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天国か地獄か 7

 立原さんの時は、ゆるゆると体の組織が再構成されるような感覚だったけど。

 巽さんの場合はもともとの質量が大きいせいなのかなんなのか、一度ぎゅうっと体が圧縮されて、瞬きほどの時間の後には、シーツに包まった素敵な男性がそこにいた。


 もちろん、裸で(もういい加減にして欲しい)


 そんな乙女の内心などまったく気にかけることもなく、変身は疲れるのか、巽さんは一度ほっと息をついて、髪をくしゃっとかき混ぜると、私に視線を合わせ、

 「…決まりだな」

 腰にくる素敵なバリトンボイスで呟き、

 「方法は仕方ないとして、変身をコントロールすることができるのはとても助かりますね」

 嬉しそうに羽音さんが応えていた。

 

 決まりって、決まりって!?

 私がキ、キスすることで、変身するってこと…?


 うわあぁああぁ…、とパンク寸前の頭を抱えて、私が悶えていると、結城さんが実に不愉快だ、という視線を私に投げ、

 「おい、おまえ」

 「え?」

 急に呼ばれて視線を絡めれば、ぐいっと腕を取られてそのまま引っ張られる形でどこかに連れて行かれそうになった。


 「あ、あの…っ?」

 「叉那江?」

 突然の行動に驚いたらしい巽さんの言葉に振り返りもせず、

 「研究する」

 何をっ!?

 私の戸惑いも無視して、ずんずん歩を進める結城さん。

 「あ、あのっっ! 研究って…っ?」

 必死になって連れて行かれないように抵抗するものの、足の長さの違いもあって、うまく踏ん張れない。

 仕方ないので口で静止をかけるものの、ちっとも言うことを聞いてくれない。

 もう! なんなのようぅ! 研究って…ま、まさか人体実験っ!?

 やだあぁああ!!


 ずるずると引きずられる私。頭の中は恐ろしい実験があれやこれやと思い浮かび、どうしていいのか判らなくなっていたところ、さっと手を伸ばして結城さんの腕を掴んでくれたのは、立原さんだった。


 「放してやれよ。怯えてんだろ?」

 あの初めての出会いの時といい、なんていい人なんだろぉ~~

 私は感謝と尊敬の眼差しで立原さんを見つめる。

 でも、結城さんにはちっとも通じないらしく、私の腕を掴む力はちらとも怯まず、


 「安定的に得られる力なのか。他の方法で代用が効かないのか。…調べておくに超したことはない」

 「確かにそうだけど。…こっちの事情に巻き込んでおいてなんの説明もなしかよ?」


 2人のやり取りを横で聞いていて、そういえば碌な説明も受けていなかったことに改めて気がつく。

 異常な事態の連続に、正しい判断力が失せていたらしい…。

 いつものことかもしれないけどっ


 こうなったら、とことん説明してもらおうじゃない!


 「結局、皆さんは何者なんですか…?」

 私は意を決して、目の前で睨み合っている2人に声をかけたのだった。


 

 

 

 

 

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