第2章:1. 残酷な末期の決断と、筆先による胸を刺すような断捨離
闕恆遠が【五重奏物語】をプラットフォームの名称と定め、様々な異なる平行世界やジャンルへの挑戦を始めた時、彼の視線はまず、緊迫感あふれる学園ゾンビの終末世界スタイルへと向けられた。
彼によって《終末の診断処方箋》と名付けられたこの作品は、執筆の初期段階において、実は相当に壮大で緻密な計画を秘めていたのだった。
物語の構想において、背景は民国114年(令和7年)の授業開始からちょうど一週目が過ぎたうだるような暑さの秋の日に設定されていた。突然発生した謎のウイルスが、一瞬にして中部にある医学大学のキャンパス全体を文字通りの地獄へと呑み込んでしまったのだ。
計画されていたストーリーの構造は非常に明確だった。五人の固定された主角――闕恆遠、悦清禾、伊凝雪、千慕羽、そして玥映嵐は、災害が発生したその時、偶然にもキャンパス内の異なる一角や各学部の校舎に散らばっていた。
男主角である闕恆遠は、この四人の幼馴染たちを救い出すという使命を背負い、医学大楼(医学棟)を出発点として、茹だるような暑さと血に染まったキャンパス全体を命がけで横断し、薬学部や看護学部といった異なる校舎に散らばるヒロインたちを一人ずつ探し出していくことになっていた。
この作品にリアルな圧迫感を満たさせるため、彼はあえて九月のうだるような息苦しい暑さや、汗がシャツを濡らすねっとりとした不快感、そして空気に満ちた漂白剤と血の匂いを、細部にわたって緻密に描写した。
しかし、計画は常に感情の衝撃に追いつくものではない。
物語が第四節から第七節へと進んでいくにつれ、ストーリーは情け容赦なく最も核心的な転換点へと突き進んでいった。男主角は計画通り、自分から最も近い看護棟へと向かい、まずはあの春のように温和な悦清禾を探さなければならなかった。
だが、廊下で彼女と再会したその瞬間、待ち受けていたのは生存の喜びではなく、あまりにも残酷な光景だった。
悦清禾はすでに見る影もないゾンビへと変異しており、腐敗と冷酷な気配をまといながら彼へと襲いかかってきたのだ。
物語におけるリアリティの設定と生存本能のもと、男主角は身も引き裂かれるような痛みを覚えながらも、自らの手で刃を振り上げ、心から想い続けていた幼馴染に断腸の思いでトドメを刺さなければならなかった。
この一節がキーボードを通して一文字一文字打ち出された時、現実世界の闕恆遠は完全に精神的崩壊を起こしてしまったのだった。
半夜の一時過ぎ、深夜の静寂は彼の抑えきれないすすり泣きによって打ち破られた。
これは自分が空想したフィクションの物語ではあったが、あまりにも重い真実の感情や大切に想う気持ちを投影しすぎていたため、自分の手でこの場面を書き記した瞬間、まるで心の中で娘や最愛の人ほどに大切に思っている悦清禾を、自分の手で殺してしまったかのように感じられた。
その何とも言えない罪悪感と、胸が張り裂けそうなほどの痛みが、激しく彼の喉元を締め付けた。
パソコンデスクの前に座り、彼は画面に描き出した生々しい血塗られた光景を見つめながら、その胸元には強烈な窒息感がこみ上げ、息が詰まってまともに呼吸もできないほどだった。
この《終末の診断処方箋》がもたらした精神的なプレッシャーと感情的な苦痛は、彼の耐えられる限界を遥かに超越していた。
そしてついに、深夜の涙と極限の苦しみの中で、闕恆遠はある決断を下した。
彼はそのドキュメントをそのまま閉じ、封印し、多大な心血を注ぎ込んだこの終末の大作を、断腸の思いで完全にボツにしたのだった。
この度の挑戦は、再び打ち切りという形で幕を閉じたものの、文字が持つ強烈なまでの貫通力を彼に深く痛感させることとなった。
創作者がすべての感情をそこに注ぎ込む時、ペン先から紡ぎ出される一つひとつの死別や別れは、まるで現実の魂を切り刻むような過酷な拷問に等しかった。
残酷に打ち切られたその《終末の診断処方箋》は、こうして闕恆遠の心の中に、しばらくの間は癒やせそうにない深い感情の傷痕を残したのだった。
温和な悦清禾を廊下で自らの手によりゾンビへと変貌させ、絶望の中でトドメを刺したその過程は、彼にとってただ小説を書いているのではなく、まるで現実の魂を引き裂かれるような苛烈な苦行そのものだった。
ドキュメントを完全に封印したその夜、彼はベッドに横たわりながら、目を閉じるだけで、あの熱気と窒息感に満ちた廊下の光景と、いつまでも頭から離れない感覚がまざまざと蘇ってくるのを感じていた。
このような自虐的なまでに感情を圧迫する状況は、彼に今すぐ気分転換をしなければならないということを痛感させた。
「もうこんな、自分を憂鬱に追い込むようなストーリーなんて書けない……」
それならば、重苦しい終末もののように創作者の気力をすり減らすのではなく、いっそのこと筆の向くままに思いっきりはっちゃけ、少し気楽で、おふざけや不条理なユーモアを交えつつも、五人が引き続き異世界で共に戦い続けることができるような、全く新しい物語を書いてみたらどうだろうか。
こうして、まったく新しい異世界での旅行と金稼ぎをテーマにした物語が、彼の脳内で密かに形を成していった。
この新しい作品を構想するにあたり、闕恆遠がまず直面したのは、ネット上にあふれ返っている「チートシステムもの」というありふれた定番パターンだった。
世に出回る多くの異世界小説では、主人公は最初から理不尽なほどの無敵システムを手に入れるか、あるいはどこでもチートを使える最高レベルのアーティファクトを身に帯びているのが常だった。
だが彼の目から見れば、そうした論理性の欠片もない無敵設定は退屈で面白みに欠けており、主人公が脅威を感じないほど強くなってしまえば、物語そのものが持つ緊張感や探索の価値も失われてしまうのだった。
「もしシステムを使わないなら、どうやって異世界で生き残るっていうんだ?」
試行錯誤を重ねた末、彼はどこか懐かしく、そして少しばかり不条理な現代のハイテク道具――スマートフォンを導入することを決意した。
五人がそれぞれスマホを手に持って異世界へと転移するわけだが、そこから新たな問題が浮上してきた。この五台のスマホの機能は、すべて同じものに設計すべきだろうか? それとも、一人ひとりが解放する専用の機能は完全にバラバラであるべきだろうか?
もし異世界において、ある者のスマホはマップナビであり、ある者のスマホは資産換金であり、また別の者のスマホはアイテムボックスや通信回線であるならば、このように分業し、互いに依存し合うサバイバル形態の方が、一人の力で無双するよりもはるかに面白くなるはずだ。
だが、王道な転移ものの始まりには、往々にして長ったらしい召喚の儀式や女神との対話、あるいは無駄な説明ゼリフがつきものであり、読者もとうに飽き飽きしているはずだった。
このマンネリ感を打ち破るため、闕恆遠は冒頭から徹底的なおふざけをやらかすことに決めた。
大げさな神殿での召喚などいらないし、のんびりとした順応期間も不要だ。
物語の潔い幕開けとして、五人の主角――闕恆遠、悦清禾、伊凝雪、千慕羽、そして玥映嵐が、どこまでも広がる異世界の青々とした草原の中で、同時に目を覚ますという設定に直接飛び込んだのだった。
最も滑稽なことに、彼らが目を開けた時、その身体はなんと「一糸まとわぬ」全裸で登場したのだった。
華麗な冒険者の装備もなく、初期の強力な武器やアーティファクトもなく、ただ各自の傍らに、バッテリーがフル充電され、画面がかすかに光を放つスマートフォンが静かに転がっているだけだった。
その光景を想像してみてほしい。
そよ風が果てしなく広がる緑の草原を吹き抜け、遠くには正体不明の異世界の巨大獣さえもがのっそりと歩き回っているかもしれない。
そんな中、すっぽり裸の現代の男女五人が、こうして顔を見合わせながら呆然と草地から起き上がり、片手で恥ずかしい部分を隠しつつ、もう片方の手で傍らに落ちているワケのわからないスマホを覗き込んでいるのだ。
この極度なギャップによる羞恥心と不条理な幕開けは、先ほどまでの重苦しく抑圧されたゾンビの悲劇感を一瞬にして吹き飛ばしてしまった。
闕恆遠がキーボードを叩きながら、この悪趣味さと生活感に満ちたオープニングを生み出した時、思わずパソコンデスクの前で吹き出してしまった。
これこそが、今の彼が求めていた創作だった。過度に深刻になる必要もなければ、心を痛めつける必要もない。この五人が一緒にいる限り、どんなに不条理な絶境に身を置こうとも、それぞれが持つ独特の性格やツッコミによって、思わずクスリと笑ってしまうような化学反応を巻き起こすことができるのだ。
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