こんな仲間とトレジャーへ
シオレイズ地方にあるオオシドエ街。
ここは様々な商人や旅人が行き交い、様々な情報が流れてくる世界の中でも
大きく発展し続けている街の1つだ。特にこの街にはトレジャー協会の本部が
あり、数多くのハンターが様々な期待や希望を胸に抱き活動している。
――― トレジャー協会本部・受付 ―――
「それではこちらが今回のクエストという事でよろしいですね?」
「はい、登録よろしくお願いします」
「では、こちらにサインを。今回のクエスト情報等は伝えておきますので
5分後に情報管理棟の受付までお願い致します。それと、契約金は……」
広いクエスト受付所の片隅で細かい手続きや話など効率よくこなしていく
人物が1人。彼女は全ての手続きを済ませると、整理番号札を手に受付待ちの
ハンター達をかき分けながらロビーの方へ走っていく。
?「あっ、来た来た。おーい、コッチだよー!」
?「お待たせ、遅くなっちゃった。なかなか進んでくれなくてさ~」
申し訳なさそうに席に着く女性。
彼女の名は『リフィーユ=S=マギシャイン』、考古学者のはしくれで
しっかり者だが時にいじめっ子体質が表に出る。
人間以外の生物と会話できる能力を持ち、武器はライトボウガンを扱う。
リフィーユの向かいに座りコーヒーを優雅に飲んでいる彼女は
『ルナディ=ハワードシウス』、様々な物を即席でも作り出す事が出来る
開発者だ。扱う武器は自己改良型の鞭と彼女が作り出した様々な発明品。
明るく頼れるが、新開発の代物を人で試すという恐ろしい子である。
ル「どうだった?クエスト取れた?」
リ「うん、バッチリだよっ! 船の出航は明日の早朝らしいから今日中に
準備しないとね。……あれ?残りの3人は?」
ル「あぁ、エルは他のクエスト状況を見に行ってて、キリュウとユウェンは
お腹空いたからって売店の方に何か買いに行ったよ。ルナ達のも買って
来てくれるってさ」
リ「そうなんだ。あ、エルが戻って来たよ」
こっちに向かって来る人物を見つけると軽く手を振るリフィーユ。
ルナディも彼女が見つめる方へ視線を向ける。2人の視線の先にいたのは
『エル=クォータミューボ』といい、男勝りのバカ元気な女剣士だ。武器は
双剣だが、足グセが悪く短気な為によく足技を繰り出す。ある範囲まで見通す
〝眼〟を持つ。
エ「おぉ~戻って来たんだね、おかえりリフ~♪」
リ「エルもおかえり。他のクエスト状況どうだった?」
エ「んー、今回ダントツに多いのが鉱物採取と立ち入りが解禁されたばっかの
遺跡に関するトレジャーだったよ。やっぱ旬モノは人気だぜ」
欠伸をしながらリフィーユの横に腰を下ろすエル。情報コーナーに貼り付けて
あったクエストランキングのプリントをテーブルの上に置き、1つのクエストを
指差す。
エ「今回私らが行くクエストってコレだろ?結構下位ランクなもんだよなー」
ル「あ、本当だ。こうやってランキングにされるとルナ達のレベルがバレるね。
『所詮この辺の奴ら』みたいなさ~」
リ「でもこのクエストはちゅーちゃんのオススメだし。情報屋のお墨付きって
結構イイの出るって評判だよ?それに聞いたところによるとこの島、あまり
人の出入りが無いらしいからレアもの多いかも」
ランキング表を見ながらキャイキャイ話をしているとエルの後ろの方から
何やら叫ぶ声がした。
?「ぅおーい、ちょっとテーブル開けてくれよ~。置けないでしょ」
?「見てくださいよこのポテトの量!ラッキーなことに売店のおばちゃんが
サービスしてくれたんスよ」
両手にたくさんの食べ物を抱えながら2人の男性がやってきた。
女性3人に割り込んでテーブルに持ってきた物を置いていく。
1人目の眼鏡の男性は「ユウェン=ミルノネイチェ」、二丁銃の使い手で
体術も扱う。少しだけ未来が見える〝魔眼〟の持ち主で大の猫好きだ。
未開の地に行くと我を忘れてはしゃぎまくる。
もう1人の男性は「キリュウ=スヤン=ギルマ」といい、体術を得意とした
武闘家である。とある民族の出身で馬に乗れば向かうところ敵無し。氣を操れる
ので攻守どちらにも対応出来る。そしてどちらかと言うととばっちりを喰らう
タイプだ。
リ「あのおばちゃんがサービス?どうやって口説いたの?」
キ「いやぁ、おばちゃんいつも綺麗だね~、その笑顔を見ると俺もう
疲れが吹っ飛びーの元気がモリモーリ・・・って違うだろ。この前、
売店のメニュー看板をヤンキーハンターに壊されちゃったじゃないスか。
それを直してくれたお礼って事でね」
ル「あー、アレね。ルナとユウで直したやつ。でもさ、メニュー看板にトドメ
さしたのはエルだよね?それでお礼とかいいのかな~」
ユ「そうそう、ヤンキーを追い払おうとした足蹴りが看板を……ねぇ?
俺も言おうか言うまいか」
エ「イイじゃんか!!追い払ったのは事実だろ?それに今から言ったら
おばちゃんの好意を無駄にする事になるぞぅ」
リ「エルはこのまま欲しいんでしょ?」
エ「そうです!!」
キ「言い切ったッスよ」
ワイワイしながらも皆揃って椅子に座り、サービスで貰った山盛りの
ポテトに手を伸ばす。エルが持って来たクエストランキングのプリントを
見ながら今回のクエストについて話し込む一同。
ユ「この島に棲息する『ガーネットアイバード』の卵の採取クエか。
確かこの鳥自身もオークションで高値取引されてるやつじゃ
なかったっけ?」
リ「そう、卵に限らず鳥本体も相当な価値があるんだよね。見た目も綺麗で
万病に効くという。でも今回の狙いは卵のみ。鳥を傷付けたり間違って
殺しちゃったら罰則だって」
エ「罰則ー?罰金的な?」
ル「ヘタしたら活動停止とか謹慎とかかね?ハンターランク下げられたりして」
キ「それダメ、絶対!!エルさん死んでも鳥は傷つけちゃダメっすよ!」
エ「そだな、捻り殺さないようにせんと。じゃぁ、危なくなったら攻撃軌道を
キリュウに向けるから上手く避けろよな」
キ「斬殺でなく捻殺?!しかも副ターゲットは俺かい!」
ユ「背中見せたら容赦無く刃物見せてくるぞ、きっと。キリ……死ぬなよ」
キ「不安を煽らんでくださいっ」
エルのにやけ面を見るや否やポテトを口にかき込み警戒するキリュウ。
クエストランキングのプリントを見ていたルナディがハッとして
リフィーユの顔を見つめた。
ル「リフ、今回のエリアって他資源の採取可能?」
リ「えっ?あー、まだ確認してなかったよ。もう情報管理棟の受付に今回の
トレジャー情報が届いてると思うから取りに行かないと」
ル「ルナが行ってくる、取ってくる」
いそいそと席を立ち、少し離れた情報管理棟の受付へと走って行く。
エ「流石に気付くの早いな~。開発者はエリアの資源採取情報は重要だもんね」
ユ「エリアや物によっては採取可能・不可能が決められてる場合があるからな。
今人気の鉱物採取なんて規制厳しいらしいよ」
リ「規制かけないと取り過ぎたり違う対象まで荒らしちゃってエリア環境
変わっちゃうからね。今回私達が行く所はどうだろ?」
暫く話し込んでるとパタパタ小走りしてくるルナディの姿が視界に入った。
キ「ペンギン走りで戻って来ましたよ。おかえりサマ~」
ル「ただいまサマ~! 今回はかなり収穫ありそうだよ。ほら見て、ほら!
ターゲットの卵は2つまでで親鳥の捕獲・死傷は厳禁。対象の生態を脅かす
行為は一切禁止なもののそれ以外の資源採取はオッケーだって~。あまり人の
出入りが無い孤島……どんなモノが取れるのかなぁ」
エ「完っ全にクエストそっちのけや!絶対メインは資源採取だ!」
リ「ルナちゃ~ん、戻ってこーい」
ユ「この眼はもうヤバイね、確実にメインそっちのけだ。
特殊銃弾を作ってくれるから、俺としてはありがたい時もあるけどさ」
キ「いつだったか……ターゲット追ってたのにルナディさんが眼を付けた
資源を破壊しそうになった瞬間、俺ルナディさんに攻撃されましたよ?
ターゲットを攻撃ならまだしも同じ志の仲間をビリビリ麻痺にさせるのは
どうかと思います!」
夢見がちになっている彼女の様子を伺う4人。
暫くすると現実に戻ったルナディが突然勢い良くテーブルを叩いた。
ル「皆、何をボヤボヤしてるんだ!今すぐ準備の為に行動するよっ!」
ユ「え、今から?」
ル「出発は明日の早朝でしょ!早めに準備して早めに寝ないとじゃん。
さぁ行こう行こう。買い出しにも行かないとね。ほらほらリフも~」
意気揚々とリフィーユの手を握り半強制的に連れ出して行くルナディ。
リフィーユは為す術もなく連れ去られて行った。
ユ「ぅおっ!あっという間に消え去ったぞ。リフを拉致ってったし」
エ「とにかく追わんと!ルナは行動範囲が広いから探すの大変だ」
キ「じゃぁ俺、この皿おばちゃんに返却してくるッスよ。先に行って
捕まえといて下さい」
お互い顔を見合わせ頷くとそれぞれ行動し始めた。多くのハンターで賑わう
このロビーを後にして、一同は騒がしく活気づいた街へと溶け込んでいった。