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ラティなど。

作者: 眠

私は恋愛小説を書く気があまり起きない。

何というか、

いや、

何というとかもないか。

単純に、恋愛に浮き足立つみたいなことをしたことがない。(白目)

恋に恋する乙女の頃(と言っていいのか)があったのだが、

自分が相手を見ずに相手を好きになっていたのではないかと思うようになってから、

改めて人を好きになっていないような気がしている。こと恋愛においては。

友人関係であれば、好きな人は、いるのだけど。

でも、じゃあ恋をするのかと言われるとまったく。

むしろ、恋人にするというと、違うなと思う。(友人に失礼だが。いや、そうだよと言うかな。そうだろ、と言うかな。わからないけど。)

冒険でもしたら、変わるだろうか。


今は、今の私が書けることを、日記的に残していこうと思います。


恋愛ってなんだろう。

みんな、恋愛が好きね。

どうして、好きなんだろう。


さっぱり見当がつかない。


「ラティ。」

「なに。」

こういう声は、いわゆる好かれる声なのかしら。

「お昼の時間だって。御屋敷に戻るよ。」

「わかったわ。」

そう言うと、当たり前のように手を繋がれる。

そうするのは、私がそうされていい人だって思うからかしら。

「ラティ、今日はグラタンだよ。」

「そう。美味しそう。」

するとリントはおかしそうに笑う。

「何かおかしいの?」

「いや、グラタンと聞くだけで美味しそうって、ラティらしいなって。」

らしいか。…どこが?

「…ふうん。リントン、今日のグラタンは変なの?」

「ラティ〜。」

「…何?」

「いや、いつもの美味しいクリームグラタンだよ。」

「なら、いいけど。」

ならいい、ってなにがいいって話だったかしら。


日陰に入ると、光の温もりが消えて、屋敷の中の涼しい空気が服を通る。

庭の花の彩りが名残り惜しいけど、お昼なんだからしょうがない。

「お手をどうぞ。」

「ありがとう。でも、ただの段差にどうしたの?」

「今日ラティが上の空だから、なんか転びそうと思って。」

「そっか。ありがとう。」

こうやって手で支えてもらうのも、もしかして変なのかな。

当たり前にこれを受け入れる私は感覚が変なんだろうか。

「ね、鋭い観察眼でしょ。」

「…なかなか。」

「何なら、今も上の空に見えるし。」

そういうリントンの顔は挑戦的だ。

「ふふ。ごめいさつ。」

こんなリントンが好き。

でも、恋人…ではない。でも、大好き。でも…うーん。

「ラティエお嬢様、本日は手によりをかけた美味しいグラタンがございますよ。」

「ええ、楽しみ。」

メイドがこうやって声をかけてくれることは多い。思えばどこにいるともなくそこにいるから、私の行動やスケジュールに合わせて動いていると思う。

「お嬢様さっき美味しそうって言ってましたよ。」

「まあ、嬉しいですわ。」

リントンの言葉を聞いて、メリーはふわっと手を頬の内側に添えて微笑む。

「メリーは素敵ね。」

「ラティエお嬢様…?」

「えっと、その大好きよ。」

言ってしま…いや、言ったが勝ち。

逃げることにしよう。

「いつも色々助かってるわ。ありがとう。これからもよろしくね。」

「お、お、お嬢様…」

メリーの戸惑った声が遠くで聞こえる。

メリーはメイドだから、走って追いかけることはない。

けど、リントンは追いかけてくる。

「ねえ、どういう風の吹き回し?」

「気分よ。気分が良かったの。」

「へー…。僕は?」

「いつも一緒にいるんだから、好きじゃないわけはないわ。」

「ふーん。そう。」

食事広間が開いている。速く歩いたからいつもより着くのが早い。

「まあ、仲良くお昼にしましょう。」

「うん。」

考えごとって、話し相手がいると上手くいかない。でもいいか。

手によりをかけた美味しいグラタンが待ってるんだから。


「ふふ、美味しかった。」

中まで火と味が通った野菜、鶏肉に、穏やかな味のクリームソースとチーズ。

いうことないわ。

「リントン。午後は予定あるの?」

「今日はなくなったみたい。」

「あらそう。じゃあ二人で何かしようかしら。」

何かというと、何となく庭が思いつく。

「じゃあ外に出る?」

「そうね。今以心伝心したわ。」

「ほんと?」

「ええ。ほんと、ちょっとした感動もの。」



やっぱり、草原は気持ちいい。

ふわふわ。ふかふか。空があったかい。

「ねえ、リントン。午後ってあったかいわね。」

「そうだね。眠くなりそう。」

「ええ。眠たい。」

こうやって誰かとのんびりするのは久しぶりかもしれない。

リントンとの間でも、普段はどちらかが稽古や修行や用事があったりするから、こういう日は珍しい。

「ラティー。花冠で競走したい?」

「…いいよ。」

「あれ、そういう気分?」

「そう。」

こういう形式を崩す崩さないの話でリントンは少しいじわるな顔をする。

まるで「ふふーん」と言いそうな顔。でもその顔に向き合うと止む。

いつもの、ちょっとしたいじわるとそのお返し。

「リントン、聞きたいのだけど。膝枕って知ってる?」

「膝で枕ってこと?」

「そう。リントンを枕にしてもいい?」

「まあ、いいよ。枕より固いと思うけど。」

「いいわよ。ふふ、ありがとう。」


膝の枕を試してみた。

「…お腹を枕にしてもいい?」

「いいよ。」


お腹の枕を試してみた。

「なにかぐるぐる言ってる。」

「ご飯食べた後だからかもね。」

「そっか。」

まだちょっと固いけど、居心地はいい。

「リントン、このままでいても良い?」

「ちょっとならいいけど。ラティーがそういうこと言うの珍しいね。」

「うん、そうね。…ちょっとってどのくらい?」

「もうそろそろ。膝だったらまだ大丈夫。」

「そうね…じゃあ、代わりに背中預けても良い?」

「いいよ。」


背中を預けてみた。

「この状態なら大丈夫かな。」

「じゃあこれにしましょ。あ、そうだ。これなら花冠作れそうよね。」

「この態勢で花摘むのは新しいね。」

「競走ではないけど、私が摘んでリントンに渡せばできそう。」

「やってみるか。」


手元では白詰草の草と花の部分が円状に近づいている。

「やっぱり器用ね。」

「まあね。」

「知ってたわ。」

「ありがとうございます。」

「いえいえ。こちらこそ。いつもありがとう。」

「大好きってこと?」

「リリーもリントンもそうよ。」

「まあ嬉しいけど。僕も好きだよ。」

こういう言葉を聞くと、嬉しくなる。

いつも一緒にいるリントンに言ってもらえるから。

…好きがどうとか、なのかしら。

「出た。上の空。」

「顔見えてるの?」

「雰囲気で分かるよ。」

「優秀すぎるわね。」

「実際どうしたの?寝不足かなにか?」

「そう。」

「じゃあ寝ていいよ。」

「そうさせてもらうわ。」

リントンの背に寄りかかると、その後リントンが木肌に寄りかかった気配がした。

目を閉じ、木陰に通る光と周囲の温度に委ねると、自然と瞑想するときのようになる。



寝不足なのも本当。

今日の調子が我ながらおかしい、というか既にリントンに指摘されてばかりだけど、その理由は最近気づいたことにある。それは、世の中には恋のお話が多いこと。


そして感覚上、私は物語上のそのような感情を持ったことがないこと。


思えば、今リントンに背を預けているのは、何かの試し行動になっているのかもしれない。

でもきっと今リントンに感じているのは安心感。これは素敵だと思っているし、ずっとこうしていたいと思う。だから、昼前の頃にあった興味は今の今まで薄れていたのだと思うのだけど。



結局、恋ってどんな感情なのかしら。

素敵な感情なら、好きな人と共有していたくもなるような気がする。

そういう感情を、プレゼントできたりしないのかしら。

大好きだという感情が、恋というものを通じてもっと相手に届くなら、相手を恋に落としたくもなるのかもしれない。


…なんて熱中したら、周囲に心配をかけてしまうかもしれないわね。

何より、そのような心理的な衝動が良いように作用するようにするためには、まず作用させたい方向に対して、自分の思いを明確にするべきだわ。

相手を大切にしたい、という気持ちを置き去りにしていては、恋も暴走するしかないように思える。

私は思いを向ける方向に、その思いを明確にする必要があるのかもしれない。

状況判断に依る、理性でもって。それからが、恋なのかもしれない。…恋って遠いわ。こんなに素敵な人がそばにいて、他で思いつく人はいないけれど、そんな単純な選択から伝えられるほどの気持ちのありようが自分の中にあるのかがわからない。

もっと冒険をするべき、ということなのかしら。


目を開けると目の前には光を遮るように、リントンの腕が重なっている。

「おはようラティ。」

腕が離れて外の空気が触れ込んでくる。

その風に押されるように、口火を切った。

「リントン、恋ってどういうものかって知ってる?」

「ん?」



自分の前書きが本文と同じようなのを書いてることに気づいて自我。

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