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1 どうせよくあるおとぎ話なら

いきなりのこの長さ。

「ジャックー!みてー!」


花畑の上でクルクル回りながら彼女は言った。よくよく考えると花がかわいそうになってきた。

「何でしょう?プリンセス?」

そう言うと、彼女はぷっくりと膨れて


「昔みたいにジェーンって言って!」

と怒った。可愛い怒り方をしないでほしい。


「そんな恐れ多いこと私はいたしませんよ」

よそ向きスマイルで言う。


「言葉遣いまで!前まで俺って言ってたくせに!も~!ジェーンって言わないとくすぐるよ⁈」

も~のあたりで飛びかかられ、ジェーンって言った時にはもうくすぐられていた。


花畑の上で押し倒された俺は必死に訴えたが、

「やっやめてくださいよ!くすぐったいですよ⁈」


「だってくすぐってるもん。」

そりゃごもっともなことで。


「だいたいジャックが敬語を使うなんて変よ。だからさっさとやめなさい~!」

こう言ってすぐ、よりいっそうくすぐられた俺は


「わかったからジェーン!くすぐるのをやめてくれ!」

ニンマリと満足気に笑った彼女は飛び起きると大きい声で私の勝ち~!と言った。

ちょっとイラっとくるな。


花や花びら草などを払いながら立ち上がる。

あーあーこんなに潰れちまってかわいそうに(自分のことは棚にあげている)



他の護衛達は一連の出来事に見て見ぬ振りをしてくれている。

感謝だな。


「やっぱジャックはこうでなきゃねー!」

と言いながらダイナミックに抱きついてくる。(つまり飛びついてきた)そしてそのまま倒れた。



ああ、これはほんとに感謝だな。

ばれたら俺の首はすぐに吹っ飛ぶだろう。






今、俺の身体の上で俺を叩きながら笑っているのは




この国の第二王女



つまりはプリンセスだ。



そして俺は国王軍の下っ端



ただの兵士にすぎない


俺とジェーンが何故仲がいいかというと長くなるので言わないがようは腐れ縁の一種だ。



ジェーンは国民から絶世の美女だの、神が二度見するほど綺麗だなんだと言われているが、俺に言わせりゃただのおてんば娘だ。

もっと言えば、俺だったらそんな綺麗なのじゃなくて外見と性格がちぐはぐで生まれた神のいたずらって名付けるね。





俺は.....前髪が長めということ以外は普通の兵士だ。いや....同期の奴らはさっさと出世してるから落ちこぼれか。




王女と仲の良いただの兵士ってことで兵士仲間や侍女たちには少し有名だ。

なぜ仲がいいのかと聞かれてテキトーに話したら(酒も入ってる)俺は昔ジェーンを助けた人の一人息子ということになっていた


まあ、実際あんま小さいころの記憶もないしこだわる理由も見つからなかったから訂正しなかった、その話がどんどん広まり今に至る。「お前ジェーン様が好きなんだろう?」という質問は今までたくさんされてきたからもう答えるのもめんどくさい。








ジェーンは俺を好きだと言った。


もう去年のことになる。



「ジャックあなたのことがすごくすごく好きなの!ずっと前から。」

そう言った


確かにずっと一緒に居た。たぶんジェーンは友を好きという気持ちと恋の好きを間違えたんだ。いや、家族を好きというのとかもしれない。ジェーンは子供だ。無理もない。だから



丁重に断った。



二ヶ月くらい口もきいてはもらえなかったが


彼女も自分の身分をようやくわかったようで、あの日以前と同じように接してくれている



ジェーンはようやくプリンセスとしての自覚を持ったかと思っていたが、あんまり持ってはないらしい。(例えば、これがばれたら俺がどうなるかをよく分かってないため)


「ジャック!これあげる!アハハ!」


俺の頭にさっき作ったであろうお花の冠を載せる。


アハハ。なにこのイジメ.......


「かわっ.....いいよ!!!」

笑いをこらえている。


ムカつくな.....!



オレはそこら辺にある花をぶちーん!ととり。



ジェーンの顔の横に花を添える。


「こういうのは女のが似合うんだよ。ほら可愛いじゃねーかよ」


「わかってないね。女の子が可愛いって言われてうれしいのはただ一人、好きな人だけよ。ただの幼馴染に言われてうれしいなんて思ってるって考えてるわけ?」


「思ってねーよ。んなことは」


「っそ。ならよかったよ~っだ。」

俺の回答が意に添わなかったらしくぶすりと怒りながら言う。ちくしょう。可愛く怒んなよ。


「お前はプリンセスなんだぜ?お姫様なんだからな?こんな一介の兵士に『可愛い』って言われてうれしがってるようじゃ駄目なんだよっと!」

言いながらジェーンの肩を掴み自分から離すようにしながらすっくと立ち上がる。


「知ってるよ...それくらい...」


「分かってるならいいんだよ。......ほらお前も立てよっ!」

手を差し伸べる。


ジェーンは俯いて何かを呟いたけど風のヒューっていう音にかき消されてよく聞こえなかった。


そのことに気を取られた次の瞬間ジェーンは俺を強く引っ張って立った。反動で俺は地面に頭から突っ込んだ。


ズシャアア!


「アハハ!引っかかったね!」

派手に転んだ俺を振り返って笑った。


「ジェーン!なにすんだよ!」


「ごめん!そこまで派手に転ぶだなんて思わなくて.......」

ジェーンはすまなそうに手を差し伸べた。なんだか言葉に違和感を感じながらも素直に手を掴んだ

「あぁ......大丈夫ァ!!」

次の瞬間ジェーンが俺の手を勢いよく引くと反動で俺は反対にずっこけた。

「ジャックは進歩しないよねー」


「今のはジェーンが嵌めたんだろ⁈」

クルっと座ったまま反転して抗議する。


「なんのことかな~⁇」

相手はプリンセスだった。

不覚にも忘れていた。


「あのなぁ........」

言い返そうと口を開いた時


「お取り込み中すいません!!ですが、国王が今日、こちらにいらっしゃるという伝令がきましたので!失礼とは思いますが報告にまいりました!」

一応後輩になる(俺は落ちこぼれなので階級は一緒)兵士が報告にきた。..........余計なことを言いやがる。



国王とはつまりはジェーンのお父さんということだ。


滅多にこっちになど来ないのに。


............言い忘れていたが、ジェーンは本城とは離れた別塔で暮らしている。歩いて10分という近さだが、国王は歩くわけにもいかずわざわざこの距離で馬車を毎回はしらせるのは面倒だからかあまりここへは来ない。二週間に一度来たらいいほうだ。しかも、いつもはくる日の前日までには知らせがあったのに。



急な知らせなのだろうか?

ジェーンに急な用事とはなんだろうか?



国の危機とかじゃないだろうな?そうだとしたら大変だな


などと見当違い(・・・・)もいいとこな事を考えていた。


遠くから馬のパカパカという音が聞こえてきた。



俺たちは慌てて準備し始めた。ジェーンはすっと背筋を伸ばし、顎をひいて、前を見据えた。俺はすっと後ろに下がりながら草花を払い、草の王冠は目立たない場所に置いて、手を横にピッタリとつけて、気を付けの姿勢をとった。



パカパカという音に何時の間にかカランカランという車輪の音が加わっていた。


馬車の車輪が容赦なく花をなぎ倒しながら、俺たちのすぐそばに止まった。



ガチャリとドアが開いた

出てきたのは長身で白髪の目つきの鋭いおじいさんの風貌をした威圧感の半端ない人だ。だがしかしこの人が国王ではない。この人は国王の補佐官のような役割の人でレーバスさんという。


そしてレーバスさんに続いて出て来たのが正真正銘のラグーダ王国の国王、


サラグド・ラ・リガー・ザッフェルⅢ世


覚えにくいのでこれ以降はザッフェル国王とする。ちなみに

サラグド・ラ・リガー・ジェーン

というのがジェーンの本名だ。

まあ、これからもジェーンにするので関係はないかもしれない。


国王は金髪で深海のような青い瞳。それと腹がどーんと突き出している。レーバスさんよりかはやわらかな印象を受けるが、ザッフェル国王のが実際は恐ろしい人なのだと思う。


「いきなり来てすまないね。大切な話があるんだが、今夜の夕餉は本城に来てくれないかね?」

ザッフェル国王は降りてすぐにジェーンを優しい目で見ながら言った。


「ええ。もちろんです。............しかし、大切な話とは?」


「...........ここで話すのは憚れます、国王。」

その大切な話の事を知っているらしいレーバスさんは横からザッフェル国王に助言した。


それを聞いたザッフェル国王は

「............そういう事なのだ、ジェーン。ジェーンなら分かってくれるね?」


どうでもいい話だが、親が子どもを諭すために「分かってくれるね?」というのはズルいと思う。答えは一つしかないじゃないか。大人の言葉に雁字搦めにされているように思える。まあ、俺にはもう長いこと両親がいないので、言われた子供の気持ちがハッキリ分かるわけじゃないなのだが。


暫しの沈黙の後、やはりジェーンは俺の予想通り

「分かりました。」

とだけ言った。



「おや、ジェーン。花が髪についているよ。」

そう言ったザッフェル国王はさっき俺がジェーンの顔の横に添えた花を取り地面に捨てた。その花は地面に生えてた草花に紛れてしまった。


俺の自意識過剰なのかもしれないけど、ジェーンが一瞬眉間にシワを寄せた気がした。花ぐらいいくらでもやる。だから、そんな顔すんなよ.....。


「ジェーン。今回は誰か(・・)連れて来てもいい。」


これは......


「.........それではアルスを連れて行きますね」

ジェーンは『国王が来る』と伝令にきた兵士を名指しした。


「非常に申し訳ないのですがジェーン第二王女、アルス兵士には本城にて用事(・・)があるのです。ですから付き人は..........そこのハーホルン君じゃ駄目ですかな?」



やっぱ御指名か。

ジョン・ハーホルン

それが俺の名前。(ジャックは愛称)


有名な方じゃないけど、城に仕える奴なら知らない奴はいない.........ぐらいだ。



わざわざ俺に階級の違いを見せつけたいらしい。


実は、ここまでの流れで今日の話が何のことだか想像がついてしまったのだ。


ジェーンは今年で16歳になる。


おかしくないのだ。


もう子供じゃない。



ジェーンが了解の意を伝えると、ザッフェル国王とレーバスさんは馬車にさっさと乗り込んだ。乗り込んだ後、何かを思い出したらしいザッフェル国王はちょいちょいとジェーンを手招きした。馬車越しにザッフェル国王がジェーンに何かを話すとジェーンは少しびっくりしたような顔をした。


残念ながら、何を話していたのかは聞こえなかったので何にジェーンが驚いたのかはわからなかった。



伝えてすぐ、馬車は本城へと出発した。走り去る馬車を見送ったジェーンは何かを悟ったようにも見えた。


馬車が見えなくなると、ジェーンは深い深いため息をついた。

ジェーンにもさっきの話が何のことだか容易に想像がつくらしく、きちゃったかと小さくつぶやいた。


きちゃったか..............


ジェーンの相手はどんな人なんだろう。












私は頭を抱えた。


“綺麗な服を来ておいで”



去り際に父様は確かにそう言った。



知らせなどではない。


見合いのようなものではないか。


特別な人と会う、だから綺麗にして来なさい。



そんな声が聞こえてくるようだ。







ジャック。サヨナラは近いみたい。

この長さは私にしては珍しいんじゃないかと思います。


ご指摘等、ありがたく受け取りますので感想を気軽にどーぞです!

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