い残すやいなや、学園長は早々に転移魔法のようなもので姿を消した。
「じゃあ、入ろっか」
僕はエリルにそう提案すると、エリルも頷いたので、ドアノブに手をかけて扉を開け放った。
「わぁ~すごく広いんだね!!」
最初に声を上げたのはエリルだった。
そして僕もその部屋を見て驚いた。
「これはすごいな……」
広い面積に部屋の中央には大きめのテーブルが置いてあり、それを囲むように長いダイニングソファーが並べてある。
そしてその横にはレンガ造りの暖炉。
例えるなら談話室のような造りになっており部屋の四つ角にはそれぞれ個室に続いているであろう扉が設置されていた。
外の配置から考えるに余りにも不自然過ぎる面積、恐らく何かしらの魔法が作用しているのだろうとあたりを付けた。
とりあえず、僕達は中央に置いてあるテーブルの横に荷物をまとめた。
「ホントにすごいね!! この学校!! ボクたち新入生にもこんな部屋を用意してくれるなんて!!」
「本当に、何から何まで予想以上だよ」全くの同意見だったので、僕も素直に頷いた。
『D1437号室、ここか……』
ガチャ-…
不意に外から声がしたので、二人で入り口の扉の方に目をやると扉き開き、青い布をあしらった白い服に青いマント型のローブを纏った艶のある黒い髪に、黒曜石のような瞳をした、少年が入ってきた。
『………』
少年は、黙ったまま僕達を見つめていた。
「なんか、凄く綺麗な顔をした男の子だね……」
それを見たエリルが、ひそひそ声で僕に耳打ちした。
「うん、本当にこんな端正な顔初めてみた……」
それを聞いた僕も、ひそひそ声で返し、頷いた。
「フン……」
しばらく僕達を眺めると、突然目をそらしそのまま手近な個室の扉に手をかけた。
「あ!? 待ってよ!! ねえ、君の名前は!?」
その行動に焦ったエリルは急いでその少年に名前を尋ねた。
「スラン・リグルス」
短くそう答えると、再び個室に入ろうとした。
「あ、ボクはー…」
「お前の名前に興味はない。 僕にかまうな」
バタン
自己紹介をしようとしたエリルの言葉を遮り、スランはそういい放つと、何事もなかったかのように個室に入った。
「う……う~ん……なんか疲れてたのかな? うん、きっと疲れてたんだよね」
エリルが、そういい聞かせるように頷いた。
「いや……断定は出来ないけど、素なんじゃないかな……あれ」
僕は見たまんまの感想を述べた。
「さて!! 次はどんな子が来るかな!? 楽しみだね!!」
どうやらエリルは、本当に気にしていないようで、次に来る人物を楽しみにしていた。
ガチャ-…
そうしているうちに最後の一人も入ってきたようだ。
「あのぅ~D1437号室はこちらでよろしいんでしょうか……」
今度は、薄紫色の髪を一部三つ編みにして後は後ろにおろしている黒いワンピース型のローブを着た、おっとりした感じの少女が、ドアに身を隠し、顔と服の一部をこちらに向けていた。
「うん!! ここがD1437号室だよ!!」
「ホッ……よかったぁ~私、方向音痴ですごく心配してたんですよ」
「あは、そうなんだ!! ボクもよく方向音痴だって母さんに言われてたんだ~」
女の子どうし、馬が合うのか、すっかり仲良しの、和気あいあいモードのようだ。
「あ!! ゴメン、自己紹介がまだだったね!! ボクはエリル・フィリ!! キミは?」
「はじめまして、私は、ソフィーナ・アルケミーですクラスはブレッシング・スピッツ、専攻は魔導師です」
ソフィーナは、丁寧な口調で自己紹介をしてくれた、先ほどのスランとはえらい違いだ。
「わぁ~専攻もボクと一緒だ!! クラスは違うけど、よろしくね!!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
ソフィーナは、またも丁寧に礼をした。
「よろしく!! こっちは、剣士専攻でボクと同じジャッジメント・シャインのー…」
「んと、ヨシュア・ウィークネス。 よろしくねソフィーナ」
僕は、出来るだけ堅苦しく無いように自己紹介をした。
「はい、よろしくお願いします。ヨシュアさん、エリルさん」
ソフィーナも笑顔で挨拶した。
「うん、改めてよろしくね」
「うん!! よろしく!! ソフィーナ!!」
自己紹介も済んだところで僕達はしばらく話し、各個室に入った。
まだ打ち解けられてない人は居るけど、なんかこの部屋も楽しそうだと僕は部屋で一人笑みを浮かべていた。