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ダンジョン協会をクビになってものすごいレベルが上がったけどヒーローにはなりたくないのでなんとかしたいと思います  作者: ほすてふ


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025.リンゴ

「与ダメージ増加、受ダメージ減少、異常耐性、サポータースキル強化50を3層、以降50ずつ加算で4層、5層まで使うようにしましょう。6、7層は地形と罠の性質上高速育成には向いていません。8層は最深階層の手前ですので一旦保留、今週中には更新されるでしょうから『帰還』ポイント確保の交渉を」

「了解だ」


 火曜の晩、午後の2コマ終了後、リュウイチは業務に関する打ち合わせをしていた。

 新人契約従業員のリンゴとマンツーマンだ。

 学生アルバイトのマリカと本来部外者のミイナとともに4名で行った報告会。勧誘・協力交渉についての報告や、その他気づいた点などをまとめ、対処を決めていく。

 そしてその中で、ダンジョンの混雑問題が挙げられたのだ。

 そこでリュウイチとリンゴが対策のためにダンジョンで検証に向かったのである。


 なおマリカは明日大学の講義があることもあり帰らせることにし、ミイナが彼女を送っていった。


 ピーチガールズ経由で依頼した民間警備会社は、女性のみで構成されたトップ探索者パーティの日常を守ってきた実績がある。現状でマリカを一人で行動させて大丈夫かと少し不安があるが、彼らが実績通りの仕事をしてくれるなら大丈夫だろう。

 今日町内会や青年団などに菓子折りとしてきびだんごを持ってあいさつ回りしていたらしく、リュウイチはちょっと気に入っていた。

 ミイナやマリカに何かあればすぐに連絡が来るくらいには期待できるだろう。

 警備というのは見られているのと同様で、少々窮屈に感じるかもしれないが、一山超えるまでの辛抱だ。



 話を戻す。

 検証の結果、混雑回避のためにダンジョンのさらに下層を利用できるという結論がでて、具体的な数値を検証したリンゴが提案してきたわけである。

 2層より深い場所で活動した経験に乏しいリュウイチにとって、トップ探索者、それもパーティ内でも情報収集分析の役割を負っていたという元アサシンメイドの見地は非常に役に立つ。

 本人も張り切っているようだし、このまま全部任せて座ってればいいようにならないかとリュウイチは思った。

 しかしリンゴは一時的な所属である。任せてしまうと抜けた後困る。


「世の中ってままならないな」

「だから都合よくなるように動くのです。これまでのように」


 都合のいい状況を作るため、というより都合の悪い状況から脱するためにここしばらく動いてきたリュウイチはもっと働かないといけないと思うと頭が痛くなったような気がした。気のせいだったが。


「リンゴさんがずっといてくれればいいのに」

「私を一番にしてくれるなら是非」

「う~ん好感度が足りない」

「なにをすれば上がりますか?」

「不意打ちみたいなことをしないことと、地道に信用を稼いでもらいたいですね」

「アサシンメイドなので」

「今はサポーターでしょうよ」

「なるほど」


 なにがなるほどかは知らないが、と思いながら、リュウイチは手を動かしてマニュアルのアップデートを進める。

 リンゴは人員と顧客の割り振り案を作成している。ここで作っておけば明日は必要なら修正するだけでよいのでリュウイチの仕事が楽になる。


 少しの間、キーボードをたたく音が部屋を支配する。


「少しお尋ねしますが、リュウイチさんは多数の女性を侍らせたい人ですか?」

「そうだねー男の夢だねーっていきなりなんやねーん」


 突拍子もない質問を受けてリュウイチは面食らった。思わずノリツッコミしてしまうほど。


「いえ、ミイナさんを別としても、マリカちゃん、昨日今日で勧誘に成功した3名、そして私も、R・ダンジョン支援合同会社の従業員は内定者含めてみんな女性なので。狙ってそうしているのかと」

「え? うわマジだ。別にそんな指示は出してないぞ。偶然だよ。いや、何か原因はあるのかもしれないですが」

「タイミングと内容と勧誘者が鍵でしょうか」


 怪しい募集に早くから応募するくらいアクティブで、業務内容が他者の支援、勧誘しているのは女子大生で代表は男。

 冒険心あふれるのであれば自分でなにかしたがるだろう。サポータークラスになれるくらいだから性格的な部分では他者の支援には適性があるだろう。ここまで大まかにプラスマイナスゼロとして。

 女子大生に声をかけられたら男のほうがホイホイついていきそうなものだ。しかし、代表の男のところに行って契約書を交わしましょうとなると話は変わってくるかもしれない。リュウイチ個人の見解だが、若い娘に声をかけられた高揚に冷や水をかけられた反動で何か怪しいからやめとこ、という判断に傾きそうだ。

 女性だったらどう感じるか、はリュウイチにはわからないが。若い娘という属性に対する期待と反動がない分、女性のほうが可能性が高いとか?

 リュウイチは首を振った。


「そのうち男も来てくれるだろう」

「だといいですね」


 改めて考えるとどっちでもいい話だ。

 手が増えればそれでいい。


「ところで、リュウイチさん、態度に壁がありますよね、マリカちゃんへも含めて」

「そうかな?」


 急に話題が変わる。

 壁があるといわれても、リュウイチとしては実感がなかった。仕事中は取り繕っているつもりはあるが。

 リンゴに関しては第一印象がアレだったのはあるかもしれない。


「遠慮を感じます。ミイナさんほどとは言いませんが、ダンジョン協会の元同僚の方々相手のようにくだけてください。トップが部下に遠慮していては侮られますよ」

「そういうもんか?」

「少し良くなりましたね。明日また従業員が増えるでしょう? 自分の上司がよその人とばかり仲良くしていて、自分たちにはよそよそしかったらどうですか?」

「あー、んー? 単に仲がいいんだなあと思うんじゃないか?」

「いえ。頼りがいの印象にマイナス評価がつきますね」

「つきますか」

「はいマイナス」

「えー」

「ちょっとプラス」

「ええ?」

「復唱してください。リンゴ、黙って俺についてこい」

「いやどす」

「ちょっとプラス」

「なんでだよ」


 ちょっとやだこの子頼りになるかも、と思いはじめていたリュウイチだったが、ちょっとやだこの子心配だわと変わりつつあった。

 他人と仲良くなる方法を見失っているとの自己申告だったが、なかなか強引な攻めを見せてくれる。


「なあリンゴ、リンゴさんよ、夢は夢のままでもいいと思うんだ俺は。万難を排して手に入れたい夢とそうじゃない夢があると思わないか?」

「かなりプラスとクソマイナスですね。出会うのが遅かったですか?」

「巡り合わせってあるよな」

「これから変わっていけばいいとは思いませんか」

「ははは。さあリンゴ、仕事の話に戻そうぜ」

「プラス」


 職場内の円滑なコミュニケーションのための雑談を切り上げ、仕事に戻る。


 そして一通り、今日やる予定のことを片付けた。

 帰り際。


「そういえばリンゴ自身はくだけないんだな」

「メイドロールプレイが身についてしまって。ですが公私で少し違うんですよ」

「そっかー別にメイドの格好しているわけじゃねえのにな」

「!」


 翌日、メイドがダンジョン協会に出現した。胸元はちゃんと隠れていた。

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