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第6話 新聞


 そうしてむずがゆいと思いながらも、だんだんとそれに慣れてきたころ。普段の私の過ごし方はというと……。


 朝はシュヴァイツ様と共に食事。昼は昼食まで書斎で読書。夜は昼食のち庭園を散策してまた読書。夕食は研究や仕事を終えたシュヴァイツ様と一緒に取る……といった具合で……。


「はぁ……」


 正直、今までの生きづらさがウソだったかの様に悠々自適過ぎる毎日を送っている。


 今は朝食を終えて、特にやる事も思いつかなかったので久しぶりに刺繡をしてみる事にした。


 本来であれば伯爵家の夫人として人脈づくりなどをしなければいけないところだけど、シュヴァイツ様曰く「結婚式が終わるまで僕たちはあくまで婚約者という関係でいたい。だから、お茶会の誘いがあっても行かなくていいからね」と言われた。


 シュヴァイツ家の方たちはみんな優しい方たちばかりだと思うし、実際にそうしてくれている。


 そして、シュヴァイツ様も私にとても良くしてくれているという実感はある。


 でも、たまに出る「結婚式が終わるまで」という言葉が……どうしても引っかかってしまうのも確かだった。


 ただもし、今もエリオットと結婚をしていたら……きっと今は行きたくもないお茶会や夜会に参加して作り笑いが当たり前で本心なんて全然見えない中にいたに放り込まれていたに違いない。


 それを考えると、コレもシュヴァイツ様なりの優しさなのかも知れない……と思う様になった。


 まぁ、そもそも私は社交界などが苦手だった上に、婚約者がいなかった時。お父様は妹しか連れて行かなかった。


 正直、あの時は苦手だったとは言え、使用人と一緒とは言え家に留守番させるのは……幼い自分にはかなり堪えたのを覚えている。


「どうかされましたか? お嬢様」

「え」


「随分と深いため息でしたが」

「ああ、ごめんなさい。聞こえていたのね」


 小さく笑いながら答えると、ルカは「昔の事ですか?」と尋ねる。


「……そうね」


 正直、何も言わずとも私の考えている事が分かる辺り、本当に敵わないなぁ……と思う。


 これぞ長年の付き合いからくる察する力というモノだろうか。


「……」


 でも、そんな事が分かるくらいルカとは長い付き合いとも言える。


「大丈夫です。今はもう、あの家は関係ありませんから」

「……そうね」


 ただ、きっとお父様はたとえ招待状を出しても結婚式には来ないだろうと思う。ただ、エリシアは……来てくれるかしら?


 なんて思いつつ、途中になっている刺繍を完成させようと下の方見ると……。


「あら?」


 なぜか椅子の上に新聞が置かれている事に気が付いた。


「――新聞の記事ですね」

「ええ、ライオネル様が忘れてしまったのかしら?」


 シュヴァイツ様はいつも朝食の時に新聞を読んでいる。


「……」


 いつもであれば、どこかに置いて行く事なんてせずにそのまま部屋に持って行くのだけど……。


「そういえば、今日はいつも以上に疲れている様子だったわ。何かあったのかしら?」

「そう……ですね。確かに数日前からお疲れのご様子でしたね」


 ルカもそう思うという事は……きっと間違いないのだろう。


「……」


 ひょっとしたら、その薬に何か不具合でも……なんて考えが頭を過る。


 実はこの領は主に農作物が有名で、シュヴァイツ様はその農作物の成長を邪魔をする虫を駆除するのに必要な薬を開発した。


 そして、その作り方を王家に献上し、今ではほとんどの農家がその薬を使って農作業をしている。


「……」


 そんな事を思いつつ新聞の方に目をやると……。


「どうかされましたか?」

「ルカ、コレ……」


 ルカに見せたそこには一面に大きく『アスタリア王国にて不審死が多発!』という文字が書かれていた。

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