第1話 【私】の記憶
オレンジ色のマリーゴールド
花言葉 「予言」
ひとつ前の人生を終えてから、77年後の西暦2023年。
今【私】はここに生きている。
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いつからだろうか。
沈みゆく夕陽を見ると、どうしようもないくらいに胸が締め付けられるような感覚を憶えるようになったのは。
この目に映る世界のすべてを柔らかく染めていくはずの夕陽が、私の心の奥底に眠る存在に気づかせようと、幾つもの信号を送ってくる。
はるか昔から存在しているその夕陽は、すべての時代のすべての私に対し、絶え間なくその信号を送り続けていた。
私がその信号に気づき始めたのは、2021年の4月。
それから私はその信号の意味を探し求めた。私の出した答えが確信に変わるまで少し時間がかかってしまったけれど、もう大丈夫だ。
2022年最後の日にはもう、【私】はすべてを理解していた。
この物語は現代に生きる【私】が、はるか遠い昔に生きたいくつかの記憶を想い出しながら、現代に生きる【彼】に出逢うまでの時空を超えた物語。
何千年、何万年もの間ずっと、私の魂の一番深い場所にしまわれていた幾つもの記憶の宝物。
かつて私が経験した、光り輝く眩しい記憶。
数え切れないほどの人生を繰り返してきた【私】が、自ら閉じた記憶。
悲しみと愛しさ、心からの願いと祈りを吹き込んだ宝箱が、時を超えて私によって開けられる。
その箱を閉ざしたままにしておくことも出来たけれど、私はこの記憶の宝箱を開けるために生まれたことを知っている。
私が【私】に気づくために、絶えず送られてくる信号の意味を知るために、これまでの生き方を振り返る必要があった。
そして私のこれまでの人生を受け入れる必要があった。
【私】として生きていた子どもの頃。
成長と共に【私】を忘れていった私。
物語に必要な情報でもあるけれど、子どもの頃の【私】を知ってほしい。
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私は子どもの頃からとても大人しい性格で、人見知りだった。他人と目を合わせるのもとにかく苦手だった。大きい音や声、人の感情の動きには人一倍敏感だった。
そして幼稚園の頃から私自身や周りの子どもたち、大人のことも俯瞰して見ていたことを憶えている。ここにいるようで、どこか別の角度から物事を見ている自分がいた。そう、私の頭の左斜め上から物事を見ているような景色。
私はいわゆる良い子だったようだ。
勉強も運動も普通にこなした。美術で表彰されるのは当たり前、学級委員にもリレーの選手にも選ばれる。私がそれを望んではいないのに。
「良い子だね」 と言われる度に私は心の中で首を傾げていた。この言葉を私に言ってくる人たちは、結局のところ【私】を何も見ていない、分かってはいない。それでも私が笑ってみせたのは、皆が喜んでくれるから。
本当は少し、少しだけ悲しかった。
私の唯一の楽しみは絵を描くことだった。
正直、それ以外をあまり覚えていない。子どもらしく人形や友達と外で遊んだ記憶もあるけれど、絵を描くことが唯一【私】でいられた時間だった。
24時間のうち、学校以外で小さな子どもが起きている時間なんて少しの時間だけれど、起きている間はずっと絵を描いていた。
私にとってそれが何よりも楽しく、絵の世界に浸ることのできる幸せな時間だった。家族の記憶さえも、私=絵を描いている子だった。
私は物心のついた頃から、漠然とした不安と孤独を感じていた。
恵まれた家庭環境と何不自由のない生活、そして私を愛してくれる優しい家族。
それでも年を重ねるごとに大きくなってゆく焦燥感。
ここにいても、ここではないどこかを求めている感覚。
私は何かを、知らない誰かを探している。
一番大切な何かを、忘れている感覚。
20歳を迎える前、私はおかしいのかもしれないと感じ始めた。
普通ではないのかもしれないと。
でも周りに知られてはいけない、そんなことを考えてはいけない。
知らない何かを求める【私】を消そうとする、表面の世界に生きる私がいた。
何より普通でありたいと願う、表向きの私。
私は普通の人になりたかった。
普通の人生を望んでいた。
就職をして、趣味を充実させて
いつか好きな人と結婚して家庭を作って……。
そんな誰もがしているような、当たり前の人生を望んでいた。
それなのに、私はすでに進むべき道から外れていた。
私は大好きだった絵を描くこともしなくなった。
【私】から絵の存在が消え去っていたことにも気づかなかった。
そう、いつからか私は選択を間違えたのだ。
本能に従わず、周りと同調して生きることを願った表面上の選択。
私はそれを選んだんだ。
そこから私にとって、絶え間ない試練が立て続けに起こり始めた。
度重なる病によって心と身体に激しい痛みを伴い、暗闇の中を手探りで進む迷路が私の目の前に現れた。
そして不安と孤独、焦燥感はさらに増していった。
私が進む迷路にはいくつもの罠が仕掛けられていて、なぜこの罠に掛かったのかを私が自ら気づくまでこの迷路は続いていく。
私が罠の原因に気づくまで、かなりの年月がかかった。
そして今もその迷路を完全には抜け切れていない。あと少し、その先に出口が見えているのにまだ抜けられない。
でも、その迷路が終わろうとしているのが私には分かる。
私はもう、大丈夫だと確信する。
そのおかげで、私はこの物語を書けるようになった。
この迷路を抜ける前に、また罠に掛かるかもしれない、でも掛からないかもしれない。
それはすべて【私】次第だ。
そもそも、この迷路で罠だと思っていたものは罠ではなかった。
私にとって苦痛と感じたすべてが、私を導くために差し伸べられた手だと今になってそう確信する。気づくまでに随分時間がかかってしまったけれど。
起きたことすべて、私の感情すべてのその先に今日を生きていられているなら、それはもうすべてに感謝するしかない。それが私のたどり着いた答えだ。
間違った道を進めば、私が進むべき道に戻そうとする出来事が必ず起こる。
私は人間でまだまだ未熟だから、間違うこともたくさんある。
正直もう、それでいいと思える。
今はただ、私に必要なことはすべて起こっていいと思える。
私は、すべてを受け入れられる力があると信じられる。
だから私はもう、諦めたりしない。
もう二度と、希望を捨てたりしない。
私は今、心から幸せを感じられる。
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私のそれ以降の現代での人生については、書く必要性が出てくれば書こうと思う。今の時点では、私に起きたこれまでの出来事を書く必要性をあまり感じていない。なぜなら今までの出来事を私はすでに受け入れているし、人間として生きていれば誰にも起こる出来事だから。
重要なことは出来事ではなく、それらによって気づくこと。
人生でどんなに辛く悲しい出来事があっても、決してそれだけではない。
その出来事を通して必死でもがいて泣いて絶望しても
すべてを諦めて心を失くしても
たどり着いた先に出た私の答えは、すべてを受け入れることだった。
一番認めたくないことをすべて受け入れたら、不思議と私は救われた。
深く深く傷つくことによって
最後には心の奥底にある不安や孤独が癒えてくことを、初めて知った。
私は私の傷を癒やし、自らを救うことができた。
目に見えない存在に気づき、ずっと見守られていたことを知った。
導いてくれていること、いつもそばに居てくれることを感じた。
大丈夫だよと、声をかけてくれる。
限りなく優しい愛を感じられている。
私はもう、大丈夫だよ。本当にありがとう。
私はまだ終わっていない、まだ終わらない。
後少し、私はもう一踏ん張り出来ると信じてる。
この物語を読んでくれているあなたにとって、心の気づきや何かのキッカケになってくれたら嬉しい。
これは決してあなたに今ではない過去を思い出して欲しいと言っているわけではなく、あなたが絶望した経験でさえもすべてに感謝できるほどの今に変えていけることが出来るということを知って欲しい。
今もこの先も理解することが出来なくても、そんなことがあるかもしれないということを、心の隅でいいから留めておいて欲しい。
【私】の魂の物語を、あなたも一緒に読み進めてくれたら嬉しい。
きっと最初で最後の【私】の物語。
あなたの魂が愛によって導かれますように。
あなたの魂が光となって輝き放ちますように。
すべてに感謝する日が
いつか必ずあなたに訪れることを【私】は知っています。
だから生きて欲しい。
嬉しさで涙を流すあなたの最高の笑顔を楽しみにしています。
初めまして、鈴虹色です。
「あと3回、夢で逢えたその先の世界で」をお読みいただき、ありがとうございます。
私は小説に関しましては全くの素人でして、文章能力、表現の仕方も至らない部分がほとんだと感じています。
ですが今私が伝えられるすべてを持ってこの小説を書いています。
この作品が必要な方に届くことを願って書き進めています。
ですので、誰かにとって不要な作品であっても、どうか冷たいコメントはご遠慮していただければ幸いです。
誤字脱字などの指摘はぜひお願いしたいです。他にもこうしたらいい、表現の仕方などご提案がありましたらとても嬉しく思います。
初投稿でこんなことを話すのはどうかと思いますが、この作品はおそらく私の最初で最後の小説になるかと思います。物語の多少の修正や訂正があったとしても、この物語が終われば私にはその後小説を書く理由がなくなるからだと思います。小説は書かなくとも、他の活動にて私がしたいことをしていく予定です。
この小説はnoteでも掲載予定です。詳しい活動などはnoteや他SNSにて発信していく予定です。
小説の更新頻度ですが、初回は第1話と第2話を掲載いたします。
3話以降につきましては毎週金曜日午後9時に掲載予定となります。どうぞよろしくお願いいたします。
後書きもお読みいただき本当にありがとうございます。
心から感謝しています。
どうぞこれからよろしくお願いいたします。




