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第1話 婚約破棄されました。


「――アリシア。なんて事をしてくれたんだ」


 目の前で大げさなリアクションと共に額に頭を当てて悩んでいるのは実の父。つまり、お父様だ。


「……」

「言い訳も出来ないか」


 お父様は呆れた様子だけれど、身に覚えのない事に対してどう言い訳をしろというのだろうか。


 それとも散々学園の卒業パーティーで言った「私はやっていません」ともう一度言えとでも言うのだろうか。


 そんな事を言えば「口答えするな」と言うだろうに……。


 どちらにしても、どれだけ自分の無実を言ってもそれを証言してくれる人はおらず、みんな見て見ぬふり。自分の利にならなければ、誰も見方にはなってくれない。


 そんな場所。状況で何をどうすべきだったのか。出来る事があったのであれば逆に教えてほしいモノだ。


 証拠として挙げられ物も、私には見覚えはなかったし、みんな証言者として証言をした「彼女」キャロル・フェルナンデス男爵令嬢の味方ばかり。


 証言を聞く段階になってようやく「あ、私は嵌められた」のだと気が付いた。


 人によっては「遅い」と言うだろう。でも、本当に身に覚えがなければリアクションも遅れてしまうというモノだ。


「……」


 彼女。キャロル男爵令嬢は見た目がとても可愛らしい。


 そもそもこの学園には「転校生」としてやってきたとは聞いていたものの、どうやら元々は平民だったせいもあり、貴族の常識があまり知らなかったらしい。


 それ故か「身分も関係なくみんな仲良くしたい!」という彼女なりの持論からなのか、身分の高い男性によく近づいていた……とは噂で聞いていた。


 正直、彼女なりの持論を持つ事は対してどうこう言うつもりはない。


 でも、さすがに常識から離れていれば私もちょっとは注意をした事はあったけれど、さすがに持ち物にまで手は出していない。


 しかし、そんな私の証言なんて全然聞き入れてもらえず、現に私の婚約者も彼女の肩を持つ始末だった。


 今までは「この程度の事なんてよくある事」程度に考えていたのも事実だ。


 でも、この卒業パーティーで私だけでなく他に数名の令嬢たちが婚約破棄をされてしまった。


 そして、それは私も当然含まれ、当時の婚約者である宰相の息子であるエリオット・ハモンドに婚約破棄を言い渡され、今に至っている……というワケだ。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「まぁいい。お前には辺境にあるシュヴァイツ伯爵に嫁いでもらう」

「……はい」


 そう返事をするしか今の私に選択肢はない。


「婚約破棄をされたお前を嫁にと言う大変物……いや、お優しい方だからな」

「……」


「明日にはこの家を出て行き、伯爵の家に行く様に」

「――かしこまりました」


 お父様の部屋を後にした時。


 私に嫁ぎ先を言ったお父様は明らかに「物好き」と言おうとしたに違いない。しかも、少し笑いを堪えている様にも見えた。


 でも、お父様の言う通り婚約破棄をされてすぐに結婚を申し込んでくる辺り、かなりの「物好き」だとは自分でも思う。


 いっそのこと修道院に送るなり、国外追放にしてくれた方が……とも思うけれど、極刑じゃなかっただけマシか……と思う事にする。


 そうでないとやっていられない。


「何せ相手はあの『シュヴァイツ伯爵』だし」


 あまり社交界に詳しくない私ですらどんな人物かまでは知らないモノの、彼の名前だけは知っている。


 そして、社交界では彼を別名で『毒伯爵』と呼んでいたはずだ。果たしてその別名がどこから来たのか……なんて事は知らない。


「どちらにせよ――」


 部屋に着いてため息とともにゆっくりと椅子に腰を下ろして一人小さくつぶやきながら窓の外を見る。


「……」


 嫁がなければ婚約を破棄された自分にこの家で立場などない。ただでさえお父様は妹を溺愛している。


 それを考えればこの際、相手が『毒伯爵』だろうが誰でも良かった。


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