第14話 ご近所付き合い?
遅くなりましたが、なんとか一週間以内です。
あと、今回の話はR15……だと思います。たぶん。相変わらず婉曲表現オンリーですが。
コクとタルムのそれぞれの自己紹介が終わり、その後はハクが起きるまで雑談をして過ごすことになった。
話していくうちに、互いの家の位置がそう遠くなく、"ご近所さん"であること、言い様によっては"お隣さん"であることも分かってきた。"お隣さん"と言うのはコク達の住んでいる地域には家があまりないため、それぞれの家の距離は相当あるのだが、間に家を一軒も挟んでいなかったからなのだが。
話題は家のことから移り、二人の唯一の共通する知人であるハク――こう表現するにはコクとハクの関係はいささか不適切だが――のことになっていった。
タルムはコクの手にはまっている黒い腕輪をちらりと一瞥して、言う。
「あんた、ハクの主なんだろ」
「はい。これですか」
コクは気まずそう苦笑いをして、その黒い腕輪を挙げる。
「あぁ。それで、ハクはどうだい?」
コクはその問いかけに何と答えるべきか戸惑う。無茶ばかりしているから心配だ、と答えようとしたが、それはハクの主の回答として不適切なのではないかと思い留まる。
「……どうしたんだい? 難しい顔して」
「いえ、なんでもありません」
微笑を作り、応える。
ハクにも注意されていることであるし、ここは主として回答すべきなのだろうが、ハクを奴隷として見ていないコクには荷が重い。何を答えればいいのか分からないのだ。やはり、正直に答えるべきなのだろうか。
「あの、さっきの答えなんですけど」
「ああ、それで?」
「どうかと言われても、俺は正直なところ奴隷ってモノにそんな詳しいわけじゃないですから、よく分からないんですよね」
「確かに、実際あたしも奴隷が何をどこまでするのか、とかは知らないんだけどさ」
「そうですか……」
コクは内心で『考えて損したな』と呟き、その影響なのか表情は不満そうなものになっていた。
タルムはばつが悪そうに苦笑しながら言う。
「やることの限度を決めるのはあんただから、やっぱりあんた次第なんじゃないのかね」
「そうですよね。……俺個人の考えとしては、ハクは一人で抱え込んで働きすぎだとは思うんですけど」
「あの子は真面目だからねぇ」
遠い目をして、独り言を呟くように言う。
まるでハクのことを前から知っているかのようなタルムの態度に、コクは疑問を抱いた。確か、昨日が初対面だったと言っていたはずだが……。
「タルムさんって、ハクとは昨日が初対面なんですよね」
「ああ、そうだけど。どうかしたのかい?」
「いえ、ハクのことを前から知っているような話し方だったので」
タルムは怪訝そうに眉をひそめた後、先程のことを思い出したようで愛想笑いを浮かべた。表情の変化の間に一瞬だけ気まずそうな顔になったことをコクはしっかりと確認していた。
「昨日会った時に『何よりもまずは主を優先する』って態度をとっていたからね、あの子。てっきり生真面目な性格だと思っていたんだが、違うのかい」
「いえ、合っています」
話さないのには相応の理由があるのだろうと思い、コクは深く追求しないことにした。
「なんにしても、ハクはあんたの奴隷なんだから、あんたが無茶させたくないと思うんだったらストッパーになってやることだね。あんたの命令には逆らわないだろうし」
「えぇ。そうなんですけどね」
コクは煮え切らない表情で返した。
「何かあったのかい?」
「いつもは普通に従ってくれるんですけど、どうにも譲れない一線というものがあるらしくて……」
タルムは疑問の表情を浮かべる。コクは苦笑を返しながらハクを見つめる。
「今日のフードの件とか……取れって言ったんですけど、譲らなかったり」
「あっ。……確かに、そうだね」
「他にも、俺がハクに奴隷として接していないことが気に入らないらしくて」
二人は視線が交錯し、なんとも言えない苦笑を交換した。
「真面目なハクのことだからねぇ。まったく、真面目すぎるってのも問題だね」
「そうですね」
コクはため息と共に応えた。
「……話はそれるけど、気になったこと一つ、訊いてもいいかい」
「なんですか」
「あんた、奴隷としてハクを買ったのに、どうしてそんなにハクのことを考えてくれるんだい?」
そして、コクから眼を逸らす。
「いや、答えにくいことなら答えなくてもいいんだけどね」
答えにくいこと? と一瞬、疑問に思ったコクだったがすぐにその意味を理解する。すなわち愛玩用か、ということだ。
気付いたコクは慌てて首を左右に振って否定する。
「い、いやいやいやいやいや。違いますよ。違いますからね」
過敏な反応にタルムはかえって疑わしげな眼を向けた。
「本当かい?」
「本当ですって」
「一つ屋根の下で、二人だけなのに?」
「もちろんです!」
「……そこまで頑なに否定されると、ね」
タルムはハクを哀しげに見つめて、頭を優しく撫でた。
「この子が可哀想になってくるだけど」
「うっ」
コクは苦い表情になる。
「へぇ。意外に効果ありなのかい」
「……はい。同じようなこと、今朝言われたばかりですから」
「ハクに?」
「はい」
「ま、いいや。あんた変な気を起こさないように我慢しているみたいだけど、年頃の男だからねぇ。どうしようもなくなった時はちゃんと同意の上でするんだよ」
コクは、何故か慈愛に満ちているタルムの視線に戸惑う。
「い、いやちょっと待って下さい。俺はしませんよ、そんなハクを傷つけるようなこと」
「『俺としろ』って命令すればいいだけの話かも知れないけどね。する時はちゃんと今後のことも考えるんだよ」
「いや、だから――」
「もしもの時はあんたが面倒見てあげるんだよ」
「スルーですか!? 俺の話してるのに、俺の意見無視ですか!?」
「……ふざけるのもこのくらいにしておいて」
「出来ればもっと真面目にお願いします」
コクはジト目を向けて不満をアピールする。
「まあまあ。これで私の心配の種が一つ減った……のかね。微妙なところだけど、あんたはそれなりにハクのことを考えてくれているみたいだし、いいや。んで、話を戻すけど。あんたはどうしてハクのこと、奴隷として扱わないんだい」
「色々と理由はあるんですけどね。でも一つ言わせてもらうとすれば、俺が自分の意思でハクを買った訳じゃないんですよ」
「そうなのかい? あたしはてっきり、あんたがそういう年頃だから………ねぇ?」
「いやいや、俺に同意を求めないでくださいよ。そもそも俺、どうしてハクが俺の奴隷になってるのか、すら知らないんですから」
「は? あんたの親が買ったんじゃないのかい?」
「いやいや、違いますよ。……俺が記憶喪失って話しましたよね」
「あぁ。そんなこと言ってたね」
「そんなことって……そんなに軽い事実でもないんですが。はぁ……ま、いいです。それで、俺は記憶を失って、気付いたらハクがいたって感じです。ハクに訊いてもよく知らないって言うし」
「なんなんだい、そりゃ? わざわざ奴隷買ってあんたに与えて、買った奴に何の得があるって言うんだい」
「俺だって知りたいですよ……」
「ごもっとも、だね」
そう言ってタルムは笑い、コクは深いため息を吐くのだった。
雑談だけで一話が終わってしまった………
なんか、すみません。
次話投稿についてなんですが、8月の終わりごろか9月の初めになると思います。
今も18日提出の宿題に追われている状況で……。
18~24は特別授業とか部活の大会とか色々忙しいので無理っぽいです。
25,26,27辺りは僕個人の勝手な都合になるんですが、友人と自転車の旅をすることになっているのでPCを使うことすらできない状況です。
あとは夏休みの宿題の残量が問題になってくるんですが、9月の始業式の次の日から二日間は宿題テストとかいうヤツに翻弄される予定なので、最悪それがおわってからになります。