決意と覚悟 進むべき標(しるべ)
ルークの驚くべき出生を知ったヨシュア達、向かうはグランバニエールの城そこには病床に伏せりながらも温和な表情を浮かべる国王の姿があった。
魔導剣術学園物語
第11話始まります!!
それでは本編をどうぞ!!
『ルーク様、お帰りなさいませ』
見張りの兵士と思われる男性が、ルーが視界に入るや、丁寧に挨拶をした。
「ああ、ただいま」
「どうぞお通り下さい。 開門!!」
ゴゴゴゴ-…
城への入り口を覆っていた橋が城とこちらの道を分かっていた、水路にかかった。
「………」
ルーは、何もいわず前へ進み、僕達もそれに続こうとした。
ジャキン!!
「うわ!!」
突然、僕の首もとに槍の切っ先が現れた。
「キサマ等、何者だ!! ここは、グランバニエールの城なるぞ!! 不審な者を通すわけには行かん!!」
どうやら槍の切っ先は、見張りの兵士が僕に構えた物らしい。
「あ、僕達はー…」
「その二人は、俺の友人だ、通してやってくれ」
僕の声を遮り、ルーが兵士達に話した。
「は? ご友人? も、申し訳ございません!! そうとは知らず、槍を向けるなど……非礼をお詫びいたします!! どうぞお通り下さい!!」
僕の首元の槍をどかし、兵士が深々と礼をして、僕達を通してくれた。
「ふ~…びっくりしたなぁ~」
門を通り抜けるや、僕は大きな溜め息をついた。
「わりぃな、ヨッシー、ま、あいつ等もあれが仕事なんだ、許してやってくれ」
「ああ、別に気にしてないよ」
僕は特になにも意識せず、普通に会話をした。
「……俺の立場を知って、今までと同じ様に接してくれたのはヨッシー達が初めてだぜ」
「別にいいだろ? 何か変わった訳じゃないし、減るもんでもないし」
「ちげぇねぇ」
ルーも薄く笑いながら、僕の言葉に相づちを打った。
「………」
「ん? ど~した? エーりん?」
先ほどからやけに静かだと思っていたが、どうやら台風の目は、巨大な城に緊張し、ガチガチに固まっているようだ。
(しかし、グランバニエールか……確か大陸の1/4を領土とする大国で、貿易や商業、を中心とした政治展開で、大陸の顔とまで言われる国だよな-…そんな国の王子なんて、家族はおろか、民衆にも期待されてるであろうルーのプレッシャーは、どれほどのものだろう)
そんな事を考えていると、前から女性が歩いてきた。
「ミネア先生!!」
その女性を見るや、ルーは、その女性ののところに駆け寄った。
? ミネア? どこかで聞いたことがあるような……
「ルーク君、戻ってきてたのね」
「はい、先ほど戻って来ました」
ルーはミネアさんに挨拶をすると、僕達の方を向き直った。
「紹介するぜ、彼女はミネア先生、以前は俺の学術顧問をしてくれてた人で今、俺達の通ってる魔導剣術学園の卒業生だ」
魔導剣術学園をー…!? 思い出した!! ミネア・メリサーナ!! 確か、若いながらも世界屈指の知恵者と呼ばれる天才!!
「ミネア!! ミネアだってよ!! ヨシュア!! 確か世界屈指の賢者って呼ばれてる-…」
「ルーク君のお友達ですか? はじめまして、ミネア・メリサーナです、以後お見知り置きを」
興奮する、エリルに微笑み返しながら、ミネアさんは、丁寧に、僕達にお辞儀をしてくれた。
「は、はい!! ボクは、エリル・フィリ!! よ、よろしくお願いします!!」
どんな人とも簡単に打ち解ける事の出来るエリルが、目を回しながらアタフタと、自己紹介をしていた。
凄まじいな……偉人オーラ……
「初めまして、ヨシュア・ウィークネスです」
それを踏まえて僕は至って冷静に挨拶をした。
「エリルさんに、ヨシュア君、はい、よろしくお願いします」
お互い自己紹介が終わったところで、ルーが本題に入る。
「先生!! 父上の容態はどうなんですか!?」
「今は、容態が安定して、寝室でお休みになってるわ」
とりあえず、最悪の状態と言うわけではないらしく、ルーと一緒に、僕達も安堵の溜め息を付いた。
「そっかぁ~…よかった~」
「……でも、油断は出来ない。 今は落ち着いているけど、また、いつ発作を起こしてもおかしくないわ」
「………」
安堵の溜め息を付いたルーだったがミネアさんの言葉に沈黙した。
「とにかく、まずは、会って見ると良いわ、今は眠ってる状態だけど、誰かがそばに居るだけでも、少しは違うはずよ」
「わかりました」
ルーは、そういうと廊下を歩き始めた。
****
しばらく歩くと、一際広い部屋に着いた、その部屋の中央には、質素ながらもしっかりとした、趣のある椅子が置いてあった。
「ここが、玉座の間だ、父上の部屋は、この玉座より奥にある部屋だ」
ルーは、中央の玉座よりもさらに、奥の扉を、指差した。
「行くぜ」
そう言いながらルーは、玉座の裏手に回り、王の寝室に向かった。
ガチャ
そしてルーはゆっくり寝室のドアノブに手をかけ、扉を開いた。
「ん? ああ、ルーク、戻って来ていたのか? 全くアルフィムめ、ルークには、話さぬようにと言ったのに……」
広い部屋、そしてその部屋の、中央の大きなベッドには、昼間見たアルフィムさんより、少し若いおじさんが、ベッドに座っていた、その横に本が置いてあることから、僕達が入ってくるまで読んでいたのだろう。
「父上!! 休んでなくて大丈夫なんですか!?」
「おいおい、今は私とお前達しか居ないのだぞ? もっと普通に話したらどうだ?」
グランバニエール王は、ルーと僕達を見ながら、優しく声をかけてくれた。
「そんな事どうでもいい!! 親父の体は大丈夫なのかよ!?」
ルーの口調が先ほどまでの改まった口調から一転して、遠慮のない口調に変わった。
「ウム、それでいい、まあ安心しろ、とりあえず、症状は収まった」
「そっか、よかったぁ~」
ルーは、元気そうな父親の姿を見て、安心したのか安堵の溜め息を着いた。
「ところで、後ろの彼等は、お前の友達か? 私にも紹介してくれないか?」
「ああ、彼等は、俺の友人で同級生だ」
「は、はじ-…初めまひて!! ボ…ボクはエリル・フィリ!! と…ともうします……お、お初にお目にかかりま、ます!!」
一国の国王を前にし、ガチガチに緊張して、もはや何を言っているのか解らない。
「アハハ、そう緊張せずに、普通に話しなさい。 正直、堅苦しいのは苦手でね、王として玉座の間に居るときは、形式として、改まった話し方をするが、今はルークの父として、君達にとっては、友達の父親として、会話を楽しみたいのだよ」
「え? は、はい!! ありがとうございます!!」
王の優しい言葉に緊張が解れたのか、何時ものエリルらしい元気な声で挨拶をした。
「ハハハ、やはり君には、改まった喋り方は似合わない、今の挨拶の方が、ずっと似合っていて可愛らしく感じるよ」
「えへへ-…」
王の言葉にエリルは、照れくさそうに笑いながら頭をかいていた。
「うん、さて次は君だな、君の名前は?」
王は次に僕の方に視線を移し、自己紹介を求めた。
「あ、初めまして、ヨシュア・ウィークネスです」
「フム-…ウィークネス?」
国王は顎に手を当てながら何やら思案していた。
「 ? 」
その思わぬ反応に僕も思わず小首を傾げてしまった。
「ああ-…いや、何でもない。 フフ、初めまして、私はグランツ・シュナイダー・ノア・グランバニエール。 ここ、グランバニエール王国を統治している」
ノアとは恐らく現在を意味する『ナウ』を捩ったミドルネーム、ということはやはりこの人が現国王つまりルーの父親なのだろう。
その国王グランツさんは、感心する程綺麗な仕草で僕達に一礼してくれた。
「ヨシュア君は、不思議な子だね、何というか、人を引きつける何かを感じる、ルークやそこにいるエリル君も、もしかしたら君のそんな所に惹かれているのかも知れないね」
「 え? 」
「いや、何でもない、気にしないでくれ」
王は、なにやら意味深な事を話してくれたが、よく意味が解らなかった。
「さて、今日はもう遅い、城に部屋を取らせよう、ゆっくり休んでくれたまえ、それから城の中も自由に行動してくれてかまわない。 ルーク、悪いが彼等を客室に案内してやってくれ」
「ああ、わかった、親父もゆっくり休めよ」
「うむ、そうさせて頂こう」
****
僕達は、三人で王の寝室を後にして、ルーの引率の下、二階の客室の羅列したフロアに着いた。
「ここが客室だ、とりあえず、ヨッシーとエーりんは隣同士の部屋だ、俺も今日は、二人の向かいの部屋に居るから何かあったら俺んとこ来てくれ」
「ああ、わかった。 ありがとう」
「うん!! おやすみ、ルー」
そういって僕達は、それぞれの部屋に入った。
****
コンコン……
「 ? 」
広い部屋の中なかなか落ち着けずに居ると、ドアをノックする音が部屋に響いた。
「どうぞ」
ノックに対して声を発すると、ゆっくりドアが開いた。
「ヨシュア、居る?」
来訪者の正体はエリルだった。
エリルは部屋に入ると、ゆっくりとドアを閉めた。
「? エリル? どうしたの?」
「うん……なんか部屋が広くて落ち着かなくてさ、ヨシュアはどうしてるかなと思って」
エリルはやや照れくさそうに鼻の頭をかいていた。
「なるほど」
「ちょっとお話ししよ」
そう言うとエリルは、ベッドに座って居る僕の横にちょこんと座った。
「ねえ……」
「 ん? 」
「ルーは、もしかしたらこのまま-…」
「そんな事ないよ、大丈夫さ」
エリルが何を言わんとしているかを知った僕はその言葉を遮った。
「 え? 」
それを聞いたエリルは、キョトンとしながら、僕の顔を見た。
「ルーは絶対戻って来る、またあの学園に」
「ヨシュア……」
「だからさ、待とうよルーが戻ってくるのをきっと戻って来る」
「うん!! そうだよね!!」
エリルの顔に笑顔が戻った。
やはりエリルはこうでなくては。
****
(やっぱ……しっかり言わねえとな)
俺は、そんな事を考えつつ、広い城を歩いていた。
そして、遅いためか、誰もいない玉座の間の扉を開いた。
(俺は戻る、あいつ等のところへ……あの学園へ)
俺は、そのまま玉座の間を横切り、奥の部屋を目指した。
コンコン
奥にある部屋の前に立ち、その扉をノックした。
『入りなさい、カギは開いているよ』
ガチャ……
俺は、ドアノブに手をかけ、扉を開け放った。
「やあ、そろそろ来る頃だと思ったよ」
親父は、読んでいた本を置き、俺の方を向いた。
「親父……」
俺は親父をその目に捕らえながらそう呼んだ。
「親父……俺は……」
「言いたいことは解ってる、戻りたいのだろ? あの学園に」
親父は、俺の心を射抜くような鋭い眼光を発し、それに対しコクリと頷いた。
「だが、一国の王としての立場から言わせてもらうと、お前には、城に留まってもらいたい、私もこの身体だしね」
「………」
父親の言葉に対し、睨むような鋭い眼光と沈黙でそれに答えた。
「ふぅ……やはり納得してはもらえないか……」
「………」
俺は、それに対しても沈黙で返した。
「いいだろう、表に出なさい」
「 !? 」
親父は部屋の壁にかけてあった王家の紋章の入った漆黒の刀身を持つロングソードに手をかけ、一緒にかけてあった鞘に収めた。
「親父!?」
「準備が出来次第、城の中庭の中央に来なさい」
一瞬の間、そして親父の言葉に俺は自分の耳を疑った。
「な、何言ってんだよ親父!! そんな身体でー…」
「他言は認めない、準備が出来次第、中庭に来なさい」
俺の言葉を遮り、親父は、寝室から出て行った。
「……何考えてんだよ……親父-…!!」
一人残された俺は、唇を噛みしめながら呟いた。
(行くしかねぇのか)
そう心に誓うと、俺は、一旦部屋に戻り、ヨッシー達と一緒に買いに行ったファルシオンを手にして中庭に向かった。
****
「来たか……」
やはり、既に親父は中庭に来ていた。
だだっ広く、障害物の少ない中庭中央に親父は立っていた。
「親父……」
俺は親父の姿を眺めながら呟いた。
「フフ、いい顔だ、私の若い頃にそっくりだ」
親父は、いつもと変わらない、威厳を称えながらも、温かく優しい顔立ちをしながら微笑んだ。
「私に勝てたときは、お前の好きにしなさい。 だが…私が勝ったときはー…」
ここまで言ったところで、親父の視線は俺を射抜いた。
「………」
俺はそれに対し、沈黙で返した。
「……その沈黙、肯定と取るぞ」
スラァ-…
そこまで言うと親父は、漆黒のロングソード、グランバニエールに代々伝わる宝剣『黒剣 ラン・ド・グランツ』を静かに抜いた。
(『黒剣 ラン・ド・グランツ』……親父の名の由来となった剣……)
ジャ!!
俺は、そんな事を考えながら、手に持つファルシオンを抜きはなった。
「フム、それではー…行くぞ!! ルーク!!」
ギィィン!!
****
「 !? 」
エリルが僕の部屋から出て行ってからしばらくすると、外から金属同士がぶつかるような音がした。
(何だろ? 何かすかに外から剣撃音がしたような……)
バン!!
気になった僕は、部屋の両開きの窓を開け放った。
どうやらこの窓は、中庭を一望出来るらしい。
(何だ? 中庭の中央に人影が……)
僕は目を凝らしてその人影を注視した。
すると次第に輪郭がはっきりしてきた。
(な!? ルー!! いったい何やってるんだよ!!)
それを見た僕は、居てもたっても居られなくなり、側に置いてあったショートソードを掴んで、部屋を飛び出した。
「ヨシュア!!」
それと同時に後方から、僕を呼び止める声がした。
「エリル!!」
その声に反応して振り向くとそこにはエリルの姿があった。
「いま中庭でルークが!!」
どうやらエリルも、僕と同じものを確認したらしい。
「ああ!! 僕達も中庭に急ごう!!」
「うん!!」
****
「のわ!!」
ズザザザァァ!!
親父の斬撃に押された俺は、砂埃を巻き上げながら、後方に吹っ飛ばされ、木に叩き付けられた。
ヒュフォン!!
「 !? 」
そこを容赦なく黒剣が襲いかかった。
(クソ……なんとか避せたが、夜の黒剣があんなにも相手にしずらいなんて、考えても見なかったぜ……)
ズルー…
「んあ?」
ズウゥゥン!!
(マジか? 木が真っ二つに)
俺の後方で、木が一刀両断され、地面に落ちた。
「どうしたルーク、避けてばかりでは私には勝てないぞ?」
(チィ!! 本気って訳かっ!!)
親父の本気を悟った俺は地面を蹴り、前に出た。
「うおぉぉぉ!!」
ギィィン!!
(親父相手に実力差がもろに出る長期戦は不利だ!!)
袈裟斬りから凪払い、横斬りのフェイントを織り交ぜた逆袈裟。
とにかく、親父に剣の軌道読まれないように攻め余裕を与える事のない様に俺はひっきりなしに剣を振った。
が-…
ギン!! ギャン!! ガンガン!!
「-…!!」
親父は、やや力んだものの、顔色一つ変えずに俺の斬撃を捌いた。
(な!? マジかよ!! 親父の野郎、俺の連撃を全部捌きやがった!!)
『ルー!!』
「な!? お前ら!!」
俺の視界がヨッシーとエーりんの姿を捕らえた。
「よそ見をしている余裕は無いぞ、ルーク」
「 !? 」
ガッ!!
一瞬親父から目を離した隙に親父の蹴りが俺の腹に入り、再び後方に吹き飛ばされた。
「ルー!!」
(しまった!! また距離を離された!!)
「一対一の戦闘において、相手を見ずに、相手に勝てると思ってはいけない」
蹴りを受けた俺に向かい、親父は諭すように言葉を紡いでいた。
「ルー!! もうやめろ!! こんな事意味が無い勝てる見込みも見えない!!」
「そ……そうだよ!! もうやめてよ!! 親子で剣をぶつけ合うなんて!!」
ギリッ!!
「五月蝿せぇーー!!!」
ヨッシーとエーりんの声に俺は歯軋りをさせながら力一杯叫んだ。
「ルー…?」
「解ってる!! 解ってんだよ!! そんなこたぁ!!」
俺は更に叫びながら、手のファルシオンを青眼に構えた。
「でも!! でもよ!! 俺にも-…!!」
俺は一度ここで声を切り、再び親父を眼前に捕らえー…
「俺にも!! 譲れねぇもんがー…!! 通したい想いがー…叶えたい願いがっ!!」
在るんだあぁぁぁぁーーー!!!
今出る全ての声を全ての想いを巨大な言霊にして叫び、親父目掛けて突進した。
「うおぉぉぉぉ!!!」
俺は更にかけ声を上げながら、ファルシオンで脇構えから切りかかった。
「フ、流石は我が息子、頑固なところも-…な」
ガギイィィィン!!!!!
****
一瞬だった、本当に一瞬で勝負が着いた。
ルーの突進に応戦したグランツさんが、切りかかってくる一瞬の隙をを突き、ルーのファルシオンを砕いた。
そう、グランツさんの勝利だった。
「へへ……流石は師匠、俺は……親父の足元にも及んでなかったか……」
「フフ、そんな事はない、最後の一撃は私でも危なかった」
グランツさんは、やっぱり最高の剣士だ、戦った相手を讃え、自らも決して驕らない。
「でも!! やっぱりルーもスゴいよ!! あんなに必死になってでも守りたいものが有るなんて!!」
「ああ、多分僕も、そうだと思うすごい決闘だった」
僕とエリルは、口々にルーを讃えた。
「へへ……サンキュー、ヨッシー、エーりん。 んで悪かったな、せっかく来てくれたのに、怒鳴ったりして……」
ルーのお詫びの言葉に対し、僕とエリルは笑顔で返した。
「さて、決闘を始める前に約束したことを覚えてるかい?」
そんなふうに話していた僕達にグランツさんは、真顔になって、ルーに問いかけた。
「ああ、覚えてるぜ……俺が勝ったら学園に戻る、そして-…」
「私が勝った場合は、私の言うことを聞く」
グランツさんは真顔のまま、ルーを見据えていた。
「へっ……覚悟は出来てるぜ、遅かれ早かれ、俺はここに戻らなきゃなんねぇ何も不満が有る訳じゃ無いしな-…今家に戻ろうが、後で家に戻ろうが、大差ねぇよ……」
「ルー……」
それを聞いたエリルが、寂しいような、悲しいような視線をルーに送った。
(仕方がない……これがルーの覚悟、ルーの選んだ道-…僕達がそれを妨げる権利は無い)
僕もそんな事を考えながらルーを見ていた。
「良い覚悟だ、では私からの決断を下す-…」
『………』
グランツさんの厳格な面持ちに、僕達は沈黙と共に俯いた。
「-…お前は、まだまだ未熟だ。 よって、しっかりと魔導剣術学園で世界を学び、自らの目でその世界の広さをその目に刻みなさい」
「「「 !!? 」」」
グランツさんの言葉に、僕達三人は思い切り顔を上げ、グランツさんを直視した。
「まずは、しっかり魔導剣術学園を卒業し、自らの目と足で、民と国を、果ては世界を知りその苦悩と痛み、そして笑顔、喜び、心を分かち合い、その後、この城に戻りなさい、お前が国王の器に相応しい素質をその身に宿した時、私はお前に私の宝(民と国)を託そうー…」
「じゃあ-…」
ルーは、今にも泣き出しそうな目を自らの父親に向けた。
その様子を見るや、グランツさんの顔は笑みを称えた。
「戻りなさい、魔導剣術学園に、そして知りなさい、人々の笑顔と喜びをー…」
「っ!! はい!!」
ルーは、こらえ切れなくなった涙を恥ずかしげもなく流した。
「フフ、今日はもう休みなさい、明日、魔導剣術学園に向かう馬車を出そう」
「「「 はい!! 」」」
それを聞いた僕達三人はグランツさんに対し、返事を返した。
****
「やあ、三人共、夕べはゆっくり休めたかい?」
「!? グランツさん?」
城で用意された朝食を済ませ、僕達三人は城の前に用意してもらっていた馬車のところに来るとグランツさんの姿があった。
「親父!! 身体は大丈夫なのかよ!?」
その姿を見たルーがグランツさんに駆け寄った。
「ああ、どうやら私の病は、精神的なものだったらしくてね、昨晩、思い切り身体を動かしたらすっかり調子が良くなったよ。 今朝、主治医に看てもらったら、『見違えるほど容態が良くなった』と驚いていたね」
グランツさんは、笑いながら、ルーに言った。
「そっかぁ~、よかったぁ~」
それを聞いたルーは、安堵のためか大きな溜め息を付いた。
それほどまでに自分の父親の容態が心配だったのだろう。
「ルー、僕達は先に馬車に乗ってるよ?」
「うん!! ちゃんとお父さんにお別れの挨拶するんだよ」
そう言い残し、僕とエリルは馬車に乗った。
****
「ほら、二人とも行ってしまったぞ?」
「ああ、俺もすぐ行くさ」
俺はなるべく軽い口調で答えた。
「何か、聞きたいことでもあるのかな?」
「ああ、一つだけな」
親父の問に俺は短く肯定の意を示した。
「親父は最初から、俺を学園に戻すつもりだったのか?」
「ほう、なぜそう思う?」
「あの決闘の後、よく考えたら、なんか違和感があってな……」
「なるほど-…な」
親父は軽く頷いた。
「何でだ、なんでわざわざ決闘までしたんだ?」
「フフ…なに、簡単な事さ、一国の王ともなればしがらみも多い、我が子を自由にさせるにも理由がいるのだよ」
「 へ? 」
それを聞いた俺は、目を丸くした。
「王といえど、いや王だからこそ、次期国王たる我が子を自由にするのは難しい、だから私が理由を作ったのだよ、『私の息子はまだまだ未熟者のヘタレです、だから修行が必要だ』とね」
「 な!!? 」
それを聞いた俺の中で何かがぷっつりキレた。
「なんだと!! このクソ親父!! もういっぺん言ってみやがれ!!」
俺は、我を忘れて親父に殴りかかった。
「ハハハ、冗談だ」
親父は、笑いながら俺の拳を難なく避けた。
ス-…
それと同時に俺の頭に何かが乗っかる感触がした。
「だが、お前がまだまだ未熟なのは本当だ、学園に戻り、更に己を高めなさい。 お前の親友達と共にな」
俺の頭に乗ったのは親父の手だった、大きくて温かい、俺の目指す、目標とする手。
「-… へ!! 見てろよ!! しっかり卒業して!! 世界を回って!! ぜってーあんたを超えてやる!!」
そう言いいながら俺は、頭に乗っている手を握り返し、直ぐ放すと馬車に向かい走り出した。
「首洗って待っていやがれ!! ぜってー、親父を超えて、親父以上の立派な国王になってやるからな!!」
馬車に向かう途中に親父の方を振り向き、大声でそう言い放つと、再び馬車に向かい走り出した。
絶対超えてやる!! 親父を!! 世界一の男を!! そして民を、国を、全力で守護する最強の剣と盾に俺はなる!!
どうも時塔トキヤです。
宣言通り早めな更新が出来たぜ!! ひゃっほぅ~~~!!!
コホン-…すいませんテンション上がってました。
さて、今回は前作とは違いあまりリメイク無しで投稿しました。
面倒になったんじゃないよ?ホントだよ?
まあ、話しの流れ的に特に手直しする部分が比較的少なかっただけですが-…
さて今回のお話も実は前サイト様では文字数の関係で2話分に別れていた物を結合したものです。
もはやこの手法がテンプレ化してきてるような-…気のせいですよね。
そして、この話を持ちまして僕のコピー元としていた前サイト様がサービス終了となってしまいました。
よって次話からは、話の大筋こそ変えませんが文章はほぼオリジナルとなります。
では前サイト様に感謝の意を示すとともに今回はこの辺で筆を置かせていただきます。
それでは!! 待たれや次回!!