天国か地獄か
んむ…
まぶたの裏に日差しを感じて、私は思わず声を漏らす。
すると急に周りがざわざわし始め、遠慮がちに肩を揺すられた。
あれ…、私、自分の部屋で眠ってるんじゃ…? お母さん…?
にしても、声かけないなんておかしいなぁと思いつつ、重いまぶたを必死でこじあけると、そこには見たことのない男性が3人も!
「な、なななななっ」
3人が3人とも、個性は違うもののすっごいイイ男で、なんでこんな人たちに寝顔を見られてたのっ!? とパニック以前に怒りゲージがぎゅん! と上がる。
どっから入ってきた!? と怒りまかせに口を開こうとしたら、薄茶のさらさらな髪に、柔らかな微笑をたたえた美男子さんが、ほっと息をついて、
「良かった。このまま目を覚まさなかったら、どうしようかと思っていたんですよ」
その言葉に、自分に何が起こっていたのかをようやく思い出す。
そうか、私空から落っこちたんだっけ…? あれ、じゃあここは天国? 地獄? イイ男いっぱいだから、やっぱ天国? ううむ?
なぁんて、アホなことを考えているのが顔に出たのか、ちょっと長めの金茶な髪を後ろで無造作に結んだ、つり目のこれまたごっつぃイイ男さんが、
「まったく状況わかってないみたいだな、口開きっぱなし」
と、ちょっと意地悪そうのたまってくれた。
「あの高さから落ちたんだ、生きてると思わないだろう? 普通」
すかさず、3人の中で一番年上と思われる、眼鏡が知的な印象の男性がフォローしてくれる。
うん? なんかこの会話の流れだと、ひょっとして…?
眉を八の字にして困惑を表している私に、薄茶髪の人がにっこりと、
「大丈夫、信じられないかもしれないけど、君はちゃんと生きてますよ」
え
「あの状況で? 生きてるっ!?」
私はすぐにはその事実を受け入れられなくて、寝かされていたベッドから起き上がると、ぺたぺたと自分の腕や足を触って確かめる。
確かに、体温は感じるし、足がなくなってるなんてこともない。
ほ、本当に生きてるの…?
そう、安心しかけたとたん、何よりも大切なことを思い出した!
私は一番そばにあった金茶の髪を少々強めに引っ張ると(失礼)、
「そ、そうよ! あの狼さんは!? 助けようとしてくれた狼さんは無事なのっ!??!?」
いきなり大きな声で叫びだした私に、髪を引っ張られた彼は眉をしかめて、ん、とある方向を指差した。
顔を向けると、部屋の隅にちょこんとお行儀よく座っている狼さん。
ああ、生きてたんだ! 無事だったんだ!
感極まった私がとった行動は、あとから考えればとっても軽率だったのよ…ね。