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天国か地獄か 2

 ベッドから飛び降りると、わき目もふらずに狼さんの側に跪き、その柔らかそうな首にがしっ! と抱きつく。

 狼さんがぎょっとしたように体を硬くしたのがわかったけど、そんなことはまったく気にしない。


 「良かった…! 本当に良かった、狼さんも無事で…!」


 抱きしめる狼さんの体がほわほわであったかくて、本当に生きてるんだっていうことを実感させてくれる。 

 ぐしぐしと零れそうになる涙と鼻水を狼さんの毛皮で拭きそうになり、慌てて顔を離すと、あの綺麗な瞳とぶつかった。

 …本当に、吸い込まれそうな、綺麗な瞳だぁ…

 じっと見つめる私に狼さんは居心地悪そうにしていたけど、私の目のふちに溜まった涙に気がつき、ぺろっと、ひと舐めしてくれる。と、同時に驚いたような声が後ろからかかる。


 「…相模、あなた何してるんです?」

 「べ、別に…っ、他意は、ない」


 ぬな?

 今、どっから声が聞こえたの…かな?

 挙動不審に首を巡らせる私に、ふぅとため息をついたのは、

 「俺だよ」

 え、えと?

 今、狼さんの口が開いて、そっから音が出てきたような気がしたんだけど…?

 じっと狼さんを凝視すると、もう一度、彼は口を開き、

 「しゃべったのは、俺」

 

 え、ええぇぇぇえぇえええーーーーーーーーっ!?!?


 あまりの驚きに、しゅぱっと身をこなして狼さんから離れる。

 その瞬間、狼さんは確かに悲しそうな顔をして、それが正面にいた私にはわかって。

 途端、ものすごい罪悪感が体中を走る。私は慌ててもう一回狼さんの体を抱きしめると、早口にまくし立てた。


 「ち、違うのっ! 気持ち悪いとか、そんなこと思ったわけじゃないの! ただ、純粋にびっくりしただけなの…っ!!」

 うわーうわー、助けようとしてくれた人なのに、なんて失礼なことをーー!

 ごめんなさいごめんなさいと、必死に謝罪を繰り返す私に、強張っていた狼さんの体は少しずつほぐれていって、ほっとしかけたのもつかの間、もうたまらん! というように、後ろから盛大に噴出す声があがる


 「…ぶふっ、く、くっくっく…も、もうダメ…っ」

 あーっはっはっはっは! と遠慮しない笑い声が室内に広がり、流石の私もむっとして、狼さんの体を離すと、体を反転させる。

 一言文句を言ってやろうと口を開きかけたとき、金茶の長髪さんは、

 「相模が人間だってことも、忘れたのか?」


 あれ?


 意地悪な色を含んだその言葉に、ぎぎぎっと首を動かして改めて狼さんを見る。

 なんとなく、狼さんの目の下あたりが赤いような気がするのは、きっと私の妄想よね…?

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